王都からルミナスの森へ戻ると、メイドたちが私のもとを訪れて懇願してきたの。
「アリス様、お帰りなさいませ。我々メイド一同、お願いしたいことございますので、お時間を頂けないでしょうか?」
彼女たちから頼みごとなんて滅多にないので、時間をとって内容を聞くことにした。
「構わないよ。ミネバ!」
「はい、アリス様はこれから部屋着に着替えられるので、あなたたちは先にサロンへ向かいなさい」
「「かしこまりました」」
私は着替えなんてどうでも良かったけど、ミネバが納得しないので部屋着に着替えて、サロンへと向かってメイドたちの話を聞く。
「お時間を頂きありがとうございます。転移の扉なのですが、全ての場所へ繋げていただけませんか? 我々メイドはアリス様の居られる場所で、常に身の回りをしたいのです。我儘だと理解していますが、我々を傍に置いて頂けないでしょうか?」
ゼシカたち三姉妹と秘書官であるミネバのように、常に私の傍で働きたいと言ってきた。王都、ユーザニア、ルミナスの森と3つの生活拠点があるけど、転移の扉で繋いでしまえば、全員が私の近くで仕事ができるということだ。
「アリス様、各屋敷の清掃などは当番制にして、常に誰かが常駐して綺麗な状態を維持致します。なので、我々の我儘をお聞き願えないでしょうか?」
シオンを含む全員のメイドたちに頼まれた。おもしろ楽しく生きるのが、私のスタイルでもあるので、メイドたちもおもしろ楽しく過ごして欲しい。なので願いを叶えることにした。
「判ったよ。サロンにある転移の扉に、全ての場所へ自由に行き来できるようにするね」
「「ありがとうございます」」
メイドたちとの話を終えると、サロンにあるダイヤル式転移魔法陣こと転移の扉を、全ての生活拠点へ繋げる作業を開始する。メイドたちは目を輝かせながら作業を見守っていたが、流石に全員の視線が注がれると気になる。
「ずっと見てる感じ? そんなに注目されると気になるんだけど?」
「アリス様が起こされる奇跡の瞬間を、見逃したくないのでご了承ください」
「う〜ん、仕方ないね」
最初はメイドたちだけが見学していたけど、いつの間にか守衛のシェリルたちも見学しにきていた。「気になる」と伝えたけど、メイドたちと同じように「奇跡の瞬間を見届けたい」と言った。こんなの簡単な作業なんだから、奇跡なんて代物じゃないと思うんだけどね。
「こんなの奇跡なんて大袈裟なものじゃないと思うけど、見たいのなら好きにしていいよ」
「「ありがとうございます」」
気づけばゼシカたちまで見学にきていて、従者全員の熱い視線が集まるなか、私は転移魔法陣を繋げる作業を始める。
まずは、ルミナスの森の屋敷、王都の屋敷、ユーザニア市の屋敷へと繋がる転移魔法陣を、サロンにある扉へ刻印をする。次に、ダイヤル式のドアノブを付ければ転移の扉の完成だ。
メイドたちの願いを叶えた結果、事細かな身のサービスを受けれるようになって、至れり尽くせりの快適な生活を送ることになったの。
そんな諸用を済ませてからは、本来の目的である従者たちの装備を作ることにした。そのために遠回をりして、希少鉱石を採取してきのだから、贅を尽くした装備を作ってあげる。だって手元には大量の素材があるんだから、ケチケチする必要なんて全くないからね。
そして、手元にある希少な素材を確認する。
【ミスリル】魔法浸透率は非常に高いが、硬度は10段階のうち6段階目。魔法を活かした攻撃をするのに非常に適している。
【アダマンタイト】魔法浸透率が極端に低く、硬度は10段階のうち最高の10段階目。最高硬度のために加工は非常に難しく、斬れ味を求めるのではなく、打撃特化した武器に向いている。
【ダマスカス】魔法浸透率は低く、硬度は10段階のうち8段階目。高い技術を求められるが加工は可能で、斬れ味に特化した武器に向いてる。
【龍鱗】非常に軽く、物理・魔法防御に優れている。そのままでも防具として使用でき、加工は非常に難しいが繊維にすることも可能。
希少鉱石に関しては一長一短があるけど、合成することで面白い装備ができると思った。