「たまには百合もいいわよねえ」
「げっ」
また沙魔美が一行目から不穏なことを言っている。
今日も俺の家で沙魔美とダラダラしているのだが、こいつは本当に大人しくしているということができないのだろうか?
さては前世はマグロか?
少なくとも、ベッドの上ではマグロではないが(ド下ネタ)。
「……何言い出すんだよ急に」
「いえね、私思ったの。B漫画家としてもう一歩上のステージに進むためには、敢えて真逆の百合の勉強もすべきなんじゃないかってね」
「……へえ」
なるほど、わからん。
まあ、沙魔美もこの歳で壁サーなくらいだから、その分野では所謂天才なんだろうが、いつの時代も天才の考えていることは、凡人には理解できないな。
「それで? 百合を勉強するって、具体的には何をするんだよ」
まさか、菓乃子と浮気したいなんて言うんじゃないだろうな?
流石に今カノと元カノがそんなことになったら、俺ショックで死んじゃうぜ?
「安心して、今はまだ菓乃子氏とそういう関係になるつもりはないわ」
「今お前、『今はまだ』って言ったか!?」
「だから代わりに、堕理雄を
「は?」
沙魔美が指をフイッと振ると、俺はポフッと煙に包まれた。
そして煙が晴れると俺の身体は……
若干ロリ体型で、カワイイ系の女の子になっていた。
……ニャッポリート!
「沙・魔・美ー!!! 何してくれとんじゃワレー!!!!」
「アラアラ、女の子がそんな汚い言葉遣いをするもんじゃないわよ、堕理実」
「いや、何だよその堕理実って……」
「あなたの名前よ。ちなみに私は私立
「何だそのコッテコテの設定は!? 嫌だぞ俺は!」
「じゃあ、あなたは一生堕理実として人生を過ごすことになるけど、それでもいいのね?」
「ぐっ………………それは嫌です、お姉様……」
「よろしい。良い子ね、堕理実は」
そう言うと沙魔美は、俺の頭をナデナデしてきた。
……何この状況?
TSした上に自分の彼女と百合ってるなんて、性癖としてあまりにマニアックすぎる。
もちろんそんな人はいないと思うが、万が一この話を読んで性癖が歪んでしまった方がいたら、心の底から謝ります。
「さあ、まずは一緒にクッキーを作りましょう、堕理実」
「え、ええ、お姉様」
……とりあえず今は、沙魔美のご機嫌を取っておくしかない。
まあ、その内飽きて、戻してくれるだろう。
「アラアラ堕理実、あなたは本当におドジさんね。それは砂糖じゃなくてセメントよ」
「あ、イッケナーイ私ったら。ご、ごめんなさいお姉様」
「フフフ、まったく、しょうがない子ね」
いや、ドジっ子レベル高すぎだろ!?
てかウチに、セメントなんてあったっけ!?
「これはお仕置きよ」
「えっ?」
ブチュウッ
おファッ!?
突然沙魔美にキスされた。
……いや、キス自体はいつもしてるんだけど、女の子の状態ですると、何と言うか背徳感が半端ない。
オオ〇コ半端ないって(久しぶり)。
ブチュチュウッ!!
ファファッ!?!?
更に濃厚なキスに移行してきた!?
沙魔美の舌が蛇みたいに、俺の舌に絡みついてくる。
いや……沙魔美……これは……マズいって……。
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「ハァ、ハァ、ハァ……」
「……あなたが悪いのよ堕理実。あなたがそんなにカワイイから、私は我慢できなくなってしまったのよ」
「……ごめんなさい、お姉様」
なんで俺が謝ってんの!?
てか、前の
俺ってそんな受けっぽい!?
読者の声「せやな」
マジかよ!!
全然自覚なかったよ!!
明日からは本気出します!(明日からは本気出すとは言ってない)
「フウ、もういいわ。何だか興奮したら汗かいちゃったから、一緒にシャワーを浴びましょう」
「えっ!? お姉様、それは……」
「アラ? 何か問題でもあるの? 今は女の子同士なんだから普通でしょ?」
「いや、でも……」
今さっきベロチューした二人が、一緒にシャワー浴びるのは普通じゃなくない!?
