翌日の朝、
歩きながら、胡湖が不安そうに訊く。
「……本当にいいのですか、
鋼先は
「心配するな。俺たちの責任者は、
「うむ、若い
雷先の
「あの、雷先さん、なんか変じゃないですか」
鋼先が片目をつむる。
「
「はい、わかりました。ええと、私は、お二人とはどういう関係にすれば良いですか?」
「
やがて、城のような大きな
正門をくぐり、
「今のところ、魔星はいないな。じゃあ兄貴、何かあったら頼むぜ」
鋼先が
「
と、厳しい顔で言った。鋼先は「これはこれでめんどくさいな」と小声で
胡湖は、部屋に置かれた
「すてき。見たこと無いものばかりだわ」
やがて興奮が高まり、勝手に
「
胡湖がはっとして戻そうとしたとき、笑い声とともに若い男が現れた。
「いえ、お客様を退屈させないために置いてありますから、ご自由に。――お待たせ致しました。私が月光楼
縻剛は、柔らかい物腰で、
「この者は、私の秘書です。――そちらのお嬢さんは、
と、縻剛は賀兄弟を見た。鋼先は再び礼をしながら、
「はい。遠い親戚に当たる、
それを聞いて、縻剛はため息をつく。
「ええ、事業をしたいとおっしゃって、私に相談に来たのです。私は
出された証文には、貸付三千四百
鋼先はそれを
「個人でどうにかできる金額じゃないと思うが、なぜこんなに?」
縻剛はため息をつく。
「最初は三百貫文でした。高価な荷物を配送する商売がありましてね。今は道中に賊も多いご時世だから、途中で全て奪われてしまうこともある。だから、腕利きの武芸者に荷物を護送させて無事に送り届ける方法があります。彼はそれをやろうとしたのです。
しかし、せっかく集めた武芸者たちが、結託して荷物を横流ししてしまい、胡護岱どのは全てを弁償しなくてはならなくなりました。武芸者たちも逃亡し、その人件費も合わせて、合計で五千五百貫」
「なるほど。しかし、二千と百貫、計算と合わないが?」
「胡護岱どのの家と土地を売り、二千貫までは返済されました。また、彼がその後
それでも、かなりの額が残った。なので、私からお嬢さんにお話をして、こちらで働かないかと持ちかけたわけでして」
鋼先は礼をして、
「そうでしたか。ご
と
縻剛は、秘書を振り返ると、二人して
「なぜ……笑います?」
鋼先が
「扉を閉めろ」
とたんに、茶や菓子を運んでいた数人の
「
縻剛は太く、強く言った。小間使いたちは隠し戸棚から武器を取り出し、声もなく迫る。鋼先は舌打ちした。
「やっぱりそういうことか」
「始末しろ」
縻剛は不機嫌な顔で、秘書に
鋼先が立った。
「兄上、よろしく」
「分かった。お前は胡湖を守れ」
雷先も立ち上がった。鋼先は胡湖をかばう。雷先は
「お兄様、いったいどうしたのですか?」
怖がっている胡湖に、鋼先は笑って言う。
「ちょっと、向こうさんのご機嫌を損ねたらしいね」
「あの、皆さん刃物を出してますよ?」
手下が
縻剛はそれを
「分散するな。賀鋼先は弱い、まずそっちを倒せ」
と指示した。秘書も鋼先に迫る。
これを見て、雷先はにやりと笑った。敵が離れていくので、棒が振るいやすくなる。雷先は追いかけながら、一人また一人と手下を打ち倒す。
「賀鋼先、死ね!」
秘書が、鋼先めがけて匕首を突き出した。鋼先は
後ろで見ていた縻剛が、立ち上がって叫んだ。
「よし、やってしまえ!」
雷先はこれを聞いて、振り向きもせずに棒を
「あっ、楼主!」
それを見て、秘書がうろたえた。その
「う、うおおおお!」
鋼先が身をよじって逃れると、秘書はそのままばったりと
雷先は倒れている手下から帯を
「こいつはどうだ、鋼先」
鋼先は頷いて
「
と歩み寄りつつ、そっと胡湖の頭を
「驚かせてすまない。こいつらには
と簡単に説明する。
「そうだったのですか。びっくりしましたけど、大丈夫です」
胡湖も、驚いたながらも納得し、こくりと頷いた。