エミーからもらい受けたエボルウェポン。
早速性能を確かめる為に裏ダンジョンに赴いた。
「おお、やっぱりゲームと同じだな、このエボルウェポンは」
エボル……つまりエボリューションの名が示す通り、この武器は使い込めば使い込むほど性能が上がっていく。
そして全部で10種類の武器が最終的に使用可能になる。
①盾が装備できて取り回しが便利な基本武器である『剣』
②命中率はやや悪いが、強力なスキルを多数覚える『大剣』
③遠距離特化でチャージ攻撃が強力な『弓』
④リーチが長く、回避技と複数体攻撃が便利で使い勝手のいい『槍』
⑤威力は落ちるが攻撃回数はトップの『双剣』
⑥弓より射程は短いが、取り回しが利いて連射速度の高い『ボウガン』
⑦基礎攻撃力が高く、スタン効果も狙える『ハンマー』
⑧長い柄と巨大な重量により敏捷に大幅なマイナス補正が掛かるが、攻撃力はピカイチの『両手斧』
⑨上記の8種類の熟練度を全て一定数まで上げると解放される最上位武器『刀』
⑩そして、最後の一つ。使えるスキルが圧倒的に少ないし、他の武器種の熟練度を全種類MAXにしないと使えないが、最強の攻撃力と回避力を誇るロマン武器『
半分隠し要素である『刀』と『太刀』以外は活躍の場面が違うだけでどっちが上とか下とかいう関係ではない。
使い方次第では双剣よりも剣や大剣の方が強力な場合だってあるし、射撃弱点の敵が至近距離に迫ってきたら弓よりもボウガンの方が効果的だ。
さて、今日は武器の効果を試しつつ、痩せやすい体の動かし方を模索していく予定だ。
◇◇◇
俺がブタゴブリンになってしまった要因は、俺の肩でノンキにアクビをしているこのアホ妖精のミルメットが魂のスペースを占領していたせいだったらしい。
というわけで、裏ダンジョンの攻略で体を思い切り動かすことでダイエットも同時に実行している。
『頑張ってください!
要らんことすな。気が散るだろうが。
俺は裏ダンジョンの10層に転移し、ひたすら奥へと走りまくった。
あ、ちなみにダンジョンは1階層ごとに地上に戻れる転移装置があり、クリアした階層までは任意に再入場することが可能だ。
つまり前回10層までクリアした俺は、10層のボスフロアから再開することができる。
ボスは討伐した後なので、すぐに11層に降りることができる。
ボスと再戦したい場合は9層の下層に繋がる階段付近から再スタートすれば可能だ。
『さあ頑張れ頑張れっ! 進んで進んで進みまくりましょう~』
「よーしっ、まずは剣だっ!」
耳元でギャアギャア騒ぐ妖精に
11層から下は虫型のモンスターが
特にレアエネミーであるデカいムカデがピカイチで気色悪い。
倒したモンスターが光となって霧散していく仕様は非常にありがたかった。
人型も勘弁だが、虫のスプラッタはグロさがまた違うし、クサそうだ。
早速エボルウェポンを試してみたが、俺の体格に合わせた武器が腕輪から形成された。
剣はしっかりと手に馴染み、まるで長年連れ添った相棒のように自由自在に振ることができる。
基礎訓練を繰り返してきた成果がここで功を奏したらしい。
剣以外の武器は訓練していないので苦労しそうだが、とにかく練習あるのみだ。
「凄い。剣を振るほどに扱いが上手くなっていくみたいだ」
『シビルさんがこれまで培ってきた剣の訓練は全部熟練度として蓄積されていましたからね。ゲームでいうところの熟練度50ってところです』
「うおっ、マジかよ」
マド花の武器熟練度は武器ごとに設定されており、基本的に使った武器種+戦闘回数100回に対して1上昇するシステムになっている。
色んな武器の熟練度を上げたいなら、1つの戦闘で様々な武器を使用するのがお勧めだ。
だが普通にプレイする分にはだいたい剣で事足りる。
エボルウェポンは本編だと主人公の分しか手に入らない。
一応ホタルに装備させる事も可能だが、よっぽどの変則プレイ好きじゃなければ装備させることはない。
ちなみに一度ゲームをクリアするとヒロイン全員に装備させるができる機能が解放され、周回でアイテムを引き継ぐとエボルウェポンの数を増やす事ができる。
当然熟練度も引き継ぐ事になり、最終的に全員に
話が逸れたが、熟練度50というのは特別レベリングをしていない場合は物語中盤から終盤の中間で至る数値だ。
俺ってめちゃくちゃ努力してたんだな。
タイラントスパイダー戦や10層までのバトルで上がった分を加味しても、これまで訓練してきた成果は相当積み重なっていた事に嬉しくなる。
『ちなみにこの世界の場合は単純に素振りの回数とかモンスターの討伐数で上がりますよ。強い敵と戦うほど上がりやすいです。タイラントスパイダー戦で5くらい上昇してました』
なるほど。目には見えないシステムが働いているということか。
ゲームよりも内容が複雑だが、とにかくひたすら数をこなすと考えてよさそうだ。
◇◇◇
「はぁ、はぁ、はぁ……ようやくスタミナが切れてきたか」
ひたすら走りまくって15層まで到達したところでようやく息切れを起こしてきた。
ここまでノンストップで走り続けてきたから、俺の体力は相当なもんだ。
ステータスMAXは伊達じゃないな。
しかも武器が壊れない。このエボルウェポンって凄いな。
エミーの魔力付与によって普通の武器にはない攻撃力を有している。
俺のカンストオーバーステータスにもちゃんと耐えられる強度を誇る武器は普通の店には売っていないだろう。
さすがエミーの精霊魔術だ。
『うーん。なんだろう。このエボルウェポン、なんか普通じゃない気が……』
「そうなのか? まあ本編のエボルウェポンとは違うから、少々差異はあるだろう。試作品だし、劣化版かな。でもエミーの精霊石のおかげで性能はそれ以上かも」
『いやぁ、そういうのとは……まあいいです』
「そうか。とりあえずこれだけのレベルがあれば当分困ることはないだろうから、原因の究明はゆっくりやるか」
『私の方でも何かないか調べて見ます。あ、そうだ、シビルさん。以前のタイラントスパイダークイーンの魔石の分析が終わったので、今日が終わったらご説明しますね』
「お、ようやくか。なんだったんだろうなアレは。とりあえず20層まで走りきってしまうか」
俺は回復アイテムを使用してコンディションを整え、再びダンジョン奥まで潜っていった。