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第44話 ルルシアのアフタヌーンティー




 「私のお茶会にようこそ! いらっしゃいませ」


 天気の良い、お店がお休みの日にルルシアが家へお友達を呼んでお茶会を始めた。お友達はいつもよりおしゃれをして来てくれたようだ。

 「お招き、ありがとうございます!」

 皆、会釈をして淑女のように用意した椅子に座った。


  お庭にテーブルと椅子を準備して、ガーデンアフタヌーンティーをすることにした。天気が悪いようならば家の中でもできるようにしていたけれど、お天気が良かったのでガーデンアフタヌーンティーを開くことにした。


  「晴れて良かったわ」

 「本当にね!」

 ルルシアはお友達に挨拶をして、アフタヌーンティーの用意を始めた。

 「外でお茶をするのは初めてかも」

 「私も!」

 お友達は始まる前から楽しそうだ。私はルルシアのお手伝いしてお友達に挨拶をした。


  「ようこそいらっしゃいました。私はルルシアのの、アルシュです。今日は、楽しんでいってくださいね」

 微笑むと、お友達も笑顔で「お邪魔しています! ありがとう御座います!」と返事をしてくれた。

 「では運んできますね」


 アフタヌーンティーなので、アフタヌーンティースタンドにサンドイッチやスコーン、ケーキなど乗せてキッチンから庭に設置したテーブルの上へ置いていく。

 「わあ!」

 「美味しそう!」「きれい!」

 お友達の楽しそうな声が上がった。紅茶を人数分淹れて、ルルシアが座ればアフタヌーンティーの始まり。私はルルシアに合図を送って、仲良し四人組の邪魔をしないように家の中へ入った。


 ティースタンドの一段目には、サンドイッチ・カップに入れた生ハムのサラダにほうれん草とチーズのキッシュなど塩気のある物を。二段目にスコーン。クロテッドクリームと数種類のジャムを添える。お花の形のクッキーやマカロンで見た目をカラフルに。

 三段目には甘いものを。イチゴのミニショートケーキにガトーショコラタルト、ミニグラスに入れたフルーツなどにハーブを飾って華やかにしてみせた。


 私も手伝ったけれど、ほぼルルシアが全部作った。カフェのお店が開けるくらいだ。……考えてもいいかも。


 「いただきます!」

 「美味しいわ!」「見た目もいいわね!」

 私のいるところまでお友達の声が聞こえてくる。楽しんでくれて何よりです。


  「紅茶も美味しい!」「キュウリのサンドイッチ、美味しいわ」

 「え――! 生ハムがバラの形に巻かれている! 可愛い――!」

 姿は見えないけれど、声が丸聞こえだ。聞こえてしまって申し訳ない。


 アフタヌーンティーを楽しみながら、おしゃべりも弾んでいるようだ。

 「アルシュさんって、ルルシアさんの親戚なのね。いいなあ……素敵なお姉さんよね!」

 お友達の一人の話し声が聞こえてしまった。私は紅茶をこぼしそうになった。

 「お母さんでもないし、お姉さんにしてはあまり似ていないし。どういうご関係かと思ったけれど、親戚だったのね」

 「私もアルシュさんみたいな、優しい親戚のお姉さんが欲しい――!」


  紅茶をこぼさないように、ソーサーへティーカップを置いた。自分の事をあのように言われるのは悪口より嬉しいけれど、照れてしまう。

 「お店を一緒にやられて、二人だと心強いでしょう」

 「ええ。一人ではできなかったわ。アルシュがいてくれたから」

 いいわね~! とお友達は、私とルルシアのことを羨ましいようだった。


 「次は二段目のスコーンをどうぞ」

 ルルシアの声が聞こえた。どうやら一段目のサンドイッチなどは食べ終わって、二段目にいくようだ。


 「スコーンも手作りなのかしら?」とお友達がルルシアへ聞いたようだ。

 「そうなの。良かったら、あとでレシピを教えますね!」

 「ええっ! いいの?」

 きゃ――! と女の子たちは嬉しそうな声をあげた。


 私にもアフタヌーンティーを用意してくれて家の中で、一人でいただいている。サンドイッチやマカロン、ケーキなど全部美味しい。今回はハーブで飾ったけれど、ルルシアなら、毎回違ったアフタヌーンティーが作れそうだ。


 「うん。美味しい」

 前からレシピなど考えて準備していたので、美味しいものになった。本屋で買った料理の本が役に立ったようだ。


 たとえば。ルルシアと私が離ればなれになったとしても、このお菓子作りの腕があればどこかのお店で働いたり、自分のお店を持ったりできるだろう。開業資金は、ルルシアの分の貯めてあるお金があるし問題ない。――ただ、その時が来ないで欲しいと考える。


 「アハハ! ケイトさん、それは本当?」

 「本当なのよ! 困っちゃう」

 四人の楽しそうな会話と、笑い声が聞こえてくる。ルルシアに、お友達ができて良かった。


 会話と笑い声。そして今度は歌声が聞こえてきた。

「歌っているのかしら?」

 お友達の歌声だろうか? 可愛らしい歌声が聞こえてきた。そういえばこの地域で人が集まると、この地方に長く伝えらえた歌を皆で歌っていた。


  ナッシュとアリアが生きていた頃は、地域の集まりに連れていかれて私も歌っていたのを思い出した。あの頃の歌と同じだ。

 「懐かしい……」

 覚えていたので小声で一緒に歌ってみた。


  地方に伝えられた歌は、自然への感謝などが歌われていた。楽譜などは、ない。祖父母から父母へ。そして子へ、教えられながら歌われてきたもの。ルルシアは、お友達に教えてもらいながら歌う。

 この歌を教えてもらい、歌うことはこの地域の人に受け入れられたあかしのようなもの。

 「良かったわね、ルルシア」

 私は静かに微笑んで呟いた。




















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