──六月二十六日。晴れ後曇り。
夜更かしが災いして、半日を無駄に過ごしてしまった。夜間外出がアデリナとゲルダにバレていたらしく、礼拝後に説教される。ただ二人は心配していたらしい。けれど、彼の事やこれまでのやりとりの一部を話せば少し理解してくれた。
だけど、こうして他者に心配をかけてしまうのならば、衝動的な行動をしないようにしなくてはならない。
「干渉しないで欲しい」と言った私の言葉をここまで尊重してくれた二人だ。ただただ反省している。また、困った事があれば何なりと相談するよう、自分一人で抱えぬよう、頼るように言われた。
---
そこまで書いてアルマはペンを置き、深い息をつく。
テオファネスの状態などを綴る為に付け始めた日記だが、どうにも今日は礼拝後の件で頭がいっぱいだった。
あの時のアデリナの表情を思い出すとどうにも酷く心が軋んでくる。
説教には慣れているので、規則破りなんて大した事無いと思っていた。とはいえ規則の全ては……自分たちを守る為のものに違わない。
集団生活故、皆がそれを当たり前のように守り合う。否、各々が修道院の規則を守るからこそ、それが絆の土台となるのだろう。
羊飼いの家庭に生まれた自分。ゲルダは街の仕立屋。アデリナに関しては子爵令嬢……と、生まれも育ちも皆バラバラ。
それでも、皆突然得体の知れぬ力を二つも発現させ、人の抱える影が見えるようになって、家を離れて修道院にやって来た。
特に、アデリナなんて領地も身分も違うので、本来だったら絶対に関わり合う事も無いだろうに。しかし、ここに来た事によって同じ事をして絆は磨かれ友になった。
────友達にあんな顔させちゃダメだよね。アデリナ、一応許してくれたけど……三年間の信頼とかもう台無しだろうな。
結局、アデリナはあの後一言も口を開かず
───明日からもあんな調子だったら流石に気が重たいな。
アルマが重苦しい息を吐いたと同時だった。軽快な
席を立ちドアを開けると、そこにはアデリナの姿があった。
レースのふんだんにあしらわた白の愛らしい夜着に身を包んだ彼女の手には湯気の立ち上ったポット。ふわふわと、林檎によく似たカモマイルの香りが立ち上っている。
「……寝る前にお茶を飲もうとしたけど、淹れすぎちゃったの。消灯まで一緒に飲んで話でもしない?」
そう言って、彼女は薄紅の瞳をアルマに向けると、困ったような笑みを向ける。別に断るような理由も無い。アルマは頷き、彼女に部屋に入るように促した。
そうして部屋のベッドサイドのナイトテーブルにトレーを置くと、アルマとアデリナはベッドの
週に何度かアデリナは部屋に来る事がある。こうしてお茶をしながら雑談に花を咲かせ、時には愚痴を吐き、内緒話をして……。
しかし流石に今日ばかりは気まずい。そう思うが……
「ねぇ、アルマ」と彼女が話を切り出した方が早かった。
「夕方キツい態度取ってごめんね。私、感情的だった。ただね、本当に心配したの。〝無干渉でいて欲しい〟がずっと突っかかってて腹が立って……」
だから、ごめんね。と彼女はアルマに向き合ってやんわりと笑む。
そして続け様に「衝動的に謝りに行かなきゃって気持ちは私も分かるかも」と彼女は困ったような顔で笑む。
アルマはすぐに首を振った。
「私こそ、心配かけるような事ばかりして、上手く言えなくてごめんね」
そうしてアデリナと顔を見合わすと、どちらとともなく自然と笑みが