セイナと結ばれて、俺達の絆は確かとなった。
それにしてもクッ殺タイプだと思っていたセイナはドMであったとは……。
しかしもの凄く性欲が強くてスーパー肉食系だったことには驚いた。
あれから野営の度に未知の感覚を求めて重なり合いを繰り返した。
フローラもいるのでホタルと交代であるが、セイナの性欲の強さは龍人だけあって並の人間のそれではない。
ちなみに夜戦の最中はミルメットが防音の結界を張ってくれているので、ホタルやセイナのあれやこれやがフローラに聞こえることはない。
早いところフローラも堕としてしまいたいところだ。
『アレですね。セイナちゃんに椅子になってもらって、その上でフローラちゃんにご奉仕してもらいながらホタルちゃんを』
やめろやめろっ! 具体的に言うんじゃない。
ちなみに椅子になる云々は実際にやらされた。
セイナのドMはかなり極まっている。
「シビル殿ッ、今日も助かったぞ」
「いえ、セイナ様のアシストあってのことです」
「疲れただろう。肩をお揉みしよう。さあ座ってくれ」
「いや、そんなに気を遣っていただかなくても」
「何を言うッ! 我が主の体を労るのは従者として当たり前だ。あと、私の事は是非ともセイナと呼び捨ててほしいっ! 敬語も不要だっ!」
セイナは自分を将来の側室と称し、それが転じて従者と名乗るようになった。
強者に従う龍族のたしなみなんだとか。
「セイナちゃん、なんだか変わったね」
「ふむ、私は変わっていないぞ。強いて言うなら気がついただけだ。我が主の素晴らしさにな」
「そ、そうなんだ」
フローラにはケアが必要だろうな。セイナが俺に夢中になったことで少し疎外感を感じ始めてるみたいだ。
このままだとパーティー全体の士気に関わる。
そこら辺の問題への向き合い方を考えつつ、魔族領との境目である国境の町、『テックトーラ』に到着したのだった。
◇◇◇
国境の町『テックトーラ』
魔族領との境目にある国であり、フェアリール王国との境界線である。
魔族の皇帝が納める国『スツルムアーク魔皇国』の関所があり、ここを通ることで隣国に立ち入ることができる。
魔王を倒しに行く旅の中心地であるため誤解されやすいが、魔族領の皇帝=魔王ではない。
ここで、この世界における魔王の定義について話しておこうと思う。
ひと言でいうなら、謎に包まれた存在だ。
この世界には人族、獣人族、龍人族、エルフ族を始め、多種多様な種族で構成されている。
魔族領の住人というのは、魔族という特殊な種族が統治する国家のことだ。
魔族がどのように特殊なのかは、また今度必要になったら説明しよう。
つまり人間が統治するか、魔族が統治するかの違いだけで、住んでいる種族の多様さに大きな違いはない。
だから獣人同士でも組織間で争う事もあるし、人族同士でも同じ。
そこら辺は地球の戦争事情と大した違いは無い。
魔王というのは、魔族の中で100年か200年に一度だけ、凄まじい力を持った突然変異が生まれてくる、と言われている。
ここら辺の言及は公式の設定資料集でもぼやけた表現しかされていない。
それがゲーム内で真相として明らかになることもない。
一時は続編の伏線かとも言われていたが、マド花はワンタイトルのみの作品だ。
俺もゲームの内容はサブコンテンツも含めてしゃぶり尽くした人間だし、色々と考察もしたのだが、公式から明言されていない以上は推測の域を出ない。
だから魔族から魔王が生まれることは分かっていても、なんでなのかは分からないのだ。
魔王が誕生すると同時に、世界の魔物達が凶暴化する。
ガイスト公爵が局地的な小競り合いは起こっていると言っていたので、既にその兆候は現われているのであろう。
国中を巻き込んだ騒ぎになるのはもう少し先だ。
◇◇◇
「フローラ様、少しお話ししませんか」
「し、シビルさん……はい」
俺達は早速宿を取って自由時間として解散した。
フローラはこのところずっと落ち込んだ顔をしている。
死神の巨人との戦いで一致団結できた彼女達だったが、その直ぐ後にセイナが俺に傾倒してしまったためにこういう顔をすることが多くなってしまった。
だから今度はフローラ攻略の番だ。
それにホタルとのデートも約束しているし、やることが多くて大変だな。
だがフローラさえ攻略してしまえば、このパーティーの絆は盤石になる。
さて、それじゃあヒロイン攻略といきますか。