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第113話 死亡遊戯

「というわけで本日は六十階層を攻略するまで帰れない奈々子ななこを見守る配信になる」


【長く苦しい戦いだった……】

【※まだ続きます】

【もう猫屋敷ねこやしきの顔が虚無で笑ってしまうんですよ】

【もはや文句を言うことさえ出来ない猫屋敷、いいぞ】

【だんだん装備が簡素になってるのが〝〝〝ガチ〟〟〟感あって味なんですよね】

【トップクランとか逆に着飾ってないからな】

【布の感触が邪魔とかが普通に死に直結するので】


「チャンネル名も『猫屋敷さとしを探しています』に変更した」


【ホラーチャンネル?】

【内容はホラーだから間違ってないな】

【ホラーの方向性がホラーじゃねぇんだよな……】

【ひたすら死が隣でコンニチワしてる苦行を強いておきながら悲鳴を挙げる猫屋敷を見つめる執事が一番のホラー】

【なんだろう、人間の怖さっていうんですかね】

【猫屋敷の悲鳴が響き渡り続けるジャンプスケア】

【ジャンプスケアは急に大きな音出るからびっくりするんであって、常に叫んでるのは違うんだよなあ】


「なので今回はあいさつから刷新してお届けする。奈々子、いいか」

「はい……」


【「はい……」】

【猫屋敷が「はい……」】

【この二人の力関係、最初はね、猫屋敷が強くて唯々諾々と従ってる執事だと思ってたんですよね】

【違うぞ。邪神系人外執事に魅入られたかわいそうなお嬢様だぞ】


「俺は人間だ」


【神様扱いされると否定するもんだから神様扱いされるおじさんがいてな】

【新人配信者を喰うことに命懸けてるネット貼りつきスパチャおじさんか……】

【喰う(初スパチャを)】


「えーと、猫屋敷智を探しています。見かけた方はご一報お願いします」


【猫屋敷、どうした? 元気ないんじゃないか?】

【お前はもっとさあ、「おーっほっほっほ」って脳みそ空っぽに笑うやつだったろ? どうした?】

【お嬢様ロールの作り込みが甘すぎて最終的に語尾に「ですわ」ってつけるだけのうっすいキャラ作りしてたろ?】

【俺、こんなしおらしい猫屋敷を見る日が来ると思ってなかったよ。好きになりそう】

【今まで割とゴミクズだと思ってたけどギャップで恋するよこんなの】

【人の彼女に恋するのはよくない】

【この化け物執事から猫屋敷を奪える人間この世にいない定期】

【なんだろう、俺、執事のことかわいそうな被害者だと思ってたんだよね】

【みんなそう思ってた。俺も炎上から入ったからそう思ってた】

【そしたら始まったよな、ホラー】

【本物の怪異は地味なんだなって……】


「何やら意外な評価を受けているようで恐縮だ」


【すいません、褒めてないんですよ】


「ねぇディ、やっぱりチャンネルタイトルが地味だし、コールも地味よ!」

「でもわかりやすい」

「そうだけど!」


【(お、猫屋敷、元気になってきたな)】

【(頑張れよ猫屋敷)】

【後方腕組連中はなんなんだ】

【後方で腕組んでるだけの連中だぞ】

【スパチャも贈るから……】

【腕組むな。腕がふさがる】


「じゃあ今日はえーと、七十階層だったか」

「六十!!!!!!!!!!!!」

「じゃあ七十階層まで行くということで」

「六十!!!!!!!! ねえ!!!!!!! 六十だってば!!!!!!!」

「視聴者に聞いてみようか。六十だったか、七十だったか、どっちだ?」


【俺のログには七十ってあるな】

【俺のログにも七十だわ】

【(ごめんな猫屋敷。俺、執事が怖くて逆らえねぇよ)】

【公式確認してきたらディの到達階層九十七で草】

【攻略ペース頭おかしい。七十階層に行ってること発覚してからどんぐらいだっけ?】

【二か月だぞ】

【執事さんが七十っておっしゃったら七十なんだよ!】

【媚びてて草】

【実際戦略兵器でしょ、九十階層到達者は】

【機嫌損ねたら国が亡ぶぞ】


「そういえば言うべきことを忘れてた。日本、アメリカ、中国、それとなぜかイタリアとフランスからなんかの賞をもらっていたんだ。発表しろって言われなかったけれど、これは発表した方がよさそうだな? さすがに前例がなくて取り扱いがよくわからなくてな……」


【あ、知ってまーす】

【ニュースで見ました】

【本人らあまりにも触れなさ過ぎて草】

【まあテレビない家もあるし……】

【連日ネットニュースなんだよなあ……】

【なんらかの賞は適当すぎて草だよ】


「あまりダンジョン攻略に関係なさそうなのでな。加えて、それら賞はもらったが、賞に伴うメリットと責任については完全に放棄しているので、賞をもらった国家との関係が……みたいな報道を聞いたら嘘なので報告してくれ。特に何かが変わることはない」


【イギリス「あの……」】

爵位サーを贈ったのに言及を忘れられる島国くんかわいそう】


「それはサーと賞がセットだというので賞ごと返却した」


【まあ正直いらんもんな】

【サーってなんだ?】

【肉の部位だぞ】


「スポンサー契約も優秀な人が裏を取ってくれているので、そういった審査を潜り抜けているものしか契約していない。世情に疎いので助かっている。みんなもおじさんに感謝をしてくれ」


【おじさん!?】

【新人喰いおじさん!?】

【最近見ないと思ったらそんなことしてるの!?】


「では奈々子が七十階層に到達するまで暇なので、いただいた支援イラストなどの紹介をしていこうと思う。画面の右半分に出すので見て行ってくれ」


【ワイプでいいよ!!!!】

【七十階層攻略の模様を見せて!!!】


「しかし、スパチャは力になるからな。ファンは大事にしないといけない。いざとなればスパチャの量が勝敗を決めることになる」


【言うてほぼ百階層到達してる執事がそこにいるからなあ】

【ノー配信で到達してるってことはスパチャ無しってことでしょ】

【そういえばそうじゃん。は? 頭おかしい……】


「とはいえ必要になる時には来る。どうか、俺たちがピンチになったら応援してほしい。……では、ピカりさんから二曲目をもらっているので、それを流しながら『苦行動画』を始めよう」


【苦行公認で草】

【こういうのはね、苦行じゃないんですよもう】

【なんだっけ、ダンジョン攻略の古い言い方あったよね】

【ああ、確か──】


【──死亡遊戯、だったな】

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