目次
ブックマーク
応援する
4
コメント
シェア
通報

第114魔:選びたまえ!!

「あけましておめでとうございます。2018年1月1日から連載がスタートしたこの小説も、今日でちょうど一周年。これもひとえに読者の皆様のお陰です。いつもこんな殴り書き小説をお読みいただき、誠にありがとうございます」

「いつになく真面目な始まり方だな沙魔美」


 まあ、作中ではまだ9月なんだけどな。


「一周年の挨拶くらいはちゃんとやらないとね。ジャ〇プとかでも、一周年の時は巻頭カラーでキャラが挨拶したりするじゃない?」

「小説でカラーもらっても意味ないけどな」

「というわけで、今日はここスパシーバで一周年記念パーティを開催しております」

「「「ウェーーーーーーイ」」」

「またかよ!? この間100話記念やったばっかだろうが!?」

「大丈夫大丈夫。今日は一周年に相応しい企画を持ってきたから」

「企画!?」


 そこはかとなく嫌な予感がする!


「ええ、その企画っていうのはね――」

「待て! 言わなくていい!」

「『堕理雄を女装させまっしょい』のコーナー!!!」

「ファッ!?」

「「「ウェーーーーーーイ!!!」」」


 女装!?

 俺を女装させるって言ったか今!?

 冗談じゃないぞ!


「悪しき魔女ー!!!」

「真衣ちゃん!」


 そうだよ真衣ちゃんの口からも言ってやってくれよ!

 真衣ちゃんもお兄さんのそんなみっともない姿見たくないでしょ!?


「あなたもたまにはスンバラシイ企画持ってくるじゃないですかー!!!」

「でしょでしょー」

「ヌッ!?」


 真衣ちゃんと悪しき魔女は、熱いハイタッチを交わした。

 えぇ……。


「さ! これだけみんなから期待されてるんだから、もう後には引けないわよ堕理雄」

「引けないもクソも、俺は最初から乗り気じゃねーよ!? それに俺は娘野君とかと違って女顔じゃないし、仮に女装したとしても、全然面白いことにはならねえって。なあ菓乃子!」

「えっ。…………そんなことはないんじゃないかな堕理雄君」

「菓乃子ッ!?」


 ブルータスお前もか。

 俺に味方は一人もいないのか……。


「さあ、これで今度こそ覚悟は決まったでしょ? 安心して。私はよく同人誌とかで、屈強な受けちゃんが文化祭のメイド喫茶で似合わないメイドさんの格好させられてるシチュ大大大好きだから」

「全然安心できない!」

「わかる!! 私もそういうシチュ大好きだよ沙魔美氏!!」

「菓乃子!?」

「私も大好きー」

「多魔美!」


 ダメだ……。

 同人誌の話になると、お腐れ三姉妹の結束が強すぎる。


「では早速一着目いってみまSHOW!」

「オイ! 俺はまだやるなんて言ってないぞ!」

「一着目の衣装は先程話題にも上がっていた、『メイドさん』です!!」

「ジーザス!」


 もういっそ一思いに殺してくれ!


「ホレ先輩。ウチの衣装の予備貸したるで」

「余計な気を遣うな後輩!」


 額に『亥』と書かれたピッセが(イノシシ年だから?)いつものドエロメイド服を、天高く掲げながら持ってきた。

 俺にそれを着ろと言うのか!?


「イエス! じゃあちょっとこっちに来なさい堕理雄」

「うわ!? ちょ、引っ張るな沙魔美!」


 沙魔美はピッセからメイド服をふんだくると、物凄い力で俺をバックヤードに連れていった。


 た、助けてー!!




「キャー!!! おおおおおお兄さん! 可愛い!! とっても可愛いですううううう!!」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


「真衣ちゃん!?」


 真衣ちゃんがアッパー系のヤベエ薬でもキメてるみたいな眼で、スマホのカメラを一心不乱に連写している。

 は、恥ずかしい!!

 まさかいつも見ているピッセのドエロメイド服を、自分が着る日が来るとは誰が予想しただろうか……。

 これが小説でよかった。

 小説なら細かい描写をしなければ、俺が具体的にどんな格好をしているかは、読者には伝わらりづらいからな。

 まあ、その分いいように想像されてしまうというリスクはあるが……。


「うん。……イイよ堕理雄君。……イイ。……凄くイイ」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


「菓乃子!?」


 菓乃子は逆に、ダウナー系をキメてそうな虚ろな眼で、同じくカメラを連写している。


「アッハハー、普津沢さん、この写真、『彼氏がデート中に、いきなり女装し出したなう。に使っていいよ』シリーズで、SNSにアップしてもいいですか?」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


「そんなシリーズ聞いたことないよ未来延ちゃん!」


 どんな変態彼氏だよ!

 未来延ちゃんはシラフでカメラ連写してるし……。


「フフフ……最高よ堕理雄。もっと……もっと恥ずかしがりなさい」


 ジー


「沙魔美!?」


 沙魔美は同人作家の眼で、いつぞやに使っていた8ミリビデオカメラ(※32話参照)を回していた。

 なんで未だにお前の中では8ミリビデオカメラが現役なんだよ!?

