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第34話魂の証『スピリットリンカー』


 ホタルとの熱い一刻ひとときを過ごし、そのままエミーの待つサウザンドブライン邸へと向かった。


 そしてホタルとエミリアを引き合わせ、ハーレムの女の子同士で親睦を深め合った。


「お帰りなさいシビルちゃん。そしてようこそ勇者様。こうしてお話するのは初めてですね」


「あ、神託の儀式の時の……」


「エミリア・サウザンドブラインと申しますわ」


「二人はもう会ったことがあるのか」


「うん。勇者様が神託の儀を受けて神殿に登った時にね。お父様の付き添いで」


 そうだったのか。どうりで話がスムーズだと思った。


「実はさっき」

「分かってる。二人の顔見てたらわかるもの。うふふ、ねえシビルちゃん。将来は奥さんいっぱい娶るんだから、今から練習しよ♡」


「練習?」


 蠱惑的な瞳を向けるエミリア。その手は顔を赤くしているホタルの手を取り、俺達を引っ張っていく。


 自室のベッドに倒れ込んだ俺達の前で、エミリアはいそいそとドレスを脱ぎ払っていく。


「はわわっ。え、エミリア様」

「勇者様、同じ男性を愛するもの同士、私達は同じ立場ですわ。ですから」


「そ、そうですねっ! シビル君のこと、大好きなんだって、分かりますっ。一緒に、愛し合いましょう!」


 まだ顔を合わせて十分も経っていない2人は、まるで無二の親友であったかのように顔を合わせて俺の上に覆い被さってくる。


 2人の美少女に取り囲まれ、俺の興奮は高まっていった。


「シビルちゃん、いっぱいイチャイチャしよ♡」

「わ、わたしも、シビル君のこと、いっぱい気持ち良くしてあげたいですっ! あんなに気持ち良いの、わたしだって好きな人に与えてあげたいっ」



 2人の気持ちが一つになり、俺との繋がりを求めてくる。


 俺達は激しく互いを求め合う気持ちを昂ぶりを体にぶつけるのだった。



◇◇◇


◇◇◇


◇◇◇



 未知の快楽を味わった。2人の美少女によってもたらされる感覚は、一対一とはまるでおもむきが違う。


 そして、息を乱す2人を抱えながらベッドの上でキスをした、その時だった。


【女神の祝福発動――魂の占領によって被っていた肉体の不具合を修正――適性な努力結果による成長を肉体次元に同期します】


「う、おうううっ、な、なんだっ、体が熱いッ」


「し、シビルちゃんっ⁉」

「シビル君ッ、これはッ⁉」


 突然俺の体が強い光を放って点滅し始める。

 煌々と強弱を繰り返していく光と共に、内部から途轍もなく熱い衝動が走り抜けて血と肉が蠢き出した。


「おおおおおおおおっ!!!」


 カッ! と視界が真っ白になり、俺自身の意識も一瞬か永遠かと思うほどに遠くなっていく。


 そしてすぐに意識を取り戻し、視界の白が収まっていく。


「ううう、眩しかった……」

「な、何がどうなったの?」


 2人の視界が徐々に晴れてきたらしい。


「えっ⁉」

「ええっ⁉」


「シビルちゃん、その姿はッ」


「え?」


 エミーが驚きの声を上げている。一体何事か、ぼんやりする思考ではよく分からなかった。


「どうしたんだエミー」


 あれ? なんだろう。体に違和感がある。


「ん、おおっ⁉ あ、あれ? お腹が……」


 それまで分厚い脂肪で突き出ていたメタボ腹がなくなり、見事なシックスパックが形成されている。


 俺は自分の体や顔をペタペタと触り、その感触を確かめた。


「ま、まさかっ⁉」


「シビルちゃん、こっち」


 エミーに手を引っ張られて姿見の前に連れて行かれる。

 するとそこにはスッキリした顔立ちのガッシリとした体躯をした好青年が映り込んでいる。


「ど、どちら様ですか?」


 思わずそんな素っ頓狂な声が出てしまう。


「シビルちゃんだよ。シビルちゃんの姿だよ」


「ま、マジで……?」


 シビルってちゃんと育てばこんなイケメンだったのか。


 眉目秀麗とでもいおうか。ワイルドさと清廉さを兼ね備え、野性味の強い美男子がそこにいる。


 妖精が魂のスペースを占領していた為に適切な成長ができなかったズレが修正され、本来あるべきシビル・ルインハルドの顔立ちになったってことなのか。


「エミー。どうだろう。これでガイスト公爵も少しは認めてくれるかな」


「うん。きっと大丈夫。でも私は元のシビルちゃんも好きだったなぁ。フカフカのお腹が気持ち良いんだもん」


「わ、わたしも。愛嬌があって可愛かったと思います。野性味の強い美男子もいいですけど、シビル君はシビル君です」


「2人ともありがとう。でも、これで少なくともブタゴブリンの隣にいるからって2人がバカにされることもなくなるだろうから、ありがたくこの変化を受け入れよう」


「それもスキルの効果なの?」


「ああ。なんかさ、スキルの発動条件が整うまで、適切に体が成長できなかったんだってさ」


