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第35話繋がりの恩恵


「このスピリットリンカーっていうスキル、凄く温かいね」


 二人の少女が裸で俺の両脇に密着している。


 ここ1週間ほど、俺達は何度も【エロ同人】を発動させ、この世界の人は絶対にできない睦み合いを何度も行なって愛し合った。


 二人は自らの体を使って未知の快楽の虜になりながら奉仕を覚え、男女の愛し合いを重ねる度に感度を上げていく。


 そしてこのスピリットリンカーという新しいスキル。

 これにはまだ何か秘密がありそうな感じがしている。


「なんだかシビルちゃんとイチャイチャする度に魔力が上がっていくような気がする」


 そういえば生前に読んだ小説の中に似た名前のスキルが出てきた事があるな。


 あれって確か、女の子とイチャイチャするほどお互いの繋がりが深くなって強くなるスキルだったよな。


 まさかそんな事があるのかとも思うが、ちょっと試してみたくなる。



 どれ……。彼女のステータスがどうなっているのか。


「どほっ⁉」


「え、ど、どうしたのシビルちゃん」


「い、いや」


 ビビった。とんでもない事になっている。


――――――――


【エミリア・サウザンドブライン(半獣人族)】(魂の伴侶→シビル)

 ――LV4 HP 140 MP 1050

 ――友好度 【恋愛ULTIMATE】 

 腕力 15

 敏捷 24

 体力 22

 魔力 256


――――――――


 分かるだろう? ツッコミどころが多すぎるのだ。

 まずレベルが変わっていないのにステータスが爆上がりしている。


 以前に確認した時のMPは3桁の100ちょっとだったはず。

 それがいきなり10倍になってやがる。


 獣人族の血が入ってるだけあって敏捷値が主人公の初期ステよりも倍以上なのもそうだし、中でも魔力値が異常だ。


 この時点でレベルが低いのに主人公や他のヒロイン達より遙かに高ステータスを誇っている。


 この短い期間にそうなった理由は、間違いなく俺の影響だろう。


 そして以前はなかった気になる表記。


 半獣人族(魂の伴侶→シビル)って奴だ。


 魂の伴侶ってなんぞ? ゲームにはなかった設定が盛られまくってて混乱する。


 そして恋愛ULTIMATEという表示も異常だ。MAXIMUMの更に上ってことか。


 流石にこれ以上はないだろうけど、エミーの感情の高まりは凄まじかった。


 次にホタルだ。




――――――――


【ホタル(人間族)】女・勇者(リンク強化→シビル)

――LV14 HP240 MP88

――友好度【恋愛+】

 腕力 80

 敏捷 78

 体力 99

 魔力 88


――――――――


 ホタルも同じように特殊な表示がされている。


 エミーと違うのはリンク強化という表示。これはスピリットリンカーというスキルの影響に間違いない。


 勇者なだけあって全体的にバランス良く成長しているが、エミーのを見た後だと普通すぎて安心感すら覚える。


 タイラントスパイダーの経験値は初期レベルのホタルには莫大だ。


 あんなことがしょっちゅうあっても困るが、たった数日でこれだけレベルアップできるのはありがたい。


 これで冒険がかなり楽になる筈だ。


 そして【恋愛+】になっている。恋愛よりも更に上の表示ってことだろうけど、最初からMAXIMUMだったエミーがどれだけぶっ飛んでいるかがよく分かるな。


「ふにゃ……こんなに気持ち良いこと、私達しかできないって、なんだか特別感があって嬉しいな。シビル君とだから、だよね」


「そうだな」


 幸せそうな顔ですり付いてくるホタルの髪を撫で撫でしてみる。


 ツヤツヤフワフワのエミリアに対して、少し固めの手触りをしている髪質のホタル。

 これはこれで触り心地がよくて気持ち良い。


「はう……エミリア様の髪、ツヤツヤで羨ましい」


「じゃあ私の使ってる髪用のポーションあげる。旅の間も女の子らしくあらないとね」


「ありがとうございます」


「それから私のことはエミーって呼んでくれない?」


「そ、そんなっ、公爵令嬢様をあだ名で呼び捨てなんて、畏れ多くてできません」


「まあホタルは平民だし、いきなりは難しいだろうな」


「それじゃあ徐々に慣れていってほしいな。身分は違っても、シビルちゃんを好きな女の子って立場は一緒だもん」


「あ、ありがとうございます。エミリア、ちゃん……ま、まずはこのくらいから慣れていっていいでしょうか」


「うふふ。いいよー。今度一緒にお出かけしよっか」


「はい、よろしくお願いします」


 仲良きことは美しきかな。

 こうして幸せそうにしているホタルを見ていると、改めて彼女をバッドエンドから救い出したいと思わずにはいられない。


(あんなバッドエンドは絶対に避けないとな)


