グリエル英傑学園は知識・武術・魔術の全てが秀でている者しか入学出来ないし、卒業することも出来ないの。
今日は武術と魔術の授業に続いて、知識の授業である魔法理論の授業があるの。私は十傑だから授業の参加は自由なんだけど、せっかくの学生生活なんだし、積極的に授業に参加することにしているの。
屋敷から学園に登校して、馬車が正門に到着したので教室へ向かおうとすると、私のことを待っていたマリアンヌが駆け寄ってきた。
「アリス様、おはようございます」
「うん? おはよう! ねぇ、私たちはクラスメイトなんだから『様』は不要だよ?」
一晩の間に色々と考えたのだと思う。ただ、マリアンヌは私の従者ではなく、学園のクラスメイトなので『様』は不要だと伝えると、首を横に振りながら応えた。
「私はアリス様から教えを請う者です。なので『様』を付けるのは当然だと思います」
「そうなんだ。気持ちの整理がついたのね」
「はい、よろしければアリス様の予定を教えて頂きたいです。もし教えを請う時間があるなら、御屋敷へ伺いたいと思います」
昨日は訪問することを躊躇っていたのに、考えを改めて訪問すると伝えてきた。隣にいたゼシカは満足気な笑みを浮かべていた。
「良いよ。ミネバ、空いてる時間があれば教えてあげてくれる?」
「かしこまりました」
「じゃあ、一緒に教室へ行こうか」
「はい!」
マリアンヌに一緒に教室へと向かうと伝えると、嬉しそうに私たちの輪に加わってきた。平民の私が上位貴族のマリアンヌを連れてる様子を、他のクラスの生徒たちは『嫌悪感』を露わにしながら見ていた。そして、どこからか私を中傷する声が聞こえた。
「はっ、
「誰だ!」
私を誹謗中傷する声が聞こえたことで、ゼシカは周りを見渡しながら声を荒げる。しかし、声を発した生徒は素知らぬフリをして判らなかった。馬鹿な生徒たちの言葉に、いちいち反応していてキリがない。
「ゼシカ、面と向かって言えないようなヤツは、相手にする必要なんてないよ」
「か、かしこまりました」
私は気にする必要はないと伝えて、従者たちとマリアンヌを連れて教室へと向かったの。
§ゼシカ視点§
どこかの馬鹿がアリス様を中傷する言葉を発した。私は
『アリス様を中傷した者は判りましたか?』
『うん、馬鹿そうな5人グループで、マーキングをしておいたよ』
『ありがとう。休憩の時に粛清するので、その時は馬鹿の居場所を教えて欲しい』
『OK! ちゃんと後悔させてよ? ボクたちは怒ってるんだからね』
『当然でしょう。ウッカリ殺さないようにだけ気をつけるわ。
この日、学園内で5人の生徒が階段を踏み外し、大怪我を負う事故が発生したのだった。
この事故は、ゼシカの暗躍によるものだとは、決してアリスの耳に届くことはなかった。