〇東京ドーム内 出場選手控室
出場選手控室には、水分補給の為のペットボトルとおしぼりが、テーブルに用意してるだけのシンプルな部屋だった...
天井のスピーカーから、アナウンスで試合開始前1分前だと放送が入り「ふぅ―――」と一つ深く息を吐く
真白と天音さんの事は心配だが、九鬼先輩の言う通り俺がここで、二人の為に棄権してしまっては二人が悲しむだろう
『落ち着かないな...城二よ』
「トラか...まぁな...先輩地達から聞いた退魔特殊部隊の諜報員の事と言い、真白と天音さんが居なくなった事と言い...何かが起きてるとしか思えない」
『儂も、あの時不穏な気配を感じたのだが...直ぐに消えてしまってな、すまぬあの時もう少し調べておれば...』
珍しくトラが落ち込んで居る様だ...
「真白は最強だし、天音さんもああ見えてしっかりしてる、それに皆川先生も他の部員も探してくれてるし九鬼先輩や土方先輩も家の力で捜索してくれると言ってたし...今は信じて待つしか無いだろう」
『...ふっおかしな物だ、何時もと立場が逆になっておる』
「ぷっっ、確かにな」
トラとの会話で少しだけ気持ちが楽になった気がした
『試合時間となりました、選手はグラウンド入口と表示してあるゲートから中にお進みください』
そんな会話をしてると、あっと言う間に試合時間ととなった...
『油断するなよ』
それだけ言うとトラは足元の影の中へと消えて行った
「よし!行くか!」
勢いよくドアを開けると、内圧の関係か勢いよく空気が流れ込み同時に観客の歓声が一気にボリュームを上げる
俺はゆっくりと先に進み...目の前に見える武舞台へと向かう
既に武舞台上には、相手選手である島津豊一が待ち構えていた
『続きまして、西側ゲートから登場するのは、東光高校 2年 北野選手です、北野選手は此処まで武技を使って相手を場外に弾き飛ばす先方で勝ち進んで来ました、果たして今回もその武技が通用するのか!』
ゆっくり武舞台へと昇り、審判に促され中央で島津選手と顔を合わす
「ふふふ、相手が君程度では萎えるねぇ..まぁ雨宮さん...だっけ?彼女ですら、この僕に恐れをなして棄権したんだ君も今の内に棄権しておいた方が身のためだと思うがね」
「...真白は、お前なんか相手じゃないさ、俺が証明してやるよ」
「言うじゃ無いかぁ...まぁこの僕の華麗な技に観客も、君たちの所の美しい女性達も...翼さんも皆、虜になる事は間違いない...君には僕の引き立て役になってもらうよ」
「私語は慎みたまえ!...両者開始線へ」
俺と島津君はそれぞれ開始線まで下がる
「では、始め!!」
「紫拳!!」
俺は、開始前から練っていたチャクラを解放し開始早々から一気に紫拳を打ち出す...
しかし...
「木の型 山崖杭(やまがくい)」
島津選手は4本の木製の杭を顕現させ、自分の目の前の床に打ち込んんだ
ドッ
俺の打ち出した紫拳の拳撃波は、木の杭に阻まれ霧散する...
「あれは...大山咋神(オオヤマクイ)か...」
〇大山咋神(オオヤマクイ)
山に杭を打つというイメージから土地の所有を示す地主神とされた、鬼門を守護する役割を担ったことから要地の守護を司る神と知られる
また、それが転じて家内安全や地域鎮護の神として崇拝される事もある
「貴様の事は、ある程度知っているぞ?四聖獣の白虎と契約してるんだろ?ただ、仮の契約とやらで思うようにスキルが使えないらしいな...もともと木属性に不利な風属性だ、俺の勝は揺るがないが...」
「木の型 山崖杭・円居(やまがくい・まどい)」
島津が手を上空に掲げると俺と島津君を囲う様に杭が突き刺さり、周囲と俺たちの空間が分離された...
「なっ!?」
周囲が木の杭で壁になり...目の前の島津君が不敵な笑みを見せながら俺の元へと歩み寄る
「なっ!?何をする気だ!」
身構える俺に向かって手を上げ不敵に笑う
「おぉ~と、これを見ても俺に攻撃出来るのかな?」
そう言って、一枚の写真を俺に見せる...
「!?真白に天音さん!?」