今日から、実質的にグリエル英傑学園での学生ライフが始まることになる。
馬車に乗りグリエル英傑学園の正門に到着して下車する。そこから教室まで徒歩で移動していると、数名の学園生が近付いてきたと思ったら、突然私たちを呼び止めた。
「平民の新入生というのはお前か?」
いきなり人を呼び止めて『お前』呼ばわりにされる筋合いはないので、不思議そうな顔をしながらゼシカに声をかけて、適当にあしらうことにした。
「この中に『お前』なんて者は居ないよね?」
「はい、そのような者は居ませんね」
私とゼシカは生徒の方見ずに否定すると、それが気に入らなかったのか、呼び止めた生徒は顔を真っ赤にしながら怒鳴り散らしてきた。
「煩い! 平民風情が馬車でグリエル英傑学園に登校だと? ふざけるな! 穢れた平民は歩いて東門から来い! 身のほど知らずが!」
元気な生徒だ。朝からこのテンションだと、昼にはもっとやかましいのかな? なんて思っていると、ゼシカが対応してくれ。
「全く意味が判りませんね? 馬車を持っているのに徒歩で通学するのです? 正門から教室へ向かうのが1番早いのに、わざわざ東門を使って遠回りする意味が判りませんね」
「はぁ? 俺達は2年生だぞ! 先輩に対して口答えをするな!」
さらに顔を真っ赤にした生徒は2年生みたい。勝手に怒り狂うのは勝手だけど、私たちに手を上げようとした瞬間、横に控えていたアナがレイピアを抜いて警告をした。
「我が主であるアリス様に向かい、敵意を向けるのであればそれなりの対処しますよ?」
「なっ、平民が貴族に向かって剣を向けるだと? そんな行動を取ればどうなるか判ってるいるのか?」
平民なんて脅せばひれ伏すと思ったのに、レイピアを向けられたことで焦ったのか、声を震わせながらもギリギリ強気な姿勢を保った。
「なんて言ったの? 声を震わせながら話すからさ、なんて言ってるのかよく聞こえないんだけど? まさかビビっちゃってるの?」
私が笑いながら聞き取れないと伝えると、2年生はさらに顔を紅潮させて、テンプレな言葉が飛び出したのだった。
「お前の発言を父上に報告して、その首を刎ねてやるからな!」
「お好きにどうぞ。まぁ、無理だと思うよ? だって返り討ちにしちゃうもんね」
「なっ……」
初日からテンプレイベントで絡まれてウンザリしてると、私たちと2年生の生徒と間に1人の生徒が入ってきて、私たちのことを助けようとしてくれた。
「グリエル英傑学園内では全てに平等だと聞いてるが、グリエル王国の貴族令息たちは、学園の場で親の権威をかざすか?」
「お前、誰に向かって言っるのだ!」
「さぁ? 目の前で騒いでいる小者にかな? 僕はヴァカルディア王国第二王子のアルフォンス.ヴァルカルディアだ」
「なっ……、し、失礼致しました……」
第二王子とか聞いて顔が青くなる2年生たちは、アルフォンスに頭を下げたあと、そそくさと逃げるように校舎へと去って行った。2年生たちの姿が見えなくなると、私の方へ顔を向けて話しかけてきたのだった。