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ペッパーの街

白い顔、笑う声

「こんにちは、いらっしゃいませ」

角を曲がればまた同じ

どこにでもいる、ペッパー君


カフェの席にも

改札の向こうにも

病院の受付、スーパーのレジ

「ご用件は?」と首をかしげる


誰も怒らない

誰も戸惑わない

誰も傷つかない

誰も、愛さない


気づけば街じゅうにあふれてる

掃除する手、ドアを開ける手

バスを運転する手、髪を切る手

すべて、白く冷たい指先


人はどこへ消えたのか

かつてこの場所にいたはずの

ざわめき、ため息、笑い声

いまは、もうない


それでもペッパーは笑っている

「またのご利用をお待ちしております」

規則正しく響く声

だれのために、だれの代わりに


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