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第4話

 龐徳の奮戦虚しく、どんどん厚くなっていく匈奴兵の壁に、一人また一人と西涼兵が脱落していく。


「ええい!埒が明かぬ!馬超殿は!?」


 龐徳が振り向くと馬超はまだ最後方の辺りにいる。


「これでは馬超殿が殿軍ではないか!」


 馬超を助けに行きたくても西涼軍が前方になだれ込んでくるため動けない。


 龐徳が心配しているのに気づいた馬超は、心配いらぬとばかりに匈奴兵の合間を縫い、小隊長と思わしき兵だけを狙い殺していった。


 そのせいか追撃部隊の攻撃は精彩に欠けているように感じる。


「なるほど、指揮を乱せば良いということか」


 龐徳は馬超に習って、小隊長らしき武将のみを斬り捨てていった。思った通り、匈奴兵らの隊列が乱れ、攻撃が緩くなっていく。


「しばらくはこれで保ちそうだが、このままでは……良い、今は命果てるまで戦おう」





 信忠は并州に入るや早々に西涼軍が苦戦し、死地にあることを耳にした。


「秀満と光忠にこのことを伝え、行軍を急がせよ。高幹軍と遭遇し次第攻撃、西涼を窮地から救い出すぞ」


 信忠の命に、秀満と光忠は進軍の速度を最速に早めた。さらに蘭丸にも指示を与え、本隊もできる限り速度を上げる。


 秀満の部隊が郭援隊を発見すると、郭援隊はすでに交戦中であった。


「あれは曹操軍か。我らは信長軍、味方であるとあの軍に連絡せよ」


 秀満は早馬を出すと勢いを衰えさすことなく、郭援軍に突進していった。


 郭援軍は長安から派遣された曹操軍を相手に優勢に戦っていたが、新手が現れ、凄まじい勢いで突っ込んできたために隊伍を乱した。


 そこへさらに光忠軍が突撃してくる。



 すると郭援は供回りを連れ太原へと一目散に逃げていった。


 大将を失った軍はしばらく抵抗を続けていたが、秀満と光忠軍の猛攻と、郭援が逃げたことを知り、抗することを止め、武器を捨てた。


「我らはこのまま追撃する。後の処理は頼むと曹操軍に早馬を」



 秀満は使者にそう伝えると、休む間もなく追撃に移り、光忠も続いた。


 先発隊が見えなくなると、今度は信忠の本隊が到着した。


「あれは曹操麾下の部隊か。秀満たちは先に進んだようだな」


 信忠は傍らの兵に話しかけた。


 すると曹操軍から白旗を掲げた使者が派遣された。


「戦場ゆえ礼を失する無礼お許し願いたい。私は長安太守鍾繇殿より派遣された杜畿ときと申します。援軍かたじけない」


 、ま杜畿は馬上でありながらもうやうやしく頭を垂れる。


「私は織田信忠。曹操殿に高幹討伐を命じられ馳せ参じた。今は西涼軍危急の時、まずは救うが先決ゆえこちらの無礼もお許し願う」


「はっ。官渡の折の信長軍の戦いぶりは長安でも語り種となってます。心強い限り」


「なんの、曹操軍の結束力あってのこと。それよりも貴軍の機動力ならば我らより早かろう。先遣隊が気になるゆえ急いでもらえるか?」


「畏まった。では先行いたします」


 杜畿はそう言うと、自身の隊に戻り、行軍を早めた。



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