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第16魔:ニャン

「みなさんご覧ください。この猫ちゃんは段ボールの箱を置いておくと、必ず中に入ろうとするんです。カワイイですね~」


 動物番組でレポーターのおねえさんが、最近SNSで話題になっているタレント猫についてレポートしている。

 カワイイ(もちろん猫がだ)。

 俺は子供の頃、猫を飼っていたので、猫には目がない。

 猫のあの、思い通りにならない、気まぐれなところがタマらない。

 俺ってMなのかな?


 読者の声「そうだよ」


 ……今何か聞こえた気がしたが、気のせいだろう。

 ハァ、でも良いなあ、猫。

 本当は今も猫が飼いたいのだが、この安アパートでは当然ペットは禁止なので、我慢しているのだ。


「……カワイイなあ」

「アラ、堕理雄って猫が好きだったの?」

「え? 俺今、声出てたか?」


 しまった。思わず心の声を吐露してしまったようだ。

 横にいた沙魔美にも聞かれたらしい。

 いや、別に悪いことじゃないから、いいんだけど。


「……まあ、好きだよ、猫は」

「そうだったの。ちなみに同人作家の方も、猫を飼ってる人が多いわよね」

「そうなんだ」


 意外と同人作家の方とは、気が合うかもしれないな。


「堕理雄も、猫が好きならもっと早く言ってくれればよかったのに」

「え? なんで?」

「こんなこともできるからよ」


 沙魔美が指をフイッと振ると、沙魔美はポフッと煙に包まれた。

 そして煙が晴れるとそこには……。


 猫耳と尻尾が生えて、全身がモフモフになった沙魔美が、招き猫のポーズを取っていた。


 すっごーい!




「いや、これは何かマズいだろう沙魔美!」

「アラ、何がマズいの? 堕理雄が猫が好きだって言ったから、恥ずかしさに耐えて頑張ったのに」

「それは噓だ。お前はノリノリでやってるだろう」

「ウフフ、でもせっかくメタモったんだから、今日だけは私が堕理雄のペットになってあげでもいいのよ」

「いやだから、そういう発言がヤバいんだって……」


 これじゃあ完全にお店じゃないか。

 一歩間違えれば、この小説がR18になってしまう。

 ただでさえ、今もスレスレなんだから。

 でも魔法でメタモってるだけあって、猫耳も尻尾も本物だし、手のひらにはプニプニの肉球まで付いている。

 くっ、頭をナデナデしたい!

 肉球をプニプニしたい!!

 こんな蠱惑的な物件(?)を目の前にして、一歩も踏み入るなというのは、猫好きにとっては拷問でしかない。

 ……。

 軽くプニるくらいなら、許されるんじゃないかな?

 いやダメだ!

 正直、今の俺はワンプニ(?)だけで我慢できる自信がない!

 最悪そのまま、R18ピリオドの向こうへ行ってしまうかもしれない!(迫真)


「ニャーン、ご主人たまー」

「ご、ご主人たま!?」


 沙魔美が文字通り猫撫で声を上げながら、胡坐をかいている俺の足に擦り寄ってきた。


「沙魔美! だからマズいってこれは!」

「ニャア、今の私は沙魔美じゃないのニャー。『沙魔ニャー』と呼んでほしいニャー」

「沙魔ニャー!?」


 何その最高にバカップルっぽいプレイは!?

 だが……。


 悪くないな!


「さ、沙魔ニャ~。おーよしよしよし」

「ニャ~ン」


 俺は沙魔ニャーの頭をナデナデした。

 沙魔ニャーはとても気持ち良さそうに、喉をゴロゴロ鳴らしている。

 しふくぅぅ。

 もう我慢できない。

 ここまで来たら肉球もプニってやる。


 プニプニプニプニ


「ニャアン、くしゅぐったいニャア」

「ああ、ゴメンよ」

「……ご主人たまニャら、いいニャ」

「……」


 カワイーーーー!!!!!!

 養う!!!

 もう俺は、一生この子を養うよ!

 最悪、腎臓までなら売ってもいいよ!(錯乱)


「ニャー」

「お、おい、沙魔ニャー、うわっ」


 俺は沙魔ニャーに押し倒され、その俺の上に沙魔ニャーが覆い被さってきた。

 沙魔ニャーのモフモフバインバインの胸が、俺に思い切り押し付けられている。

 オオフ……。


「さ、沙魔ニャー……?」

「ニャフフ、ご主人たまー」


 沙魔ニャーは俺の首筋をペロペロと舐めてきた。

 オホッフ!

 くすぐったいよ沙魔ニャー!

 いくら猫だからって、これはやりすぎじゃニャいか!?

 あーもう無理。

 もうR18ピリオドるか。R18ピリオドっちゃうか。

 ハイ、イキまーす!


「沙魔ニャー! ……あれ?」

「スヤァ」

「……え」


 ……寝てる。

 ……ファナッフ。

 まあ、猫はよく寝る子だから、『寝子』で『猫』になったという説があるくらいだからな。

 突然スヤァしても不思議じゃないか。

 ……ちょっとだけ残念だけど。

 ま、R18ピリオドを超えなかっただけ、ある意味助かった。

 しかし寝てる沙魔ニャーというのも、これはこれでカワイイな。

 いつもこれくらい静かなら、俺も助かるんだがな。

 ふわぁ。

 何だか俺も眠くなってきちゃったな。

 少し……だけ……俺……も……。


 ……。


 …………。


 ………………。


 カチャカチャカチャ


 ……ん?

 ハッ!

 イカンイカン。

 うたた寝してしまっていたらしい。

 しかしこのカチャカチャって音は何だ?

 俺の腰の辺りから音がするので、目線を向けると、沙魔ニャーが俺のズボンのベルトを外そうとしているところだった。


「オ、オイ! 何してるんだよ沙魔ニャー!」

「ニャア。沙魔ニャー喉が渇いたから、ご主人たまのミルクが飲みたいニャン」

「……」


 最後はただの下ネタかよ。

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