〇東京ドーム内 特設武舞台 第一武舞台
「よし!!行くよマシロン!! 神衣 天宇受売命」
天音さんのピンクの流星眼がひと際、輝き・・・・
「「「!?」」」
〇神衣 天宇受売命
白く光る胸当てと肩当...そして黄金に輝く花々を模した髪飾り...
そして手には...淡く七色に輝く笹の枝を模したウイップ(鞭)
神具 天乃笹音(あまのささね)
笹の枝の様な形状で、歯にあたる部分が刃となっている...日の光を受け鋭い刃の部分が七色に輝き虹の輪を作る...
天音さんが振りかぶる度に、葉(刃)の部分がぶつかり、リンリンと心地良い音と共に光の粒子が飛び散る
・・・・・・・・・・・・・・・・
「これは驚きだ...まさか小百合に続いて天音まで神衣に覚醒していたとは...」
俺もこれにはビックリだ...部活動でも真白と良く組んで併せをしていたし、合宿でも組手や修練も真白にくっついて頑張っていたのは知ってたが...覚醒迄到達してるとは...
神衣した天音さんを見ても真白は驚きはしない...どうやら真白は既に天音さんの神衣について知っていたのだろう...
「んじゃマシロンも、アタシに見せてよ...目指すべき高みってのを」
そう言うと天乃笹音を真白に向ける
「ん、見せる...神衣 綿津見神」
水色に揺らめく胸当てと肩当、それと鉢金を身に纏い、その手には水が凝縮した様な神具蒼珊瑚が握られている
神視にて二人を見定めるが、やはり真白の力がずば抜けており見れば見る程その底なしの強さに寒気がする...
ただこの強さの真白であっても、今の尊に及ぶとは思えない...それ程まで尊の力が尋常では無くなっているのだ
「んじゃぁぁ、今のアタシの全力ぅぅいっくよぉぉ!」
天音さんは、舞を舞うように天乃笹音を地面に打ち付ける...そのたびに七色の光の粒子が飛び散り地面から飛び出してる様にも見える
そして、その動きが徐々に早くなり..天音さんの姿は七色の光の粒子の中へと見えなくなり
「ね、ねぇあれって...」「本当...綺麗...」
観客達が天音さんの技に見惚れている...
「アレは...花火?花?活け花?」
天音さんの作りだした光の芸術は、花瓶に活けられた花の様に輝き一つの芸術へと昇華する
「行っけぇぇぇ 神衣池上流 華術 風の宗 花神楽 散」
光の花々が天音さんの声に反応し、無数の光の花びらとなり真白に向かって飛んで行く
物凄い速度で飛んでくる花びらの弾丸...
しかし...
シュンシュンシュンシュン
真白は有り得ない速度の連続発射で、花びらを悉く撃ち落として行く...
弓を弾く手が早すぎて見えない...
そして...
「はぁはぁはぁ...やっぱ...マシロンは凄いやぁ~全力の奥義が...」
全力を出し尽くした天音さんは、どこか満足げに真白の方へと向き直り笑顔で頷いた
「ん、わかってる...神衣式弓術 水の宗 黒渦潮」
真白の放った水の矢は、青黒く渦を巻きドリルの様に錐もみし、武舞台の床を抉りながら天音さんへと向かって飛んで行く
「危ない!!天音さぁぁん!!」
応援席を立ち上がり、武舞台へと駆け寄るが警備の人に肩を掴まれ制止されてしまった...
武舞台上の天音さんは静かに微笑み、目を閉じると白い神衣の装備が霧の様に消えて行く...
ドォォォォン!
真白から放たれた黒渦潮の一撃は、天音さんには命中する事無く右横を通過しそのまま防御結界へと命中する
その衝撃で武舞台の四方を囲っていた防御結界に亀裂が入る...結界を張っていた退魔特殊部隊の術者が数名が同時にその場に前のめりで倒れる...
『なっ!?防御結界が弾け飛びました!?これは前代未聞です!?...はい...はい...え!?』
『あ、あぁと...失礼致しました、第二武舞台の結界術者が負荷に耐え切れず気絶したとの事で、一時試合を中断...え?棄権?...えっと...たった今連絡がありました...池上天音選手、棄権の様です、よってこの試合、雨宮真白選手の勝利です!!』
ワァァァァ!
大歓声に包まれる中、天音さんは真白に向かって駆け出し、その胸に思いっきり抱きしめた
「ん...天音苦しい」
「マシロン!有難うねぇ~アタシと全力で向き合ってくれてぇ~全部出し切って、マシロンにぶつかって、負けちゃったけど、なんか嬉しいぃぃ」
「ん、天音は友達...向き合うのは当たり前」
パチパチパチパチ♪パチパチパチパチ♪
俺たちは応援席から立ち上がり、二人に向け精一杯の拍手を送ると...
観客席からも、拍手が起こり...会場全体に広まって行く...壮観だ...
武舞台上では、天音さんが観客席に向かって笑顔で手を振る...真白は相変わらず無表情だが俺の方へ視線を向け、膝の上で小さく手を振っていた...
俺も笑顔で頷いて答える...
