私たちは授業が始まるまでは、席について雑談を楽しんでいた。
『ガラガラ』
教室のドアが開くと、グレイヘアーの小柄な女性が入室してくると、ゆっくりとした歩様で教壇に立った。
「みなさんお待たせです。魔法理論を担当する【メグ.ハートフィールド】てす。みなさんが使ってる魔術は魔法理論により発動しているのです。現在使われている魔術の全て魔法理論が確立された物ばかりです。魔法理論さえ構築できれば、新たな魔術を発動させることが可能となるのです」
「「はい」」
うん、当たり前のことを言ってるね。私の使う複合魔法も、魔術理論を組み合わせているだけだだ。要は魔法書に記載されている魔法理論を理解すれば、魔術の発動なんて簡単にできるからね。
でも、周りの生徒たちの反応は全く違っていて、『キラキラ』と目を輝かせる者や、大きく頷きながらメモを取る者がいた。
その後もハートフィールド先生の授業は続いて、当たり前のことを言っていたけど、その内容はとても判りやすいものだ。
「流石は【智の巨人】と言われているハートフィールド先生だ。魔術と魔法理論の関係性を的確に説明されている」
「ハートフィールド先生なら、現存する魔術以外の新魔術と、その魔法理論を開発させるのでしょうね」
生徒たちは尊敬の眼差しを送りながら、メグ先生のことを称える声が聞こえていた。まだ学生だから仕方ないんだけど、自分で魔法理論を考えようとしないんだね。私なんて色々なことを考えて、たくさんの魔法理論を構築しちゃったけどね。
私は普段使いしている複合魔法が、魔法理論として成り立っているのか確認してもらおうと思った。智の巨人と言われるハートフィールド先生が、私の魔法理論にどんな反応するのか見てみたいからね。
私が手を挙げると、ハートフィールド先生が頷いたので、席を立って質問をする。
「あの、土魔法で発動させた鉄槍の魔術に、雷を纏わせるという複合魔法は、魔法理論として成り立つのでしょうか?」
「はい、魔法理論としては成り立つと思います。ただ、土魔法から鉄を発現させることはかなり難しいのですね。さらに雷を纏わせると言いましたが、雷の適性者なんてこの世に存在してないはずです。でも、その面白い発想力は素晴らしいですよ」
うん、魔法理論は正しいけど難しいらしい。雷に関しては唯一スキルだから、私以外は使えないから仕方ないね。魔法理論の先生だけあって、私の理論に興味を示したので、複合魔法を見せてあげることにした。
「先生、私の魔法理論で作った魔法を見せてあげるね」
「えっ?」
そう伝えると、私は土魔法の魔術で鉄槍を発現させる。次に鉄槍に雷を纏わせて帯電させると、複合魔法の魔術である
「そ、それが、複合魔法なのですか?」
冷静なハートフィールド先生が目を見開いている。そこまで驚くようなことなのかな?
「うん、鉄と雷という2つの要素を兼ね備えた複合魔法だよ」
「あ、貴女は……それの魔法理論を誰から教わったのですか?」
披露した
「愚問ですね。アリス様は誰からも教わるようなことは致しません。全てご自分の知識で魔法理論を構築されたのです!」
「そんな、10歳の少女が1人で? 貴女の魔法理論は、私より遥か先へと進んでいるのです。アリス様どうか私の師となり、この不出来な弟子にご指導してください」
えっと、複合魔法なんて見せなければ良かった……。隣の従者たちは『うんうん』と頷いて納得したようだけど、相手が学園の教師だと理解して欲しい。たくさんのクラスメイトたちの前ということもあって、申し出を断ることができるわけもなく、この日より【智の巨人 ハートフィールド】は私の弟子になったの。