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第78話 最終日、前日...不穏な気配

〇東京ドームシティホテル レストラン パーティールーム


「ねぇ~飲んでるぅ~ボクなんか胸が苦しくなっちゃったよぉ~」


「うっぷ...ん、城二くるしゅうない、ちこうよれ」


背の高い居乳美女と背の低い居乳美女の目が据わっている...なんか俺めっちゃ絡まれてるんだけど...


「なぁ二人とも酔ってんの?」


俺に抱き着こうとする、顔を真っ赤にして呂律の回らない二人を手を押しのける


「はぁぁ?じんじゃんえぇぇるで酔うわきゃないじゃないぃぃボクをぉぉ酔っ払い扱いぃぃ」


「うっぷ...うっぷっ...こんなの酔った内にはいらねぇよべらぼうめぇ!」


俺は真白と天草先輩がグラスに注いでたジンジャーエールと言い張る飲み物を一口飲む


「...ただの梅ソーダだ...」


「うめぇぇ?じんじゃーって梅?きゃははははは」


「梅はウメェ...ウメェウメェ...メェ~...クククク」


この二人はダメだ...完全に出来上がってしまっている


周囲に助けを求めようと見渡すが、頼みの九鬼先輩は土方先輩と真剣な顔で話込んでるし...


あ、居た...


「あ、天音さぁぁぁん」


俺は他の女子部員にコスメの説明をしていた天音さんに助けを求める


「だから、ここのアイラインは...ん?何?城二っち、何か呼んだぁ?」


天音さんはコスメ談議していた他の部員に断りを入れ俺の元へとやって来た


「どったん?城二っち...ってぇぇ!?何この状況!?もしかして二人お酒を!?」


俺が無言で先ほどの梅ソーダに視線を向けると、天音さんは恐る恐る手に取り口にする


「...普通の梅ソーダだね」


「うん、普通の梅ソーダだよ」


「ウメェェ~牛はメェェ~」


「ボクがよっぱら...あ、シャワー浴びたくなったぁぁ脱いじゃおう」


「せ、先輩!?」


「ちょぉぉぉぉ!ここで脱いじゃぁぁ!ポリスメェェンがハリーアップ!だよぉぉ!」


天音さんはさっきまでコスメ談議していた女子部員の面々に声を掛けてくれ


「ちょぉぉと、この二人部屋まで送ってくるぅ...よっこいしょ...小百合パイセン重いし...」


「ウォォォボクは重くなぁぁぁい!胸が大きいのは仕方ないじゃないかぁぁぁ!」


天音さんともう一人の部員が両脇から担いでるのに、暴れ出す天草先輩


「わぁぁぁ御免なさぁぁい!あ、城二っちぃぃほら、小百合パイセンのパイを褒めてぇぇぇ!」


「!?エエェ...えっと...えっと...天草先輩の胸は最高の胸です!俺大好きです!!」


「にひぃぃぃ...城二君がボクの胸が世界で一番きれいで好きだってぇぇもうぉぉ城二君のエッチィ~クゥゥゥ...スゥゥゥ...クゥゥゥ」


なんか色々補足されていたが、天草先輩は二人に肩を担がれたまま寝てしまった様だ...


「ん?お前は無断か?」「お前は炭太郎か?」「お前は寅之助だな?」


一方の真白は両脇を抱えてる二人の女子部員が不滅の刀のキャラに見えてるのか...二人とも困った表情で苦笑いしながら真白をパーティールームから運び出していた


寝てしまった天草先輩は流石に運べないみたいで、スタッフにお願いしてソファーへ寝かせてもらっていた


「はぁぁ疲れたァァ」


そんな事を呟いてると


「城二少し話がある」


「城二、ちょいこっちきぃ」


九鬼先輩と土方先輩が何時になく真剣な表情で俺の事を手招きして、奥にある別室である控室へと俺を案内した


「まぁ適当に座ってくれ」


九鬼先輩に促され、俺と土方先輩は控室の椅子に腰を下ろす


「他の部員に聞かれると厄介だ、手短に説明する」


九鬼先輩は声のトーンを下げ必然的に3人は顔を近づけた


「九鬼家の掴んだ情報だと、今この大会に退魔特殊部隊の諜報員が数名潜伏してるらしい」


「諜報員ですか?退魔特殊部隊のお偉いさんが挨拶していたんで、要人警護のSPじゃないんですか?」


初日の開会式の宣言でも、2日目の貴賓来賓席にも退魔特殊部隊の軍服を着た、いかにも偉そうな中年を見かけていたので、安易にそう考え口にする


「まぁ建前はな...」


「建前?」


「ウチの土方家でも、可憐とこと同じ様な情報をつかんでてな...パーティ会場に来た時には未だ可憐は知らんかった見たいだけど、家の情報部に問い合わせたら、ウチの話とバッチし一致っちゅう訳や」


「先輩方お二人の話の本筋が見えません...諜報部が潜伏してるという事は、今大会に特殊部隊の首脳が注視してる人物が居る、若しくは現れる可能があるという事ですか?」


土方先輩は満足そうに頷くと


「流石、ウチの城二や」


「翼、余計な話は控えなさい...ここで言う所の退魔特殊部隊が注視してる人物がお前だ」


話の流れで、そんな予感がしていたので、それ程驚きはしなかったが


「それは、以前トラが口にした神滅の力に関係してるんでしょうか?」


『こやつの...もう一つの力...メメント・モリの根源...神滅の力だ』


あの日会議室でトラが口にした言葉を頭の中で反芻する...


「いや、あの時トラが録音していた記録を止めたので、内容までは政府に伝わって無いだろうが録音を繋げた時の細かな細工を、見破られたみたいだ」


「東光高校の、タヌキ爺も詰めが甘いわ」


「仕方ないでしょうね、Bランク級以上の神視使いがゴロゴロいるのが退魔特殊部隊って所だ...」


「つまりウチ等が言いたいのは、城二は正面の敵にばかり気取られていては危険という事、敵陣営や観客、もしかしたら審判すら...」


諜報部員というだけ有って、潜伏するのもお手の物と言う訳だ...


「分かりました...お二人のご忠告肝に銘じます」


俺達3人は部屋から出る所を誰にも見られない様に注意しながら、しれっとパーティ会場へと戻った


...しかし、二人からの忠告が頭の中にチラつき、祝賀会を満喫する気にはなれなかった




●東京ドームシティ、某所


「島津 豊一君」


シティー内の商店街付近で、試衛学園の島津は突然背後から声を掛けられた


「誰だい?君は、この西の超新星 島津豊一と知って声を掛けて来るとは...熱心なファンかな?」


振り返り、声をかけた人物に返事をする


「その通りなんです、私は貴方の類稀な才能に感服して一目見てからファンになった者です」


声を掛けて来た人物は目元迄隠れる程深くフードを被った如何にも怪しい人物の様だ


島津はキョロキョロと周囲を見渡すが、夕方とは言えまだ日差しの強いこの時期にフード付きのコートを着てる異様な人物に周囲の通行人は気づいて無い様だった


「僕の秘めた才能に気づき早くからファンになった君の慧眼には称賛するが...」


「人に話しかけておいて、フードで顔を見せないのはマナーがなって無いと思うが?」


流石の島津も目の前の人物に不信感を抱いてる様だ...その視線は丁寧な言葉使いとは裏腹に鋭い


「これは大変失礼をしました...」


そう言うと目の前のじん物はゆっくりとフードを捲る


「...何だい?君は...気持ちの悪い仮面等つけて...」




















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