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第85話 乱入者

〇東京ドーム内 第二武舞台


『城二...良く耐えたな』


「!?」


島津の猛攻に膝を付き、力尽きようとしたその時ようやく俺の白黒天使が舞い戻って来た


「遅いぜ...待ちくたびれて寝そうになってぞ」


『ずいぶんとボロボロの寝巻だな...まぁよい直ぐにケリをつけるぞ』


「来い、白虎ぉぉ!」


俺の周囲に風が巻き起こり、白虎を神憑依させる


「待たせたな、島津...第二ラウンドと行こうぜ」


白虎を憑依させた俺を悔しそうに睨みつける島津


「ちっ...あの男の情報は本当だったか...まさか本当に白虎と契約してるとはな...」


島津はそう言うと、数歩だけ後ろに後退し目の前に木の杭で壁を形成する


『ほう...大山咋神か面白い』


「トラ有効な攻撃スキルをギフトしてくれ」


小声でそうトラに告げると詠唱体制に入るトラ


「?何だ?スキルは使わないのか?」


木の杭から、警戒し此方の様子を伺っていた島津が不思議そうに首を傾げている


(どうやら、俺が仮契約状態でスキルを思う様に使えない事までは知らないらしいな...これは使えるな)


「風の型 悠久の鋭風」


正面の木の杭の壁を避ける様に回り込みながら、手をかざしスキルを口にすると


「ちっ...」


島津は側面にも木の杭を出現させガードする


「こっちだ!!風の型 悠久の鋭風」


こんどは背面に回り込み、風のスキルを口にすると先ほどと同様に、慌てて背面にも木の杭を生成した


「て、てめぇ!さっきから何だ、全然撃ってこねぇじゃねぇか!!」


戸惑う島津を無視し、木の杭の死角を見つけてはスキルの構えを見せ、島津はそこに蓋をする...そして...


「はぁはぁはぁ...スキルを連発させやがって...お前の魂胆は解ったぞ...」


「さては、神視レベルが低すぎてスキルを使えないんだな?、俺にスキルを連発させて疲労させる狙いか?クククク...しょせん小者、浅い浅い...おつむの弱い馬鹿共なら引っかかったが、俺様の様な生まれながらの天才にそんな姑息な作戦が通用するかよ」


「くっ...」


島津の言葉に悔しがる俺を見て、口元を歪める島津


「さぁ~て種明かしも終わった事だ...そろそろお前の間抜けな顔も見飽きた、決着をつけるとしよう」


そういうと、島津は俺に向かって両手を合わせ前に突き出す


「くらうが良い...木の型 岩崩の楔(がんほうのくさび)」


島津の合わせた両手に大きな木の杭が現れる...杭の先端は返しが有り一度刺さったら抜けない...まさに楔の様な形に生成された


「風の型 連鳴の魁風」


同時に俺も風のスキルを唱える...


「馬鹿か、もうそのコケ脅しに引っかかるかぁぁ!喰らえェェ!」


島津の手から打ち出された楔は俺に向かって一直線に飛んでくる


「いっけぇぇぇ!」


両手に作られた風の球を飛んでくる楔に向かって投げつける


ドォォォォ


楔とぶつかった風の球は、楔を粉々に粉砕し尚も威力を弱める事なく島津に向かって飛んで行く


「なっ!?馬鹿な!?本物だと!?くっ!!」


慌てて真正面に木の杭を生成し、防御壁を築くが...


バギィバギィ


木のへし折れる音と共に目の前の木の杭が粉々に砕ける


「あ、危ない所だっ!?グへッ」


俺の攻撃を凌いだと思っていたのか、油断した島津は二球目の風の球を見落としてしまい腹に直撃を受け、後方に吹き飛ぶ


「じょ...場外ぃぃ!勝者、北野選手!!」


場外の壁に激突して失神してしまった島津を見て、審判は俺の手をとり勝ちを宣言した


一瞬の決着に状況がつかめない観客達は静まり返っていた、審判の声がドーム内に響き渡る位に...


「やったぁぁ!城二おにぃちゃーん!」「勝ったよ~城二にぃが勝ったぁ~!」


そんな場内に、可愛らしい少女の声が2つ聞こえる...