どうしてもニャッポリートな展開を期待……じゃなくて予感しちゃわない!?
「どうしたの堕理実? 何なら、私があなたの服を脱がせてあげましょうか?」
「い、いえいえいえ、結構です! 自分で脱ぎますから!」
「そう、ならいいんだけど」
「……」
どうしよう……。
マジで一緒にシャワる(?)展開になってしまった……。
あ。
待って。
シャワるってことは、俺今から裸になるんだよね?
自分の身体とはいえ、女の子の裸を見るのは、気が引けるんだが……。
……いや、深く考えるのはよそう。
今の俺は堕理実なんだ。
ただ、堕理実がシャワるだけ。
そうだよね?(誰に聞いてるの?)
俺と沙魔美は脱衣所に移動し、俺はまず上のブラウスを脱いだ。
アレッ!?
俺、ブラを前後逆に付けてるぞ!?
「アラアラ堕理実、あなたは本当に、おドジ
「あ、イッケナーイ私ったら。ご、ごめんなさいお姉様」
「フフフ、まったく、しょうがない子ね」
ブラって社会の荒波からtkbを守るのが仕事だったの!?
ていうか、堕理実のドジっ子レベルがストップ高だ!!
……まあ、でも気にしたら負けだな。さっさと外してしまおう。
俺は前後逆のブラを外した後、スカートを脱いだ。
アレレレッ!?
俺、パンツの代わりに昆布を巻き付けてるぞ!?!?
「アラアラ堕理実、あなたは本当に、おドジ女どれみ♯(?)ね。それじゃあどっちから出汁が出てるかわからないわよ(?)」
「あ、イッケナーイ私ったら。ご、ごめんなさいお姉様」
「フフフ、まったく、しょうがない子ね」
こんなの最早、ただのサイコパスだよ!!
堕理実のドジっ子レベルが天元突破した!!!
「さあ、いらっしゃい堕理実」
「は、はい」
俺は沙魔美に手を引かれてお風呂場に入っていった。
なるべく自分の身体は見ないようにしているが、明らかに男のそれとは違う、所々の身体の丸みは、どうしても気になってしまう。
しかも目の前には裸の彼女までいる。
もちろん沙魔美の裸は何度も見ているが、自分が女になってから見るのでは、大分印象が違う。
何と言うか、改めて見るとやっぱり沙魔美のプロポーションはグンバツ(?)だ。
まるでそれ自体が、一つの芸術作品の様に見える。
自分が女になってみて、自分の彼女の特別さに気付くとは、何とも皮肉な話だな。
「堕理実、後ろを向きなさい。私が背中を洗ってあげるわ」
「あ、ありがとうございます、お姉様」
沙魔美はタオルを使わずに、自分の手のひらにボディソープを垂らし、俺の背中を撫で始めた。
はわわわ。
何かこれ凄くエッチじゃない!?
しかも俺達は今、女の子同士だし。
「堕理実の背中、キメ細かくてスベスベで、陶器で出来てるみたい。とっても綺麗よ」
「そんな! お姉様の方がずっと――」
むにゅん
のファッ!?
沙魔美の豊満な胸が、俺の背中に押し付けられた。
ひゃー!!
スンゲー弾力!
今なら特大ビーズクッション二個を、特別にお付けします!(テレビショッピング並感)
「あ、あの? お姉様?」
「フフフ、あなたは本当にカワイイわね。でも、そろそろ限界かしら? しょうがないから、男の子に戻してあげるわね」
「あ……ありがとうございます」
……やっと終わったか。
正直今回はマジでヤバかった。
危うく禁断の領域に、足を踏み入れてしまうところだった。
「と、その前に」
「え?」
「トウッ!」
「えっ!?」
沙魔美は俺の身体を180度回転させて自分のほうに向かせ、風呂場のタイルに手を突いた。
か、壁ドンや~。
「お、お姉様……何を……?」
「知ってる? 堕理実。女の子は男の子の10倍キモチイイのよ。堕理実にも女の快楽を教えてあげるわね」
「え……それは……」
……らめぇ。