土曜日の朝午前九時を少しだけまわった郊外の公園には、ボランティア参加者だけでなく、ジョギングをする青年やウォーキングをする老夫婦など、少しずつ人の気配が増えていた。
太陽の光が差し込み始め、空気はすこしずつ柔らかくなっているというものの、十二月の上旬だというのに肌に刺すような木枯らしが相変わらず吹きつけていた。
ある程度、ゴミが入ったゴミ袋を持っている少女姿の
「
すると、かがんで落ち葉を掻き分けていた
「えー、アンタもうそんなになったの? ワタシはまだ半分くらいなのに」
そんな、初対面はガサツだと思っていた
「それより、疲れていません? もうボランティア活動でゴミ拾いを始めてから一時間くらい経ってますから。よかったら、一緒に休憩しませんか?」
そんな風に、良家の子女っぽい気遣いにあてられたのか、
「まー、いーけど。これで勝ったとか、レイお姉さまのステディの座を確保したとか思わないでよね。これはあくまで、ワタシがアンタのことを自分の目的のために利用したってだけなんだから。ふんっ!」
そんな風に、強がったような態度を取ってそっぽを向く
――やっぱり、レイくんとも
そんなことを思って、
そして、二人ともゴミバサミとポリ袋をベンチの近くに置き、
「なんか、こんなとこまで連れてきちゃって何にもお礼なしってのも悪いから、この前のお返しってことで飲み物奢るわ。水でいい?」
「あ、ハイ。
そんな、ほんの六日前に連絡先を交換したばかりの少女がまがりなりにも女の子同士の友達であるかのように気配りをしてくれる様子が、友達の少ない
――この前にレイくんの試合を見に行った市民総合体育館の休憩場で、いきなり後ろから胸を押し付けられたのに驚いててこっちからは文句を言わなかったけど、勝手にボタンを押したこと気にしててくれてたんだ。
――自動販売機でもう一本当たったのを勝手に買われただけだったから、別に僕は損をしてないのに。
――でもなんだかんだで、お返しをしてくれるなんて根はいい子なんだろな、
そして、ペットボトルの蓋を回して取り外したと思ったら、
――あれ? そっちは
――ってことは、もう一本を、僕のために買ってくれるってことかな?
そう
「はい、ワタシは半分飲んだからあとはアンタの分よ」
――え?
すぐ近くに立っている
半分飲み干されて、蓋が開いたままのペットボトルを、何も言えないまま女装ジャージ姿でベンチに座っている
「何よ、不満? この前はアンタが自分のお金で買って偶然当てた分をもう一本貰ったから、ワタシもアンタにあげるのは自分で買った分の半分だけ。公平でしょ?」
――いや、そういう訳じゃなくって。
――これって飲んだら……間接キスって奴じゃ?
――ど、どうしよう!?
ベンチに座っている
「あ、あの……
すると、
「何? もしかしてアンタ、貧しい家の子のワタシが口をつけたもんなんか、ばっちくて飲めないとか言いたいの!? だとしたら思いっきり喧嘩売ってるってことよ!?」
そんな威勢のいい啖呵に、
「え……! いえ!
「じゃあ、つべこべ言わずぐいっと飲みなさい!」
追い詰められて逃げ場のなくなった
そのときだった。
「にゃーん」
どこからともなく、猫の鳴き声がした。
そして、その声の主であるらしい背中はこげ茶色でお腹が白い、二色に毛色が分かれたバイカラーと呼ばれるタイプの柄模様の猫が二人にゆっくりと歩み寄ってきた。首輪もつけていないために、飼い猫ではないことは明白であったが、耳がカットされていないので地域猫であるかどうかはわからなかった。
その、可愛らしい小動物を見て
「キャー! 可愛い猫ちゃん!」
「ほら、ほら♪ おいでおいで♪」
愛らしい猫を目の前にして、先ほどまでに
――女の子って、こんなに切り替え速いもんなの?
そんなことを密かに思いながら
「ほらほら、アンタも手招きして呼びなさいよ! 猫ちゃん、猫ちゃん!」
しかし、猫はなんとなく寄ってこずに
「にゃーん」
その様子に、
「
そうベンチから立ち上がりつつ
二人が猫に対して歩き出すと、猫も再び前を向いて歩き出した。
そして、新品の純白のジャージを着て後頭部にウィッグの黒髪を纏めたお団子を結った
そしてこれが、どのような影響を二人と二人の未来に与えることになるか、その定められた運命がどのように動くことになるかを、この場にいる