「ご指名ありがとうございまッす! 僕は伝説のホストピンドンシャンパンタワーアフターボトルキープ――源氏名は……アキラでッす! フゥ~!」
若手の頃のネプチュ〇ンのコントだ!
ボキャ〇ラ天国でよく見たやつだ!
また今の若い子には通じないネタを……。
どうしよう。
下手したらこいつが全キャラ中、一番ウザいかもしれない。
今が地球の命運を懸けた決戦中だということも、ややもすると忘れそうになってしまう。
もしかしてそれがこいつの狙いなのか?
だとしたらとんだ策士だが。
「ハッハー! キミを指名したつもりはないが、せっかくだから我が劇団の新作公演を観てゆきたまえ! 特別に砂かぶりで観せてあげよう! いや、魅せてあげよう! 準備はいいな? 琴子、咲羅!」
「「はい、座長!」」
玉塚歌劇団の三人と俺(分身)は、かつて俺と玉塚さんが死闘(?)を繰り広げた公園で、アキラと相対していた。
分身の俺は見聞きしたものを発信する役目で、受信機能は付いていないため他の戦場の状況は不明だが、何となく南のちっこいズ辺りはシリアスな戦闘になっている気がするだけに、
いや、イカンイカン!
こうやってすぐ油断するのが、俺の悪い癖だ。
こう見えてアキラは、途轍もなく強いやつかもしれないじゃないか。
気を引き締めていかないと。
「フゥ~! そこのハンサムボーイ、心配しなくとも、僕の身体能力は、地球人と然程変わらないッよ。フゥ~ウッ!」
フーフーうるせーな!?
北風かお前は!?(何それ)
いや、大事なのはそこじゃない。
今、身体能力は地球人と変わらないと言ったかこいつ?
そんなバカな。
もしそれが本当なんだとしたら、それでもエストがこいつを封神石の破壊担当に指名したのが不気味すぎる。
それはつまり、身体能力以外の部分で、とんでもないチートスキルを有しているということの証左じゃないか?
「ハッハー! それではボク達にも魅せてみたまえよ、キミの
「た、玉塚さん!?」
またあなたはそんな、敵を鼓舞するようなことを!
こんな時まで、イケメンが過ぎますよ!
「フゥ~! おっけ~い。それでは今宵は姫達を、一夜限りのドリーミングパーリーにご招待いたしまッす! フゥ~ウッウッ!」
依然として抜群のウザさを発揮しつつも、アキラはジョ〇ョ立ちをキメた。
しかもジョル〇が、「『ギャング・スター』にあこがれるようになったのだ!」の時のポーズだ。
いったい何がしたいんだこいつは……。
「フゥ~! 残念だけど、これでゲームセットだッよ」
「は?」
ついに頭までやっちゃったかこいつ?
ジョ〇ョ立ちをキメただけなのに、何がゲームセットだってんだよ?
「フゥウッウ~! 特別にハンサムボーイにだけは教えてあげるッよ。僕のこのポーズを見た姫達は、みんな僕の虜になって、僕の言うことなら何でも聞いてしまう
「!!」
何だと!?
それって前にジタリアが使っていた、刺した者を自分に惚れさせる矢の上位互換じゃないか!?(※74話参照)
見ただけで虜にしてしまうって……。
今ハッキリとわかった。
これはチートスキルなんてもんじゃない。
むしろこのスキルだけで世界征服をすることさえ可能な、ただのバランスクラッシャーだ。
っ! マズい!
玉塚さん達が
……おや?
咄嗟に玉塚さん達のほうを見たが、三人は特にいつもと変わった様子はなかった。
「……いや、俺、男だし」
「私も」
「ハッハー! 生憎ボクは、男性には興味がないのッさー!」
「…………フゥ!?」
そうだったー!!!
この三人はみんな、こう見えて恋愛対象は女の人ばっかだったー!!!
あまりの展開にアキラは、ル〇ィに雷攻撃が効かなかった時の、ゴッドエ〇ルみたいな顔をしている。
……ド、ドンマイ。
「座長」
「ここはアレを」
「うむ」
え、アレって?
玉塚さんがその場でクルッと一回転すると、辺りの公園の景色は、広大で牧歌的な平原に瞬時に変化した。
マッジかよ!?
ついにこの人、領域展開的なものまで習得しやがった!?
これ今や、玉塚さんが最強キャラなんじゃねーか!?
「「「きれいはきたない、きたないはきれい」」」
……!
「「「きれいはきたない、きたないはきれい。さあ飛んで行こう霧の中、汚れた空をかいくぐり」」」
これは!?
確かシェイクスピアの四大悲劇の一つ、『マクベス』に出てくる、三人の魔女の有名な台詞!
いつの間にか玉塚歌劇団の三人は、魔女の様なおどろおどろしい衣装に着替えており、マクベスの三人の魔女そのものの役になりきっている。
「フゥ、ウ~。でも、こんな虚仮威しじゃ、僕は屈しないッよ。……ん?」
お?
その時、遥か彼方の地平線から、地響きと共に大地を埋め尽くす程の兵士の大群が、こちらに突撃して来るのが見えた。
しかも何故か兵士達は、木の枝を全身に括り付けていた。
な、何だありゃ!?
「フゥ~!?!? ちょ、ちょまっ! ま、ま、ま、ま、ま…………パーリナイッ!」
謎の断末魔の叫びと共に、風の谷のホニャララのラストシーンみたいに、アキラは大群に吹き飛ばされて宙に舞った。
もちろん風の谷のホニャララのように、その後アキラが復活することはなかった。
合掌。
そしてボロボロになったアキラを残して領域展開は解除され、辺りの景色は元の公園に戻ったのだった。
「……玉塚さん、今のはいったい?」
「ハッハー! マイライバルともあろうものが、マクベスのラストシーンをご存じないのかい? 今のは第五幕の、マクベスの城へイングランド軍が攻めてくるシーンを再現したものだよ。主人公であるマクベスは、三人の魔女から『バーナムの森が動かない限りはあなたの地位は安泰だ』と言われていたんだが、イングランド軍が木の枝を隠れ蓑にして進軍していたのが、森が動いているように見えたという名シーンさ」
「はあ……」
俺が聞いたのは今のシーンの解説ではなくて、何故玉塚さんがそんなものまで具現化できるようになっているのかってことだったんですけど……。
……ま、いっか(思考停止)。
「うぶ……うぶ……うぶぶぶぶぶぶぶ」
「玉塚さん!?」
突然、玉塚さんがいつぞやみたいに、ビームを吐き出す直前の巨神兵状況になった。
さっきから風の谷のホニャララのシーン多いな!?
「マズい!! 師匠! 洗面器を用意してくださいッ!!」
「え!? 娘野君、玉塚さんはどうしちゃったの!?」
「流石に領域展開は身体への負担が大きくて、使うといつもこうなってしまうんです」
「そんなっ!? 俺、洗面器なんて持ってないよ!?」
「じゃあ、師匠さんが洗面器の代わりに、座長の全てを受け止めてあげてください」
「咲羅君!? 君たまに、サラッと剛速球ブン投げてくることあるよね!?」
「うぶぶぶぶぶぶぶ……」
「うわっ!? 玉塚さん!? か、勘弁してください玉塚さん! ――玉塚さーん!!」
マージ―かーよー。