まず、目を奪われるのは表紙に描かれた老婆の微笑みだ。
老婆の顔には、どこか懐かしさと温もりが宿っているが、同時に言葉にできない不安が背筋をかすめる。
微笑んでいるはずなのに、その目はまるでこちらの心の奥を覗き込んでくるかのようだ。
逃れようのない視線は、古き良き時代の恐怖を静かに呼び覚ます。
そう、この作品はどこか懐かしくもひそやかに怖い、古典怪談の香り漂うホラーコレクション。
これがクラシックで実に良い。
全36話にわたる作品群は柳田國男の民俗学的なまなざしを基盤に、稲川淳二の語り芸がもつ口承の迫力、また横溝正史が描き出した土着的因習ホラーの系譜に連なるものとも言える。
一話ごとの描写は簡潔ながらも骨太で、村に根ざした祟り、家系にまつわる呪い、あるいは人ならざる異形が語り手の記憶の隙間から這い出るように現れてくる。
話が次々に語られていくこの構成――。
それは、レビュー者がかつてゲーム実況で見たスーパーファミコンの怪談ソフト『学校であった怖い話』を彷彿とさせた。
あの作品と同様に怖さが『見た時』ではなく、『見た後』にじわりと浮かび上がってくるのだ。
このホラーコレクションを読み終えた後、あなたは祖母や近所の古老が語った『昔話』を思い出すかもしれない。
そして、今度はあなた自身が『昔話の語り部』になる番なのかもしれない――。