自分のことを助けてくれた美少年にレイ、という名前を教えられた
――あのとき、
――こんな格好いい男の子に助けてもらうなんて、何年ぶりだろ。
そして、そのゴシックロリータの丈の長いスカートを揺らしつつ、一歩だけ引いて頭を深く下げつつ、お礼の言葉を心の奥底から出すように伝える。
「あ、あの……レイくん。えっと……えっと……私のことを助けてくれて有難うございました!」
そして、美少女の格好をした
「あれ? キミ、自分のこと
そんなレイの問いかけに、駅に降り立った際の母親の言葉を思い出した
「え? えーっと……えーっと……女の子が自分のこと
すると、レイはそのぱっちりした釣り目がちな瞳の下にある薄い唇の口角をほんの少しだけ上げ、両肘を立てつつ腰に両手を当て、美少年然と柔らかに微笑む。
「いや? 女の子でも自分のことをボクって呼ぶの別に普通だと思うよ? それにボクは、キミが自分に素直になってくれてる方が嬉しいけどな」
そんなことを優しい口調で言ってくれるレイの姿に、美少女を演じていた
罪悪感を少しだけ感じつつ、
「それに、なんだか……申し訳ない気持ちです……こんな
――
そして、レイは柔和に言葉を返す。
「そんなこと気にしなくていいよ、見たところナンパされて困ってたみたいだしさ。それに、キミを助けたのはボクのためでもあったんだ。『義を見てせざるは勇なきなり』ってね。ボクの好きな言葉なんだ」
そんな、まるで神様が
そして
「あの……さっき、
すると、レイは気後れせず応える。
「ああ、高校の英語の授業で習わなかった? ほら、
「ええと……わかりません。
そんな、背の低く小さな体の黒髪ロング美少女の様相をした
「えっ!? まさか見た目だけじゃなくてホントに中学生だったの!?」
「あ、はい。
そこで遍は、構内の男たちにナンパされてから一時的にすっかり忘れてた、姉との待ち合わせの約束を思い出す。
「あっ! いけない! レイくん、いま何時!?」
そんな
「え? ……えっと……10時30分を少し過ぎたところかな」
「大変!
「じゃあ、ボクもキミと一緒にさっきの場所にいくよ。ボクは速足で向かうから後ろからついてきて」
そして、先ほどの円い建物の入り口が面した広場に、レイが、そして少し遅れて遍がビルの間の小路を抜け到達する。
そこには、学園祭を楽しんでいる若いカップルが大勢いて、先ほど
それと同時に、
そしてそのメッセージボックスを開いた
『ちょっと、友達が貧血で倒れちゃったから一緒に病院行かなきゃいけなくなった。待ち合わせ時間、正午に変更』
――よかったー。
そんなことを思った
「お姉ちゃん、なんだか用事で遅れるみたいです。待ち合わせ時間、正午に変更だって送ってきてました」
そう、
「そっか! それならいいんだけど」
ところがそこで、
「でも、あと1時間半近く暇な時間ができちゃったな……どうしよう……」
そんな、美少女としての憂い顔を見せて
「あっ! じゃあもし嫌じゃなかったらボクと一緒に学園祭回る? ボクもこの大学の学生じゃないからそんなに詳しいって訳じゃないけど、それなりにこのキャンパスのことは知ってるから案内はできるよ!?」
「え……いいんですか?」
「いいって、いいって! キミが中学生の女の子だってわかった以上、ボクもキミのこと放っとけなくなったしさ! 良かったら12時まで二人で一緒にお祭りを楽しもうよ!」
そんなことを、先ほど
「はい……それでしたら……しばらくの間、
「ああ、もちろん。こちらこそよろしく。でもボクはまだキミの名前知らないからさ。キミのことを、ボクは何て呼べばいいかな?」
「えっと……本名はしばらく秘密で。とりあえずはレイくんが僕のために考えてくれたヒカリ、でお願いします」
そんなことを少女らしい控えめな声色を使って照れた顔で返す、本当は少年であるゴスロリ美少女のような外見をした
心があると昔から言われている、小さな体の奥深くから自然と湧いてくる胸の高鳴りが、本人のどのような根源的な感情に由来するものか、自分自身にはまだわかっていなかった。