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第22話 ダンジョン 1

 朝、焼いたパンや炙った干し肉で朝食を取っていると、さっそく少年がやってきた。


「おはよう、兄ちゃん達は良く寝れたか?」


「慣れてはきたがテントだとあんまり寝れないんだよなあ」


「私はとても良く眠れました。」ブタちゃんはいつも快眠だ。


 ここは宿屋に泊まれるほど稼げていない探索者が野営する場所らしく、夜になっても人の気配がして俺は落ち着かない。


 ここに来る道中も山賊などが出ないか心配で眠る事ができなかったが、町の近くでも今度は盗賊が心配で眠れない……。心配しすぎなのか?


「俺は絶好調だぜ!」 少年はテンションが高い。


 我々に良いところを見せてやろうと張り切っているのだろう。


「じゃあ行くか。少年は我々のパーティーに入って一緒にダンジョンに潜るという事で良いな? 分け前は3等分だ」


「それでいいぞ」


「では自己紹介をしておこう、俺の名前はマコトだ」


「私はブタちゃんで良いよ」


「俺はケインだぜ」


「よろしくな、ケイン」


 あと片付けをしてダンジョンに向かう。


 その間に俺は最終確認をしなければいけない。


 大丈夫だとは思うがケインの職業が詐欺師やら盗賊になっていたら困る。


 名前:カレン(ケイン)

 種族:人間 性別:女

 職業:ダンジョンガイド

 レベル:10

 スキル:潜伏2、採取2、地図作成2、幸運1

 スキルポイント2


 ???


 職業は問題ないが他が全然違う! これでは別人だ……。


 でもまあ、理由はなんとなく解る。舐められない様にとか、女の子だとダンジョンに連れて行って貰えないのかもしれない。


 本人が名前はケインで男の子って事にしておいて欲しいなら、そう言う事にしておこう。


 それと幸運というスキルが輝いている。


 これはブタちゃんの怪力とか回復みたいなレアスキルなのだろう。この後のダンジョン探索で良いことがあるように、勝手に幸運を3にあげておいた。本人にとってもマイナスな事はないだろう。


 しかし疑り深い様だが職業が犯罪者ではないと言うだけでは完全に信用できる訳ではないと思う。


 これはあくまでも過去に罪を犯した事がない、というだけでこれからもしないとは限らない。ケインに裏切らせないように我々のパーティーに居る価値があると俺がケインに思わせなくてはならないようだ。


「ケイン、昨日はブタちゃんと2人で芋虫を倒してみたが、あれでは銅貨1枚にしかならないようだ」


「芋虫ってジャイアントキャタピラーの事だろう? あれは弱いけど金にならないから誰も相手にしないぞ。もっと美味しい魔物がいるぜ。とりあえず5階のオオトカゲで様子をみてみよう」


「5階まで行くのか? 何時間くらいかかるんだ?」


「すぐだよ。ダンジョン内の階層はゲートで移動できるんだぞ」


 ゲートとは何だろうか? 解らないがケインに付いていくしかない――。


「ほら、もうダンジョンに着いたから、さっさと中に入ろう。ゲートまで案内するぜ」


 ダンジョン内をケインに付いて歩いていく。ケインは何度も歩いた道なのだろう、迷うそぶりもせずにズンズンと歩いていく。


 何回か曲がると少し開けた部屋に出る。中央には青く光るドアの様な板状の物体が見える。


「あの青いのがゲートだ。一度でも行ったことがある階層ならゲートを使ってワープできるんだ。俺は10階まで行った事があるんだぜ。今日は5階に行くぞ。俺の体に掴まって一緒にゲートをくぐるんだ」


 俺はケインの右肩のあたりを掴み、ブタちゃんには俺の左肩を掴ませる。


「ご主人様、怖いです……」


 ブタちゃんが怯えているが、こんな所で時間を掛けていてもしょうがない。


「ブタちゃんは目をつぶっていて良いから、さっさと行くよ」


 3人が一塊となってゲートをくぐる――。


 くぐり抜けたはずだが、また同じ部屋にでる。


「同じ部屋みたいだが……」


「ちゃんと5階についてるぜ。さあオオトカゲはこっちだ」


 俺には解らないがケインには解るのだろう。迷いなく進むケインに2人で付いて行く。


「あ、あそこの少し出っ張っている床はトラップだから踏まないでね」


「ブタちゃん、踏むなよ」 こういう時のブタちゃんは信用できない。


「解ってますよ……」 ブタちゃんは不満そうに呟いたが、トラップを踏まずにしっかり跨いだ。


 さすがに心配しすぎだったようだ――――。


「そろそろオオトカゲが出てくる辺りだから慎重に――」


 周囲の壁などは何も変化がないが、場所的にオオトカゲの縄張りなのだろう。


 曲がり角を覗いたケインがこちらに振り向く。


「居たよ。狙い通りオオトカゲだ。5階のオオトカゲは1匹づつしか出ないから、他の魔物は気にしなくて良いぜ」


 俺も曲がり角から覗くと確かにデカイトカゲがいる。昔テレビで見たコモドオオトカゲがあんな感じだったと思う。


 ブタちゃんも俺の後ろから覗き込む。


「立ったら人間くらいありそうですね」


 今は4足歩行しているが、急に起き上がったりするのだろうか?


「立っている所は見た事ないから大丈夫だと思うぞ」


 ケインが俺の心配を解消してくれたが、なんで言わなくても解ったのだ? 空気の読める奴だ。


「とりあえずブタちゃんが1発殴ってみて、どれ位の強さか見てみよう」


「解りました!」


 ブタちゃんがドタドタとオオトカゲに向かっていく――――。


 オオトカゲも気が付いたようだ。


 ブタちゃんに向かって大きく口を開けるが、ブタちゃんは一切それを気にせずオオトカゲの口の上からこん棒を振り下ろす。


*バチン*


 強引にこん棒によって口は閉じられる。


「オラ!」 続いてトカゲの頭にこん棒が振り下ろされトカゲは動かなくなる。


「おお、ブタの姉ちゃん凄いな。そんな木の棒2発でオオトカゲ倒しちゃうのか」


「あんまり強くなかったですね」


 ブタちゃんは余裕そうだが、鱗とか堅そうだから俺の矢は通らない気がする。


 俺だったら目を狙うか? まあ1匹しか出ないならブタちゃんに任せた方がはやい。


「オオトカゲは目が売れるんだ。1個銀貨1枚だから1匹で銀貨2枚になるぞ」


 そういいながらケインは素早く目玉を刳り抜いて自分の革袋に目玉を放り込む。


「目玉だけじゃ勿体ない気がするな」 この鱗とか皮とか売れないのかな?


「他はたいして値段付かないし重いから、持って帰る奴は少ないよ。そんな時間があるなら、もう1匹倒した方が儲かるぞ」


 皮は諦めて次を探しに行こう――――。


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