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第34話 自己紹介

 テンプレイベントを終えて、私たちはアルフォンスと一緒に教室へ急ぎ足で向かいながら、他愛のない話をしていたけど、絡んできたバカ貴族の2年生たちとは違って、凄く気さくで話しやすい人格者だった。


 そして教室へ到着して入室すると、先生はまだ来ていなかったので、授業初日からいきなり遅刻という危機だけは回避することができた。


 とりあえず空いてる席に座ろうとすると、突然教室のドアが開いた。


『ガチャ』


 ドアから現れたのは、濃い緑色をした髪と青い瞳に、筋骨隆々の逞しい身体をした男性で、間違いなく私たちの担任なのだろう。私たちが慌てて席に着くのを確認すると口を開いた。


「よし、全員揃っているな。俺はSクラスを担当することになった【ブルース.アーバイン】だ。専攻は武術だが魔術も宮廷魔道士程度なら扱える。先ずはクラスメイトとなる君達の自己紹介をしてもらうからな。では入学試験の首席から順に始めてくれ」


 ブルース先生が自己紹介の順番は、入学試験の首席からだと言うと、1人の生徒が立ち上がって猛然と抗議をしたのだった。


(あれは新入生総代のリオネルだっけ?)


「ちょっと待て! 自己紹介の順番なら新入生総代を務めた我が最初であろう!」


 名ばかりの新入生総代君は、私の方を睨みながら自分が最初だと言い張ったが、ブルース先生はため息を付いてから応えた。


「あん? グリエル王国の第一王子ってことだけで、特別処置で新入生総代になっただけだろ? そもそもお前は九席なのに、どうしてそこまで威張れるんだ? 恥ずかしくないのか? このクラスのルールは担任である俺が決める。自己紹介の順番は首席からだ! 判ったかな」

「ぐっ……」


 ブルース先生の口から、特別処置で新入生総代になったことを暴露され、リオネルの顔が真っ赤になっていた。かなりご立腹のようだ。でも本当のことなので言い返せずに黙っていた。


「では、首席合格のアリスから自己紹介を始めてくれ」

「はい!」


 私は返事をしてから席を立ち、自己紹介のトップバッターを務める。


「アリス.フェリシアと申します。ルミナスの森より参りました。武器は選ばずに全てを扱えます。魔法は闇属性以外の属性の適性があります。私は妖精族フェアリーなので、ヒューマンよりも魔力が多いかも知れません。そんなとこかな?」


『パチパチパチ!』


 本当に簡単に自己紹介を終えると、従者たちが周りが引くほどの拍手をしたので、かなり恥ずかしい思いをした。するとブルース先生はかなり驚いた様子で、私に質問をしてきた。


「えっと、すまん、アリスの種族が妖精族フェアリーと聞こえたんだが?」

「はい、妖精族フェアリーだと言いましたがどうかしましたか?」

「この世界に15人しか存在しない妖精族フェアリーの1人なのか?」


 何を当たり前のことを言ってるの? なんて思いながらも質問に応える。


「それ以外に妖精族フェアリーがないのならそうだと思いますよ?」

「そうか……すまんな。ちなみに妖精族フェアリーの属性がなにかを教えてもらっても良いだろうか?」


 知られても困るものではないけど、そんなことを知ってどうするんだろうと思った。


「はい、ライトニングですよ」

「……メルト全てに光をもたらすと言われ、世界で唯一無二の存在と言われる光妖精族ライトニングフェアリーなのか! どうしてグリエル英傑学園に通うんだ?」

「だって10歳になれば通えるようになったからかな? ねぇ、そんなことは置いといて、他の生徒の自己紹介を続けませんか?」


 ブルース先生が『ぶつぶつ』と呟いて、自己紹介が全然進まないので声をかけると、『はっ』と我に返ったようだ。


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