 お前絶対アラフォーだろ!?

 そういえば沙魔美は未だにアナログの紙とペンで漫画を描いているし、チョイチョイ語彙が昭和だし、マジで怪しいな……(俺も人のことは言えないが)。


「……フゥ、良い資料が撮れた」

「資料!? 今資料って言ったか沙魔美!?」

「では次は――」

「もう嫌だぞ俺はッ!!」

「確かにこのメイド服のアンマッチな感じも悪くないんだけど、せっかくならガチの女装も見たいわよねえ」

「聞けよ俺の話をッ!!」

「堕理雄は全体的にシュッとしてる感じだし、カワイイ系ってよりは、コンサバ系の衣装を着せれば、とっても美人になると思うのよね」

「俺は思わねえッ!!」

「そういうことなら、私にお任せください!」

「咲羅君!?」


 咲羅君がどこからともなく、白のブラウスと黒のタイトスカートを取り出した。

 なんで君、そんなもの常備してるの!?


「流石咲羅きゅん、女装には造詣が深いわね。お借りするわ!」

「はいどうぞ」

「来なさい堕理雄!」

「イテテテテテテ!!」


 ゴリラみたいな力で、俺はまたもやバックヤードに拉致された。


 だ、誰かー!!




「ブ、ブブ、ブヒィイイイッ!! お兄さーーん!!! いえ、お姉さーーーん!!! お綺麗ですうううううううう!!!」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


「……」


 もう死にたい……。

 マジでブラウスとスカートを着せられるとは……。

 しかも黒髪ロングのカツラも被せられて、ストッキングとハイヒールも履かされた上、バッチリメイクまで施されてしまった。


「これぞ、ドエロ美人国語教師コーデよ!!」


 全然ピンとこない。


「さささささ沙魔美氏ーーー!!! あなた天才だよおおおおお!!!」

「でしょでしょー」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


「菓乃子……」


 お前はそんなキャラじゃなかったはずだろ……。

 それとも俺が今まで見てきた菓乃子は、ほんの一面に過ぎなかったというのだろうか……?(哲学)


「アッハハー、普津沢さん、この写真、『担任の先生と、放課後個人授業なう。に使っていいよ』シリーズで、SNSにアップしてもいいですか?」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


「そんなのアップしたら炎上必至だよ!!」


 どこの中学〇日記だよ!


「でもこうなってくると、シチュエーションを明確にするためにも、相方が欲しくなってくるわよねえ」

「こねえよ!!」


 頼むからもう勘弁してくれ!


「……琴男きゅん、いってみましょっか!」

「えっ!? 俺ですか!?」


 なっ!?

 こ、娘野君……逃げて……逃げてええええ!!


「私セーラー服持ってます!」

「咲羅君!!」


 咲羅君がセーラー服を取り出した。

 逆に聞きたい、君は何なら持ってないんだ!?


「ディ・モールト(非常に)よしッ! お借りするわ!」

「はいどうぞ」

「琴男きゅんゴーゴゴーゴゴーゴーゴーゴー!」


 佐賀のゾンビアイドルのプロデューサー!?


「し、師匠ー!!」

「娘野くーん!!」


 娘野君は沙魔美に手を引かれ、バックヤードに消えていった。

 マジでこの段々人が犠牲になっていく展開、ゾンビ映画みたいだな……。




「ふーん。まあ、可愛いんじゃない」


 パシャ……パシャ……


「シスプリちゃん!? 師匠の時と温度差がエグくない!?」


 確かに……。

 せっかく娘野君が渾身のセーラー服姿を披露したのに、真衣ちゃんは打って変わって賢者タイムに入ってしまっている。

 それにしても、流石娘野君。

 セーラー服似合いすぎである。

 三つ編みおさげのカツラも被せられているし、こうして見ると清純派女子高生にしか見えない。


「これぞ、ドエロ美人国語教師とのイケナイ放課後個人授業に勤しむ学級委員長コーデよ!!」


 長えよ。


「沙魔美神ーーー!!!!! 一生あなたに付いていくよおおおおお!!!!!」

「でしょでしょー」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


「菓乃子……」


 どうやら菓乃子にはブッ刺さったらしい……。


「堕理雄君! ちょっと琴男きゅん君の肩に手を置いてみて!」

「菓乃子!?」

「師匠の元カノさん!?」

「いいから早く!!」

「「!」」


 菓乃子……。

 ごめんな。

 今まで俺、菓乃子のそんな一面に気付いてあげられなくて……。


「……娘野君、いいかな?」

「……はい」


 俺は心の中だけで涙を流しながら、娘野君の肩にそっと手を置いた。


「エクストリームヘヴンフラーーーッシュ!!!!」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


 出た、エクストリームヘヴンフラッシュ。

 菓乃子の中の、最上級の誉め言葉。

 まあ、そこまで菓乃子に喜んでもらえたなら、俺も娘野君も本望だよ……(血涙)。


「アッハハー、普津沢さん、琴男きゅん、この写真、『新作の撮影中なう。に使っていいよ』シリーズで、SNSにアップしてもいいですか?」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


「新作って何の!?」


 それっていかがわしい映像作品じゃないだろうね!?

