東京都心から遠く離れた、自然がまだまだ残っている冬の公園には冷たい風が体温を奪うように吹き抜け、
秋から冬にかけて落葉していた自然公園の遊歩道には朽ちかけた枯葉が散り敷かれている。
少し離れたところには、このゴミ拾いを乙女の意地をかけている勝負であると一方的に宣言したことなどどこ吹く風のように、真剣にボランティア活動に精を出している、ボランティア中であることを示す蛍光色のタスキをかけた
「……なんか、ステディの座をかけての勝負って聞いてたからもうちょっとこう、変則的な感じかと思ってましたけど、普通にマジメなボランティア活動ですね」
ウィッグのロング髪を活動しやすいようにと頭の後ろにてお団子状に結って、同じく蛍光色のタスキをかけた
「そりゃそうでしょ。ワタシとレイお姉さまとが同じ校舎で青春を過ごせるかどうかがかかったイベントで、子供じみたお遊びなんかやってらんないわよ。さ! さっさときりきり動いてゴミを拾いなさい! ちゃっちゃっと競争してボランティアで二人分以上の成果を上げて、ワタシがレイお姉さまの通う高校への推薦状を貰えるようにね!」
――へ?
そして、
「もしかして、
「そうよ? ようやく気付いた?」
木枯らしの吹く冬の公園にて防風のための青いウィンドブレイカーを羽織り、着ている学校指定の赤ジャージの胸元を大きく魅力的に張った
「いや、予想外でしたから……でも、
「あれ? 怒らないんだ? こんな朝早く寒いところに連れてこられて?」
「いや……それはそれですし。それに、こういったゴミ拾いとかのボランティア活動はそもそも世のため人のためになることなんで、付き合わされても別にいいですよ。ゴミ拾いをして公園が綺麗になるようなことだったら、少しくらい寒くても喜んでやれますので」
お淑やかな美少女然とした
そして、地面に落ちているゴミを探しながら、
「やっぱり、育ち良いのねアンタ。フツー、そういうことされたら相手に対してムカっときちゃってそのまま帰るとか、帰らなくても二度と口もききたくないし、顔も見たくなくなるもんなんだけどな。都庁職員の親を持つエリートのご令嬢ってのは伊達じゃないってわけね」
「は、はぁ……」
今は女装をしていて、いかにも美少女の姿をしているが、普段の女の子のリアルな生態を知らない
再び、
そこで、
「……その純白のジャージ、新品でしょ? 学校指定の奴とかじゃないし。なんか、急に買わせることになって悪かったわね」
「え、いえ……
「ワタシの家はパパもママも、アンタの親みたいな公務員どころか、不安定な雇用で安い給料もらうためにこき使われてる貧困家庭でさ。住んでるのはいまどきエレベーターもついてない公営の集合住宅で、そんな風にアンタが軽い気持ちで買ったジャージはおろか、レイお姉さまと一緒にいて似合うような可愛いお洋服とかもそう気安くポンポンとは買えないの」
「だから、ワタシがレイお姉さまと同じ私立高校に入るためにはね、こうやってボランティア活動とかでポイントをコツコツと稼いで、推薦状を通っている中学校から貰って、普通だったらとても払うことのできない学費の免除を狙うしかないの。アンタみたいな親が都庁職員やってるようなエリートでいいところの女の子には、ワタシみたいな貧困層の家の子の苦労はわかんないと思うけどさ」
「貧困層とか……そういうことをあんまり言わない方がいいと思いますけど」
そう、瞳の大きな美少女のような様相の
「何よ、事実よ。いくら愚痴っても、嘆いてもワタシの家にはお金がないってのは変わりようのない現実なんだから仕方ないじゃない。アンタのような金銭的に余裕のある家の子と違ってワタシたちのような貧しい家庭の子たちはね、利用できるものは何でも利用して、願いを叶えるためにやれることを精一杯やっていくしかないの」
そんな、レイと同じ高校に通いたい、ただそれだけを願っているということがわかった目の前の少女の、自分を利用するという手段は間違っていたのかもしれないがその根っこにある思いは真剣だったという話を聞いて、
そして、
「あーあ、なんでこの世界ってアンタみたいに裕福な家に生まれたってだけで何にも苦労しない充実した人生が送れる娘がいる一方で、ワタシみたいに貧乏で可愛いお洋服も簡単に買えない人生ままならない娘がいるんだろな。ホント、レイお姉さまがいなかったらこんな不平等な現実やってらんないわ」
――不平等、か。