〇東京ドーム内 第二武舞台
島津に向かって土下座している俺に駆け寄り、怪訝そうな審判が俺に尋ねる
「北野選手、これは戦意喪失とみなしますよ!?」
「...くっ...僕は...僕は...」
「降参なんかするかぁぁ!」
俺は起き上がると同時に、紅拳を思いっきり振りぬく
「!?」
不意をつかれた島津だが、流石にここまで残った選手、間一髪で紅拳を避け俺との距離を取る
「フフフフ、戦意喪失と見せかけての不意打ち...卑怯上等な君に相応しい醜い戦い方ですね」
驚き戸惑っていたのも一瞬、すぐに余裕の表情を見せる島津
「だが良いのですか?」
俺に向かってニヤつく島津は道着の懐を軽く叩く...が
「!?なっ!?無い!?」
島津は、慌てながら自分の胸や腹の部分を手で確認している
その様子に首を傾げる審判
その時、俺がヒラヒラとスマホを揺らして掲げる
「なっ!?て、てめぇ!!」
スマホを目にし驚く島津と審判
「北野選手!、スマホや通信器の類の持ち込みは禁止ですよ!!」
審判は、笛を一回拭き警告する
「いやぁ~すいません、控室に置いて来るの忘れてたみたいでぇ~ちょっとチームメンバーに預かってもらいますねぇ~」
審判にそう告げ、俺は島津のスマホを九鬼先輩の方へと放り投げる
「なっ!?」
驚く島津の方へ向き直ると...悪党らしく嫌味な笑みを見せる
俺は背中越しに、先輩に向け指で1,3,5、2と合図を送る...先ほど島津がロックを解除していた番号を目で追い覚えていてよかった
九鬼先輩も俺の意図を察し、すぐにスマホを確認すると驚いた様子から一気に怒りに満ちた表情に変わる
一通りスマホの中身を確認しうた九鬼先輩は、土方先輩に向かって何やら合図するいと、ただならぬ様子を感じ取った土方先輩は九鬼先輩と合流し少し話をしてから、二人で何処かに電話をしながら奥の選手控室の方へと足早に消えて行った
「さぁ試合再開と行こうか、島津君?」
その様子に安堵した俺は、再び島津の方へと向き直る
「くそぉ!!」
島津は俺に手を掲げ
「くたばれェェ!木の型 山崖杭・弾」
島津の手からは、小さな釘位の木の杭が無数に打ち出される
それを、武舞台を走りながら避けつつチャクラを練る
「紫拳!!」
隙を見つけ島津に向かって紫拳を打ち出すが...
「木の型 山崖杭!、無駄だ、お前の攻撃は直線的で読みやすい、俺の防御を崩せる訳が無い!」
(流石、偉そうにしてるだけの事は有るな...トラ無では流石に分が悪いな)
「木の型 山崖杭・弾・弐だぁ!」
今度は両手を向け、両手から木の杭を打ち出す
「くっ!!!」
上下に撃ちわけてくる、木の杭を避け切る皓が出来ず肩と脇腹に数本命中する...出血はそれ程でも無いが刺痛により動きが鈍る...
「いてェェ!」
顔面を守る為、両手でガードしながらも必死で避け続ける...が
「がはっ!!」
途中で足がもつれ、前のめりに倒れてしまう
「ハハハ、無様だなぁ~所詮は卑怯な方法でしか勝を拾えない負け犬がぁぁ」
倒れた俺に向け容赦ない攻撃を繰り出す、島津
「ダ、ダウン!!、島津選手は離れて!!ワァ~ン!ツゥ~ウ!スリィ~!フォ~!・・・・」
(ダメだ...今のままじゃ手も足も出ない...)
「エェ~イト!ナァ~イン!テェ~・・・」
俺はテンカウント前に立ち上がると、ファイティングポーズをとる
「北野選手いけますか?」
「は、はい...まだ行けます」
右腕の側面には無数の木の針がささり、ハリネズミの様になっている
「わ、わかった...だが次ダウンしたらTKOだからな」
(もうこれ以上ダウン出来ない...)
島津は勝を確信したのか、飄々とした様子で俺の方へとゆっくり歩み寄り
「ほらぁぁ!」
ドゴッ、ボゴッ、ドゴッ
亀の様にガードを固める俺に向かって殴る蹴るで打撃をしかけて来た
「くっ!!ガハッ!!」
木の杭は小さく殺傷能力が低いとは言え、目や急所に命中したら致命傷になりかねない...
無防備な脇や鳩尾に容赦無い打撃を加えてくる...
観客も武舞台上で行われる一方的なリンチに、目を背ける者もいる
「オラオラァァさっきの威勢はどうしたぁ?」
(だ、だめだ...意識が飛びそうだ...)
ガクッと右足の膝が折れ、身体が重くささえられない...
『城二...良く耐えたな』
「!?」
ここでようやく、俺の白黒天使のご降臨だ...