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第101話ルルナ姫との繋がり

「ルルナ姫。ご無事でしたか」

「シビル君。助けに来てくれたんだ」


 アミカに乗り移ったエリアに案内されて隠し部屋の更に地下室へと降りていくと、なんとそこにはフェアリール王国の第3王女、マド花の王女ヒロインのルルカ姫が身を隠していた。


 数人のメイドと共に地下室に身を隠していたルルナ姫は、サウザンドブライン邸襲撃の日にたまたまエミーとお茶会をしに遊びに来ていた。


 エミーの咄嗟の判断でこの部屋へと避難することになり、そこから地下通路を使って1度脱出し、フェアリールの本国へ危機を知らせるべく向かおうとしたのだが、追っ手の追求が厳しくてここへ戻ってきたとのことだ。



「これを……」

「これは」


 ルルナから渡されたのは王家の紋章が入ったマント。


「これって確か、王族が特務を託す時の」

「そうです。シビル・ルインハルド、フェアリール王国第3王女として命じます」


 その瞬間、俺はその場に跪いて臣下の礼をとる。


「あなたにはこの瞬間を持って、わたくし、ルルナ・セルフィム・フェアリールの名において反逆者アルフレッド・コーナラード討伐部隊の部隊長に任命します」


「謹んで、拝命いたします」


 スッと差し出された手の甲に口づけを行ない、王族からの命令を承った意思を示す。


 本来こういうのって国王様が手順を追ってするのが普通だろうけど、ルルナ姫の意図はそことは別にあるような気がした。


「シビル、あなたにはもう一つ、わたくしルルナの騎士になっていただきたいのです」


 純白のシルクのように、柔らかく光を反射する艶やかなパールホワイトの髪を垂れ下げて、彼女の彫刻のように美しい顔が近づいてくる。


「ひ、姫様」


 眉尻は柔らかく垂れ下がり、純白の髪の毛と同じ白い瞳が見るものを魅了する。


 学生服の上からでも分かる細いくびれと、プリーツのミニスカートから伸びる引き締まった脚。


 エミリアと同じ年の少女でありながら、完成された美が彫刻芸術のような完成度を誇る神聖さ。


 少女らしい甘みを増す耳の下でまとめた緩ゆるいツインテールの髪型が彼女の年齢を年相応に見せていた。


「あなたには期待しています。わたくしにできるのはこのくらい。エミリアを助けてあげてください」


「かしこまりました。必ず戦争を食い止めて救出してご覧に入れます」


「お願いします。わたくしはここに残って民の先導を行ないます。そのために一つお願いがあるのです」


「なんでしょうか?」


「わたくしにも、女神の祝福をいただけませんか?」

「え?」


 ルルナ姫は俺が言葉に反応するよりも早く、俺の手を取って膝をつく。


「シビル・ルインハルド。異世界よりの転生者であり、女神の眷属たる妖精ミルメット様の主たるあなたに、わたくしは」


「なっ、ちょ、ちょっと待ってくださいっ。なぜミルメットの名前を知っているのですか?」


『およよ? もしかして私のこと見えてますか?』


「はいですわ。女神の眷属たる神々しいお姿、以前からずっと拝見しておりました」


 なんと学園内で俺を遠くから見ていたと、彼女は言った。


「いつから見えていたのですか?」

「幼い頃に一緒に遊んでいた頃からですわ。シビル君の心臓に宿った神力はとっても心地良くて、体の中が熱くなるのをずっとガマンしておりました」


 幼い頃から俺に妖精がいるのを感じとっていたってことなんだろうか。


「女神の眷属たるシビル君。幼い頃からあなたの事を……いえ、これは全てが終わってからにしましょう。まずは私をあなたの眷属に加えてください。そして祝福を。そうすれば私の潜在能力が解放されるはずです」


 ルルナ姫はどこまで知っているのだろうか。


 まるで彼女自身が転生者であるかのような。それにしては知らない事が多いような印象も受けるので、よく分からない。


「分かりました。では、どうすればいいのかご存じですか?」

「はい。この唇を、あなたに捧げます」


 初めからそれを承知の上で提案してくるってことは、やっぱりかなり昔から俺が特殊な存在だと理解していたのか。


 ルルナはそっと目を閉じて顎を上向けてくる。

 可憐な唇はピンク色をしており、女神の生まれ代わりと称される美しさが凝縮されているようだ。


「んっ……ふぅ♡ んむっ♡」


 ルルナ姫はゲームにおいてもっとも美しいとされている美人キャラとして設定されている。


 実際にキャラデザインは美しさと可愛らしさを見事に融合させている人気キャラだ。


「心が温かい。これが魂の繋がりなのですね」

「そうです。スピリットリンカーと呼んでいます」

「スピリットリンカー。良い名前です。これで自分の使命を果たせます。この領地はお任せください。シビル君は一刻も早く戦争を」


「分かりました。後はお任せください」


 ルルナ姫は俺の唇を受け入れ、スピリットリンカーで繋がった。


――――


【ルルナ・セルフィム・フェアリール(人間族→覚醒天使族)】

――LV10→LV30(ストック経験値によりアップ)

――友好度【恋愛(???)・結婚願望(???)】


――――


 なんか色々とおかしいな。表示がバグってる?


 これって初期状態から俺に感情が高いってことなんだよな。


 なんだろう。これに関してはエミーが関わっていそうな気がする。


『はっはーん♪ ルルナちゃんってばシビルさんにラブラブなんですねぇ。まさか天使族だったとは』


「はい。体の奥から神秘的な全能感が湧き上がってきます。この地の事はお任せください。すぐに民の先導に入ります」


 ルルナはこちらが何かを告げる前にメイド達を引き連れて部屋を出て行った。


「一刻も早く戦争を終わらせないと」


 ルルナは目的を果たす為に即座に動き出した。


 俺もエミー救出のために一刻も早くアルフレッドを倒さなければ。

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