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第51話セイナ、告白

 死神の巨人を打ち倒し、俺は一晩かけて魔石の解析を行なった。


 破壊されたコアの破片の中から発見した魔石は、ミルメットによると、やはりタイラントスパイダーから取り出した魔石と同じ魔力を感じるという。


 そうなってくると、これはもう俺達に……いや、もしかしたら俺に対して何者かが邪魔をしようとしているのかもしれない。


『これは、盗賊の一人一人に何か仕込みがしてあったのかもしれないですね。失敗です。一人か二人くらいは残すべきでした』


「確かにその通りだったかもな。だけどそんなの誰も予想できないよ」


『これは、次からは慎重な行動が必要かもしれないですね』


 いつになく真面目なトーンで話すミルメットに、その重要性が伝わってくる。


 こいつのおふざけしてない声なんてほとんど初めて聞いたぞ。


「なあミルメット。俺がこの世界に転生させられたのは、破滅の運命から救う為なんだよな」


『ええ。そうですね』


「だとしたら、それを邪魔しようとする勢力が現われてもおかしくない。そうは考えられないか」


『まさか邪神……』


「え?」


『私達妖精族は女神の使いです。反対に、邪神族の使いである邪妖精って種族もいるんです』


「そんな奴がいたのか。なんで今まで言わなかったんだ」


『確証はありませんでした。それに、記憶にモヤが掛かっててよく思い出せない部分があって』


「そういえば最初の時にそんなことを言っていたな。よし、とりあえず今は考えても仕方ない。今後接触してくる敵には注意するようにしよう」


『ですね。私も変な魔力を感じたらすぐに知らせます』



 ◇◇◇


~2週間後~


 俺達は村人を保護してもらう為に一つ前の町に戻り、領主に掛け合って手続きを終わらせた。


 国王から発行してもらった許可証は通行証なんかの役割を果たすと共に、勇者の依頼は王家直々のものと同義であることを証明してくれる。



 それらの手続きを終わらせて、いよいよ国境を越えて魔族達の国に入る。


 この時期だとまだ本格的な戦争は始まっていないから、今ならギリギリ入国できる筈だ。


「シビル殿、少しいいか?」


 その日、野営の見張り番をしている俺にセイラが話しかけて来た。


「セイナ様、どうしましたか?」


「話をしたい」


「構いませんよ」


 大量の荷物が入るマジックバックから紅茶の入ったポッドを取り出す。


 ちなみにこれは一般に普及しているマジックバックを、俺の二次創作によってパワーアップさせた代物だ。


「どうぞ」


「ああ。ありがとう……。相変わらず貴殿の淹れる紅茶は美味い」


「光栄です。幼馴染みが沢山持たせてくれましたので」


「あのサウザンドブライン家のご令嬢だと聞いたときは驚いた」


「そうですね。私も彼女と幼馴染みでいられるのが不思議なくらいです」


「ははは……そうか。さて、本題に入ろうと思う」


 セイナは何故だか緊張しているようだ。さっきから関係ない話題を振って誤魔化してる感じがするな。


「まずは、礼を言いたい」

「お礼ですか?」


「そうだ。今回の戦い、私達三人だけではここで終わっていたかもしれん。恥ずかしい話、ホタルに起こされるまで敵の気配にまったく気が付かなかった」


「それは仕方ない部分もありました」


 俺もミルメットに起こされただけだし。


「それだけではない。あの謎の巨人との戦いなど特にそうだ。貴殿のアドバイスがなければ絶対に勝てなかった……」


「……」


「聞きたい。あなたは、一体どうやってあれほどの強さを手に入れたのだ。いや、強さだけではない。まるで何度も見たことがあるかのように豊富な魔物の知識も、戦術戦略知識の幅広さ。熟練の冒険者のように経験豊富で判断に迷いが無い」


 これはいよいよ全貌を話す時がやってきたようだ。


 まずはライトな所から共有していくとしようか。


「ご存じのように、私はブタゴブリンと呼ばれるほど醜く、剣技の才能もありませんでした」


「本当か? 騎士団とやり合った時点で既に熟練の域だったぞ」


「実はちょっと事情がありまして」


 俺は妖精ミルメットのことは隠しつつ、スキルが覚醒するまで才能や肉体的成長を抑え込まれていたことをかいつまんで話す。


「なんと。それではシビル殿は、それほど過酷な環境にいながらひたすら努力してきたというのか」


「幼馴染みに恥を掻かせる訳にはいきませんでしたから。半分以上意地です」


 俺の才能を奪っていた張本人は顔の真横で下手くそな口笛を吹いている。


 いずれ触れるようになったら絶対お仕置きしてやるからな。


「改めて感服する。私はその努力の過程を見ようともしなかった。シビル殿。今回のことで改めてよく分かった。あなたは尊敬に値する人物だ」


「お褒めにあずかり光栄です」


「実は、私は龍人族の血は半分しか入っていないのだ。父上が人族のメイドに産ませた子供だからな」


「そうだったのですね」


 この世界で愛のない子供ってどうやって生まれるんだろう?


 儀式めいたやり方でしか子供はできないから、そのメイドとも愛があったのだろうか?


『っていうか、同意があれば子供はできますよ。いや、もっというなら同意させれば子供ができます。性交とは少し違う快感が生じるので』


 なるほど。性交はなくても快感を感じる男女の行為はあるのか。


 訳が分からないな。女の奴隷の需要はそういう所にあるのかもしれない。


 体の陵辱も然り、か。


「だから私は、龍人族の誰かと結婚させられることになるだろう。だけど、私はあなた以上に強い者がいるとは思えない。もしかしたら、我が父よりも」


「まだ未熟な身です。とてもダグレイド龍公爵閣下には敵いません。将来的には分かりませんが」


「凄い自信だな。だが、いや、飾った言い方はよそう。シビル殿、私はあなたの子を産みたい」


「セイナ様」


「私をあなたの側室に加えてほしい。無骨な身であるが、花嫁修業は積んでいる」


「よろしいのですか?」


「むしろ、こちらからお願いしたい」


「分かりました。受け入れましょう」


「ほ、ホントにいいのかっ」


「もちろんです。よろしくお願いしますセイナ様」


『ここでようやく私の出番ッ! お待たせしましたエロ同人のお時間でーーーすっ!』


「おいちょっとっ!」


 だからムードを大事にしろと何度言えばッ。


「シビル殿ッ」


「せ、セイナ様、おわっ」


 彼女の体に起こった変化について説明をしようとした矢先、突然大きな体がのし掛かってくる。


「はぁ、はぁっ、シビル殿」

「せ、セイナ様、どうされたんですか」


「私の体、何かが変なんだ。知らない熱量が体を支配してる。未知の感覚が何かを求めている」


「セイナ様、落ち着いてください。順番に説明しますから」


「いいやっ待てないッ! 分かるんだ。私に流れる龍人の血が、強者に従いたいと求めてやまないんだ」


「せ、セイナ様……」


「頭の中に流れ込んでくる。この世界にはない概念、知識、本能で求め合う男と女の営みのやり方が」


 その表情はまさしくメスのそれ。オスを求める本能的な熱量に支配された情欲の表情だ。


「分かるぞ、知っている。いや、今知った。あなたに抱かれることで、私達は魂同士で繋がれるのだろう?」


 本能の求めるままに。


 セイナはそう口にしながら、本能で知った未知の行為を俺に求めるのだった。



 そして『クッ殺』を想定していたセイナは『即落ち系ドM』だった。


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