俺は観客席で俺の事を応援してくれていた、小春ちゃんと洋子ちゃん達に笑顔で手を振る


『だ、第二武舞台は北野選手の勝利で決着しましたぁぁ!劣勢からの大逆転勝利ぃ~』


ワァァァァ!


放送席からの中継の声に、観客達の歓声が沸き起こる


...その時


パリィーン


ドームの天井に設置された照明が割れる...


周囲は明るいのに、照明が割れた天井の一部が不気味に暗くなり、心なしか影がどんどんと広がって行く


ドォォォォン!


暗闇より突如落雷が落ち、武舞台の上に雷の柱が出現する...そして


『城二ぃ!!気を付けろ何か居るぞ!!』


「!?」


トラが子猫の姿で俺の前にでて背中の毛を逆立て目の前の雷柱を威嚇している...


パチパチパチ♪


雷の中に人影が3つ現れ、真ん中の影は俺に向かって拍手しながら此方に向かって歩いてくる


「いやぁ~、お見事です、城二君」


現れたのは、漆黒よりも黒いフード付きのコートを纏った仮面の男...


「だ、誰だ!?」


『き、危険だ!城二...奴は...』


「黙れよ、ドラ猫」


仮面の男の後方から、声がしたと思ったら雷光がほとばしりトラを直撃した


『ガハッ!!ガァァァァ』


雷光に貫かれ感電しながら悶えるトラ


「と、トラッ!!!」


とっさにトラに手を伸ばし雷光から救おうとするが


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!!」


俺はトラと一緒に感電してしまう


「止めなさい!!君たちは何者だ!!彼への攻撃を止めなさい!!」


主審と副審達が慌てて武舞台上に上がり、俺に向かって防御結界スキルの構えを取る


「...八咫(やた)」


「えええ、わかってるわ草薙(くさなぎ)」


草薙と呼ばれた仮面の男の背後から、同じく赤いフードコートを纏った仮面の女性が現れ上空に向かって手を広げる


すると、仮面の女を起点に白いドーム型の領域が広がり一瞬で武舞台を覆いつくした


「「「「行くぞぉぉ!木の型 結蜜の界(けつみつのかい)」」」」


副審達が一斉に結界のスキルを放つ...が


「なっ!?発動しない?!」「馬鹿な!?木の型 結蜜の界!!結蜜の界!!」「だ、だめだ、神との交信が出来ない!!神視が封じられた!?」


副審達は、あきらめずにスキルを叫んでいるが...


「おい、八尺(やさか)その辺にしとけ、これじゃ話もできない」


俺とトラに雷光のスキルで攻撃していた、黄色いロングコートを身に着けた仮面の男は不満そうにしながらも、スキルを発動していた手を下ろす


「ガハッ!!」『グゥゥゥ』


感電から解放された俺の顔や腕は、電気火傷で焼け焦げてしまい見るも無残に前のめりに倒れ込む...トラもそうとうダメージを受けたみたいで体中から煙を上げていた


「八咫、これじゃ話も出来ない顔だけでも治してやれ...俺はあっちを片付ける」


「...わかった...命令には従う」


黒いコートの仮面の男は、一瞬だけ背後の赤いコートの女の方を振り返ったが、すぐに俺達に顔を向けこっちに向かって歩いてくる


「ひぃひぃ...ぴゅあいほらぁぁ(おい、トラ)ぶひぃひゃ(無事か?)」


唇が火傷でくっついてしまい上手くしゃべれない上、眼球も片方が感電のショックで破裂してしまい何も見えない...


「八咫...早くしないと死んでしまうぞ?」


草薙と呼ばれた男は足元で芋虫の様にもがく俺の方に顔を向け、そのまま通りすぎて行った


「......」


八咫と呼ばれた仮面の女は俺に向かって人差し指を差すと...指先から白い光の筋が伸び俺の顔面に命中する


じんわりと顔が熱くなり、徐々に痛みが引いていき眼も見える様になってきた...


しかし、俺が目にした光景は


「やぁお待たせしたね..。」


仮面やコートが血まみれになった草薙と呼ばれた仮面の男の姿だった...背後には胸部を鋭利な刃物で切り裂かれた主審と副審達


「城二君、改めて自己紹介させてもらうね、僕は神無(かむな)の首領をしている、草薙と言う者だよ」


























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