我の知らぬ間に、七神女神たちへの信仰心がこれほど絶大になっているとは、正直に驚くしかなかった。小娘の拒絶の効果が切れたとはいえ、簡単に信徒を増やすことはできないだろう。片田舎で小さな問題を発生させて、少しずつ信徒を増やすしかなさそうだ。
そして、我は大都市から離れた片田舎で、小さな問題を起こし続けることを開始する。
小規模な自然災害を繰り返し起こすことで、七神女神へ祈っても無駄だと擦り込んでいく。信仰が揺らいでくれれば、取り込むことが可能になるからだ。そんな地味な作業を続けていると、遂にその時がやって来たのだ。
「毎日のように祈りを捧げてるのに、女神様たちは何もしてくれないじゃないか!」
「これは試練なんだよ。さらなる信仰を捧げれば、きっと事態は好転するからさ、もう少し頑張ろうぜ?」
「俺は抜けるぜ! お前たちの信仰で状況が好転したら、その時は女神への信仰を再開してやるよ。じゃあな!」
「「おい!」」
1人の男が女神への不満を口にした。周りの者は説き伏せようとしたが、聞く耳を貸さずにその場を去っていったのだ。
これは千載一遇の大チャンスだ。絶対にあの者を我が信徒にすると心に決め、すぐに接触して行動に移す。
男が家に戻り寝付くのを待って、我は女神に相反する存在である邪神として、その者の潜在意識に語りかけたのだ。
「我は邪神ジャミル。女神の力では何も変わらぬぞ? 我を信じ信仰すれば、お前の畑は豊作となるだろう。我は集落の外れの洞穴に居る。明日より3日間我に祈りを捧げてみよ! 女神で起こせぬ奇跡を授けてやろうぞ」
そして翌朝になり、男は我の言葉通りに洞穴にやって来た。黒く輝く石を見つけると我に祈りを捧げたのだった。男は我の言葉に従い3日の間祈りを捧げたので、我の力により男の畑だけは周りと見違えるように作物が実り始めたのだった。
「おい、お前たち! 信じる神を間違っているぞ? 信じるべきは七神女神ではなく邪神ジャミア様だ。俺はジャミア様に祈りを捧げ続けた結果、畑の作物は青々と実り出したんだ。嘘だと思うなら俺の畑を見に来いよ!」
その後、集落の住民たちは男の畑を見て、七神女神ではなく邪神ジャミアを信仰するようになった。取るに足らない小さな集落から邪神徒が生まれた。アリス達が過ごすグリエル王国の王都まで、邪神教の影響が及ぶまでさほど時間は掛からないのだった。