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二〇一七年九月九日 その3

 記念撮影の最中、土橋は目を真っ赤にして泣き続けていた。

 その光景が珍しく、演奏を聴きに来ていた吹奏楽部の卒業生たちは、思わず笑い声を上げていた。

 近くでは、瑠璃が熊谷君を慰めながら泣きじゃくる彼を見守っている。意外にも、その姿がとても愛らしく感じられた。

「千沙」

 振り返ると、今回は、満面の笑みを浮かべた瑞希が立っていた。

「どうだった? 満足した?」

「もう、最高っ!」

 瑞希は間違いなく、純粋に音楽の喜びを感じ取っていた。

 周りの同級生たちとも楽しげに談笑していて、その光景が何とも微笑ましい。

「先輩!」

 隣の雪ちゃんが、何かに気づいた様子で声を上げる。

 そこには、信二たちの姿が見えた。


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