「次はお前だ城二...ここからは神と契約した者が出て来る、気を抜くなよ」
横に立っている九鬼先輩は武舞台上の二人を見つめながら、俺にだけ聞こえる様にそう呟く
〇第二武舞台
『第二武舞台での次の試合は、八千代高校 2年 初見 肇選手と、東光高校 2年 北野城二選手の試合です、両者此処までは相手を弾き飛ばし場外での勝利というファイトスタイルです、果たして3回戦での戦いはどうなるのか?注目です!』
「両者前へ」
主審に呼ばれ、相手選手と中央で視線をぶつける...
「ふっ...北のクズが...今までは相手に金でも渡して勝たせてもらったか?」
「...」
「お前みたいに、魔刑を舐めてる様なゴミに負ける訳ねぇ...直ぐに足腰立たなくさせてやるぜ」
「...」
「初見選手、私語は慎みたまえ...両者位置に」
「ちっ...ビビッて何も言えねぇってか?」
俺は敢えて何も答えず、平常心で開始線の前に立つ...
「では...始め!!」
「くたばれよ...おいでませぇ!?っ??」
相手の選手が神憑依する瞬間...気づけば場外へと吹き飛んでいた
武舞台では俺が正拳突きを打ち出した状態で止まっており...審判も何が起きたか分かってないみたいで呆気にとられている...
「審判...初見選手は場外の様ですが?」
惚けてる審判に俺が声をかけると...
「!? あぁぁ...は、初見選手場外!!勝者 北野選手!!」
場外で気が付き起き上がる初見選手は自分に何が起きたか分からず、憮然とした表情で俺の事を睨みながら武舞台を殴っている...
「ふざけるなよ!、こんなのインチキだろ、無効だ無効!こんな結果納得できるかよ!!」
副審の制止も聞かず、初見選手は怒りに満ちた表情で俺の元へと詰め寄ると...
「おい!もう一度だ!」
胸倉をつかみ上げ、顔を真っ赤にして怒鳴りだした
「止めなさい、もう勝負は「いいですよ?」...え?」
「だからいいですよ?もう一度戦っても」
「い、いや...だが、そんな前例...」
主審の男性が困り果て、運営事務の方へと視線を向ける...その時、退魔特殊部隊のお偉いさんが運営事務局の人にそっと耳打ちすると、事務局の人が驚いた表情をして...
何やら渋い顔をしながら、手前のマイクに向かって主審、副審に指示を伝えていた
「!?本気ですか??いえ...はい...解りました、最終確認して...はい、」
主審の男性は耳を手で覆い、通話が外に漏れない様に気を使ってるみたいだが...
「北野選手、本当に再戦で構わないんだね?再戦で君が負けたら次は無いよ?それでも再戦を受けるのかね?」
「え?あぁ全然構わないですよ?」
「確認出来たので、初見選手と北野選手の試合は再試合とさせて頂きます!」
ワァァァァ、えぇぇぇぇ
会場では歓声とブーイングが巻き起こるが...9割は歓声だった...ブーイングしてる観客の中に柳生親子と宝蔵院親子が居て、小春ちゃんと洋子ちゃんが何やら精一杯叫んでいる...
俺は二人の方へ向かって軽く手を振ると...
「では位置について...」
「始め!!」
「変な手品使いやがって...今度はそうは...御出でまっ!?」
初見選手は、気付けば武舞台の端へと吹き飛ばされていた
「!?っくっ!!」
武舞台の端に四つん這いの姿勢で両手両足を使い全力で踏ん張る事で、なんとか2度目の場外を回避した
「っ!?いったい何だってんだ...」
正拳突きをしている俺に視線を向ける...
「紫?!蒼拳じゃないのか?!」
俺の拳が紫の光に包まれ淡く揺らめいている...
「これは、蒼拳じゃない...そうだな名前を付けるなら紫拳(しけん)とでも呼んでくれ」
〇紫拳
第2チャクラと第4チャクラを合わせ、自分の心域で練り上げた心気を拳に纏わす事で神視の力を行為する技
トラと取り組んで物にした、紅拳に公園の一件で尊に放った、一撃をさらに昇華させた技...
あの時は、第2チャクラの練り込みが甘く拳に心気を纏わす迄行かなかったが、その後トラと試行錯誤し此処まで練り上げる事が出来た...
「紫拳!?そんなの聞いた事ないぞ!?はったりもいい加減にしろよ!」
「まだ第2チャクラの練り込みが弱くて、紅が強いが...ハッタリかどうか見ると良いさ...」
俺は再度拳を引き...
「紫拳!」
5メートル以上離れてる、初見選手に向かって撃ち出す
「!?」
武舞台際で立ち上がった、初見選手は見えない衝撃に吹き飛ばされ、あえなく場外へと吹き飛ぶ...
「審判...また場外ですよね?」
「は、へ?あっあぁぁ、初見選手場外!!勝者、北野 城二選手!!」
ワァァァァ!!
今度は、観衆も納得したのか一気に歓声が上がる
俺は場外へと吹き飛んだ初見選手の元へと行き...手を差し出すと
「恐れ入った...神憑依してないまま負けるとはな...」
そう言うと俺の差し出した手を握り返し...
「色々言った事を謝らせてくれ...本当に申し訳無かった、それとこれは負け惜しみだ」
「負けるなよ」
俺に頭を下げ謝罪した初見選手は八千代高校の仲間の元へと合流していった...
「負けるなよ...か...言われなくても全力でぶつかるさ...なぁ親友」