 てか冷静に考えてみたら、俺と娘野君は今、二人共女の格好をしてるから、傍から見たら百合に見えるかもしれないけど、中身は二人共男っていう、何が何だかよくわからないことになってしまっているんだよなあ……。

 こんなものに、果たして需要はあるのだろうか……。

 そもそも新年一発目のネタがこれってどうなの?(まあ、この小説らしいといえばらしいのかもしんないけど)


「んん~、こうなってくるともう一人くらい、女装役が欲しくなってくるわねえ」

「だからこねえって!!」


 そもそもこの場に男はもう咲羅君くらいしかいないけど、咲羅君は普段から女装してるしな。

 ……え。

 もしかして伊田目さんに女装させようとしてる!?

 それはいくら何でもマニアックすぎないか!?


「ああ、ちなみにお父さんはとっくの昔に帰りましたよ」

「帰った!? 今未来延ちゃん、伊田目さんは帰ったって言った!?」


 どうりで全然姿が見えないと思った。


「店の鍵は私が預かってますから、好きに使っていいって言ってました」

「あ、そう……」


 あの人ホント適当だな。

 それとも忍者としての危機察知能力で、女装させられそうになるピンチを回避したのだろうか?

 それもありそうだな……。


「フム、ではここは敢えて……勇希先輩! お願いしてもよろしいですか!」


 っ!?


「ハッハー! よろしいともさマイレディ! 正直女装にはあまり自信はないが、マイレディのために一肌脱ごうじゃないか!」

「いや、女装っていうか……」


 玉塚さんは元々女性でしょ?

 まあ、普段は常に男装してるから、確かに女性の格好をするのは女装と言えなくもないけど……。

 もう完全に性別がかおす先生だな。


「座長! そういうことでしたら、これなんかオススメです!」

「咲羅君!?」


 咲羅君は今度は白衣を取り出した。

 さっきから君それ、どこから取り出してるの!?


「ハッハー! ではそれでいこう。マイレディ、メイクはキミに任せるよ」

「お任せください!」


 沙魔美と玉塚さんは、二人でバックヤードに消えていった。

 俺もう帰ってもいいかな……?




「んふううううううう!! イケメンのおねえちゃん、今日はとっても美人さんだよおおおおおお!!」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


「マヲちゃん……!?」


 ここに来て何故かマヲちゃんのボルテージが唐突に上がった。

 意外とマヲちゃんは、大人のおねえさん系が好みだったのかもしれない。

 確かに今の玉塚さんは、いろんな意味でヤバい。

 白衣を着て沙魔美に女性用メイクをバッチリ施された玉塚さんは、いつものイケメンから一転して、大人の色気をムンムンに漂わせた、妖艶なレディに様変わりしていた。


「これぞ、子供の頃から女装が趣味で、高校にも女の子として入学した主人公の琴男。琴男はそこで、一人の美人国語教師の普津沢と出会う。だが、実は普津沢も女装が趣味の男性であった。共通の秘密を抱えた二人はいつしか、教師と生徒、男と男という壁を破り、禁断の関係を築いていく。――だが、そこに美人養護教諭の玉塚も加わり、事態は混沌としたラブトライアングルを描いてゆくのであった…………コーデよ!!」


 コーデって何かね!?(菅原〇太)


「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!」

「でしょでしょー」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


「菓乃子……」


 今の「でしょでしょー」は、何に対する「でしょでしょー」なんだよ沙魔美。

 どうやら菓乃子は完全に壊れてしまったようだ……。

 ある意味今回の企画で、一番の被害者は菓乃子だな。


「アッハハー、お三方、この写真、『玉塚歌劇団の新作の舞台稽古なう。に使っていいよ』シリーズで、SNSにアップしてもいいですか?」


 パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ


「ダメに決まってるでしょ!?」


 ていうかそのシリーズ、玉塚歌劇団の人しか使えないじゃん!


「ハッハー! ボクは構わないよプリティレディ! むしろ、我が劇団の次回作は今からこれに変更しよう!」

「玉塚さん!?」

「座長!?」


 何言い出すんだこの人!?

 そもそも俺は男だから、玉塚歌劇団には出演できないでしょ!?(娘野君と咲羅君は例外として)


「ところでボク達も女装したのだから、次は女性陣が男装を披露してくれる番ではないかな?」

「た、玉塚さん!?」


 この人爆弾しかブッ込まねーな!?


「流石です座長!!」

「娘野君!?」


 自分が女装してた時は乗り気じゃなかったのに、手の平クルーして俄然色めき立った娘野君であった。


「フフフ、もちろん私達は構いませんよ勇希先輩。ねえ菓乃子氏」

「え!? う、うん……まあ」

「よっし! では諸君、好きな衣装を選びたまえ!!」


 玉塚さんは瞬時に、ありとあらゆる男装用の衣装をイケメンオーラで具現化させたのだった。

 ……まあ、もう好きにしたらいいよ。


 久しぶりに、後半に続くゼーット!!

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?