レイが第二試合へと向かってコートへと歩いていった後で、喉が渇いていた
リンゴジュースのボタンを押し、ICカードのブランド名を選び、その電子マネーカードをタッチ部分に触れさせる。
ピッ ガコン
電子音が鳴り響き、支払いが完了してペットボトルジュースが下に落ちる音がしたと思ったら、自動販売機の前面にあるランプの点滅が移動し、なにやらピロピロと音が鳴っていた。
ピロピロピロピロ ピピピピピ
そのランプの点滅は回転し、当たりのマークで止まった。どうやら、オマケとして当たりが出てもう一本選べるようであった。
――当たっちゃった。
――えーっと、どれにしよっかな。
美少女姿ではあるものの中身は男子中学生の
むにゅり
――え? この感覚ってもしかして。
中学二年生でまだ13歳の
ピッ ガコン
後ろから
――ってえええ!? いきなり胸押し付けてきて何してんの!?
そう思った
自動販売機の取り出し口から、350ミリリットルの小さなペットボトルジュースを二本、リンゴジュースとイチゴミルクを取り出したその頭に真鍮のような星形の髪飾りをつけた低身長な少女は、目の前にいて顔を赤くしていた
「ほら、こっちアンタの分」
そんなことを言われつつ、こういう場面に慣れていなかった
「うわっ! ……え、えーと……。確か、ミホシさん?」
戸惑いながら、投げられたリンゴジュースのペットボトルを手で落とさないように確保できた
すると、ミホシと呼ばれた茶髪ショートツインテの少女は、イチゴミルクのピンク色の清涼飲料水が入ったペットボトルを片手で持ちながら、そのアーモンドのような形の良い瞳でジト目を向けながら言い放つ。
「そうよ、ワタシの名前覚えてたんだアンタ。っていうか、なーに後ずさってんのよ? そんなに驚いた?」
「え……えっと……その……
さきほど、同い年くらいの女子の大きなおっぱいを背中に押し付けられるという、その人生において類例のない経験をした
「はぁ!? 同じ女の子に胸押し付けられるとか、たかがそれくらいのことでなーに女の子同士で恥ずかしがってんのよ? それとも可愛い子ぶってんの?」
その目の前の少女のぶっきらぼうな言葉遣いに、
――そうだ。いまの
そんなことを
身長153センチメートルの
「ま、そんなことはどうでもいいけど! なんでレイお姉さまがステディとしての友達ってみんなの前で宣言したのがよりにもよってアンタなのよ! ワタシはそこが気に入らないの!」
そんな勢いよくミホシが言葉を放つも、美少女の見た目をしてはいるものの中身は男子中学生で、別に同性愛の気があるわけでもない
――なんか、胸の谷間、普通に見えてるんだけど。
そのミホシの着ている白いトップスの襟元は重力の作用で隙間が開くように垂れ下がり、
「ワタシにいってくれれば、いつでもレイお姉さまのステディになるのに! ワタシの方がずっとずっと昔っからのお姉さまの仲の良い友達なのに! ただ生まれつきそんな名前で、運が良かっただけのポッと出のアンタなんかに!」
――え? 名前?
そう思った
「あの、名前ってどういう……」
「ハイ! これワタシの連絡先! どちらがお姉さまのステディにふさわしいか勝負を申し込むわ!」
「……そんな、少女漫画のノリで決闘申し込むのって普通なの?」
何やら紙切れを差し出された、年頃の女子中高生の生態にあまり詳しくない
「うっさい! いいから受け取りなさい!」
そんな怒鳴り声を目の前のショートツインテの少女にかけられて、
――レイくんとは違って、ミホシさんは女の子らしくすごく乙女チックなんだ。
――でも、女の子であるレイくんに対するあの態度って、やっぱり――
――このミホシさんって娘、お姉ちゃんが言ってたような女の子が好きな女の子。
――つまり、正真正銘の百合乙女って属性なんだろうね。
そんなことを心の中で再認識した
そこには、目の前のショートツインテの少女の名前が、手書きでこう書かれていた。
『早乙女 海星』
その、ミホシという名前がどんな漢字で書かれるかを知った
「
すると目の前の、頭に真鍮のような黄金色をした金属でできた星形の髪飾りをつけた少女が、なんとなく自慢げな顔つきになって、脇に挟んでいたペットボトルを持ちなおした方でない側の手を、母性の象徴であるかのごとく豊かに膨らんだ自らの胸に押し当てつつ、意気揚々と言い放つ。
「そう! 海の星と書いて
そんな自信満々な口ぶりに、漢字の読みに詳しい
「……
「ヒトデって言うなっ!!」
そして、六日後の次の土曜日に乙女の意地をかけて勝負、ということになったのである。