二月も末をむかえ、ようやく春のきざしが見えはじめるも、まだ肌寒いある早朝のことだった。春日局のもとで雇われている葉月という伊賀者が、火急の要件で春日局に面会を求めてきた。
「申しあげます。この部屋の天井裏にて、甲賀者らしき怪しきくノ一を捕らえましてございます」
しかし春日局は眉一つ動かさない。
「そうか」
とだけ言った。
「してその曲者はいかがいたした」
「本丸の地下牢に軟禁いたしておりまする。彩芽とか申すくノ一で、いま少し様子を見て、黒幕の名など聞き出すつもりでおりまする」
「勤め大儀」
と春日局はあくまで冷静である。
問題のくノ一は、かって夏が昔の愛人を復讐のため軟禁した部屋で、寝台に仰向けに寝かされていた。もちろん両手、両足を縄で厳重に固定されている。両手、両足だけではない。首と、そして股間にも縄が食いこんでいた。さらに首には刀傷があった。
「どうだい、黒幕の名を明かす気になったかい?」
と葉月は冷厳な表情でいった。
「いう……もん……か」
「しぶといねえ。もう気づいているかもしれないけど、この縄は時間の経過と共に、次第に締めつけがきつくなるようにできているんだよ。そのうち息が止まるかもしれないし、あらぬところに縄が食いこみすぎて、女として恥ずかしいことになるかもしれないよ。その前に吐いてしまいなさいよ」
と葉月は、その彩芽とかいう甲賀者に顔を近づけていう。
「どうしてもいわないというなら仕方がない。女としての屈辱を味わってもらうしかないね」
突然、葉月は彩芽の顔に布を押しあてた。何か液体らしきものが染みこんでいて、不思議な香りがした。
「この匂いを嗅いだら最後、お前はだだの女になり、男の体が欲しくてたまらなくなるんだ」
「何を馬鹿なことをいうな!」
「いつまで強気でいられるかしらね!」
突如として葉月は、彩芽の黒装束の胸元のあたりを、力まかせに引き裂いた。両の胸がむきだしになった。
「口からだけでは足りないかしら?」
葉月は、彩芽の股の間に正座の姿勢で座り、女の秘部にも布を無理やり押しこんだ。思わず、苦悶の声が暗い地下牢に響きわたった。
「あんた見たところ、二十そこそこってとこだろう。私より五つほど若いほどってとこかな? それでいてどうやら生娘じゃなさそうね」
葉月が今一度、女の秘部に指をいれる。再び悲鳴が周囲に響きわたった。
「どうしてもいわないなら、奥の手があるわ」
葉月は、いっそう底意地が悪そうな目をした。突然背後に出現したのは、普段は牢に入れられている罪人たちだった。
「お前たち、久方ぶりの女だよ。こいつは好きにしていいわよ。ただし殺すな。殺したらお前たちの命もないからそのつもりでいな」
こうして彩芽は、拘束されたままの状態で、囚人たちにかわるがわる犯されるはめになった。
「やめろ! 近寄るな!」
その泣き叫ぶ声を耳にしながら、葉月は一旦は地下牢を後にした。
……その日の夕刻のことである。再び地下牢を訪れた葉月は、彩芽が寝台にしばりつけられたまま、動かない様を目にする。顔には布が押し当ててあった。呼びかけても応答がない。
「殺すなといったのに、結局殺してしまったのかい! どれたっぷりと男を味わったことだろう」
葉月は股の間の女の秘部に指をいれようとしたその時だった。まるで想像していたのと違う感触に、思わず顔色を変える。
「こ、これは男ではないか!」
まさしく彩芽が着ていた黒い服を着せた男だった。次の瞬間、強い力で何者かが葉月の首をしめる。囚人服を着た彩芽だった。
「残念ながら、囚人たちはみんな殺した。私を甘くみるな!」
「己、私を本気で怒らせるな!」
すぐに葉月も反撃する。この後、暗闇の中でくノ一同士による壮絶な死闘が行われた……。