「やっぱりそうだったんだ」


「やっぱりって?」


「精霊魔法ってね、その人の魂の色が見えたりするんだ」


「へえ、そんな能力があったのか」


 そういえばゲーム内でもそんなサブイベントがあったな。


「うん。だから、シビルちゃんの魂には、何か大いなる存在が宿ってるって、子どもの頃から思ってた」


「なるほどな。エミーの審美眼は正しかった訳か」


「あっ、で、でもっ! 私がシビルちゃんを好きになったのは魂とかそういうのじゃないからねっ! 精霊魔法の恩恵とか、スキルが見えたからとか関係ないから! シビルちゃんそのものが好きになったんだからねっ!」


「もちろん分かってるよ」


「改めてシビル君のスキルって凄いんですね。そんな効果聞いたことありません」


「不思議なもんだな。これで旅に同行する2人も嫌悪感が減ってくれるといいけど」


「ふふ、でもあの2人なら、きっとシビルちゃんの本来の魅力にもそのうち気が付いたと思うよ」


「あれ? エミーはセイナさんとフローラさんを知ってるの?」


「うん。貴族の集まりとかでちょくちょく顔を合わせる事はあるから、顔見知り程度だけど」


「そうか」


「ともかく、これでシビル君の懸念が一つ減りましたね。魔王との戦い、きっと勝ちましょうねっ」


「そうだな」


 俺達は絆を確かめ合った。


「じゃあ2人とも、新しい体になった記念に、抱き心地を確かめてくれよ」


「うふふ、じゃあいっぱい愛しちゃお♡」

「わたしも、いっぱい愛しちゃいますね♡ 姿が変わったって、好きな気持ちは変わらないことをお伝えしないと」

「勇者様、いい事おっしゃいますね。私も負けないモン♡」


 そうして俺達は再び体を重ね、ますます心同士の繋がりを深め合った。


 そして……


◇◇◇


「あれ……元に戻っちまった」


 三人で愛し合うこと数時間。新しい俺の体は今までよりも力強く彼女達を愛する事ができた。


 しかし、それらの衝動が収まり始め、俺の体は再び光に包まれて元のブタゴブリンに戻ってしまったのである。


 女神の祝福って言ってたのに一時的なものだったのか?


『いえいえ。急激に肉体が変化すると負担が大きいですし、周りへの対応も大変でしょうから。痩せるとこういう姿になりますよってイメージを持ってもらうためのデモンストレーションですね』


 なんだよ。せっかくブタゴブリンを卒業できるかと思ったのに。


『それでも普通にダイエットするよりは遙かに早く痩せていく筈なので』


 なるほど。


「まあいいや。痩せたらあの姿になることは分かったんだ。三ヶ月後の出発までに頑張って痩せるさ」


「えへへ、私はむしろこっちの姿の方が安心するかも」


 そういってエミーは俺の出っ張ったお腹にフカフカと頬を沈める。


 そんな姿に萌えつつ、再び甘い時間をすごしていた。


「見た目なんて関係ないもん。大好きなシビルちゃんであることに変わりはないから」


「はい。私もそう思います。シビル君はそのままでも素敵だから」


 二人の優しさに触れながら絆を深め合っていたその時、再び女神の声が頭の中に響き渡った。



【女神の祝福を発動します――特殊称号『転生者』の特別スキル『スピリットリンカー』を習得します】


「な、なんだッ⁉」


「どうしたの?」


 俺達の熱い夜も終盤に差し掛かった頃、頭の中、というより、先ほどと同じように心の内側に直接語りかけるような声によって、再び俺に……いや、今度は俺達に劇的な変化が起こる。


『おめでとうございますシビルさーんっ♪ 我が主から特別なスキルの進呈を受けましたよー。これで女の子攻略がますますはかどるようになりまっせ★』


 よく分からんが、心臓の辺りがとても熱く脈打っている感覚が心地良い。


 そして……。


「これ、シビル君の、気持ち……?」


「2人の、気持ちだ。分かる。エミーとホタルが感じてる気持ちが分かる」


「うん、私も、私も分かるよ。シビル君が感じてる感情の高鳴りが、私を本当に想ってくれてる温かい気持ちが伝わってくる……不思議」


「俺もだ。凄いな……。女の子の気持ちがダイレクトに分かるなんて」


 新たに獲得したトンデモスキル、『スピリットリンカー』。

 その名前を、俺は2人に告げた。


「魂が繋がる。素敵な名前だね。だったら私達の繋がりを深めれば、もっと深く繋がれるよね。シビルちゃんと、心と心で繋がってるなんて、凄く素敵」


「繋がりか。これがどういうものかもよく分かってないが、名前からしてそういうものって事もあるかもな」


 新たなスキル『スピリットリンカー』


 後に俺達の命、果ては世界の命運をも左右していくトンデモスキルである事を、俺はこの時、自覚していなかった。


【第3章 勇者の少女 完】



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