 【ヒナギク・ホタル】のバッドエンドは、求婚してきた貴族とのトラブルの最中に勇者の力を失ってしまい、抵抗することができずに殺されてしまうという悲惨なものだ、とうのは以前にも話したと思う。


 一体どういう事なのかというと、もともと魔王を倒した勇者と言うこともあって、平和になってからかなりの数の求婚を様々な貴族からされていた。


 貴族は自分達の発言力を確かなものにするために勇者を取り込もうと必死だったわけだ。


 しかしホタルは誰からの求婚も受け入れなかった。


 まだ学生の身であるし、貴族への苦手意識はヒロインとの絆で克服しても、貴族と結婚したいとは思わなかったのだろう。


 ルートに入らなかった場合のホタルは、いつの間にか学園から去っており、その行方は物語終盤まで不明となる。


 後半になって魔王が復活し、人々は勇者を欲した。


 現役の勇者の主人公よりも、魔王を倒した実績のあるホタルの方を求めたのである。


 だけどそれは叶わなかった。


 彼女の勇者の力は何故か失われてしまい、貴族のおもちゃにされた挙げ句に奴隷として売られていたのだ。


 そして直接的な表現こそされていなかったが、貧民街のゴミ捨て場で死んでいるのを発見されることになる。


 純愛シミュレーションゲームでここまでハードなバッドエンドを作る脚本家の神経を疑ったが、ここに来て考えれば、あれはこの世界で起こる未来を暗示していたのだ。


 卵が先か、鶏が先かの話になるが、この世界で起こるいくつかの未来がマド花というゲームに集約されているとしたら、ホタルとはなんとしても、もっともっと仲良くなって違う未来の可能性を見つけてやりたい。


「シビル君、撫で撫で、気持ち良いよ」


「シビルちゃん、わたしもー」


「はいはい。2人とも甘えん坊だな。なあエミー。これからホタルは大変な立場だ。力でなら俺がいくらでも守れるが、そうじゃない要素は」


「うん、分かってる。心配しないでホタルちゃん。権力のしがらみからは私が守ってあげるからね」


「あ、ありがとうございます、エミリアちゃん」


「敬語もできればやめてほしいんだけどなぁ」


「す、少しずつ頑張ります」


 本当は戦いなんて無縁の世界に導いてやりたい。


 だとするならば、一番いいのは彼女を勇者にすることなくエミーの庇護下にでも入れてしまうことだった。


 しかし魔王という存在は非常にやっかいで、勇者の聖剣による一撃でなければ傷つけることはできない。


 ゲーム内における戦闘においては通常バトルと同じようにダメージを与えることができる。


 しかしそれには勇者が聖剣を掲げて魔王の持っている暗黒のバリアを打ち破るイベントの後でなければならない。


 そしてどれだけダメージを与えても、トドメの一撃は聖剣を装備した主人公でなければ達成できないのだ。


 ホタルは魔王を討伐したが、数年後に復活した。歴史においては最低でも100年くらいは復活しないが、主人公の代で例外が起こり、物語の軸になっていく。


 倒しきれずに封印するしかなかったのか、何度討伐しても復活してしまう運命なのか。


 魔王というのは過去何度も降臨しており、そのたびに神託の勇者は現われる。


 ゲームでは魔王は二度と復活しない、とは言っていなかった。


 つまり、ゲームが終わった後も魔王は復活して、再び戦いになる可能性を残していると言うことだ。


 ミルメットの主人たる神的な存在が示唆している破滅の運命を回避する方法を、魔王と戦いながら模索していくしかないな。


(そうだ……。そのためにも俺自身がもっと強くならないと)


 出発の日まであと3ヶ月ばかり。その間にできる事をやっておくとするか。


『具体的にはどうするつもりなんですか?』


 ああ、それは……。


『それは?』


 裏ダンジョンの攻略だ。



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