目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第60話 教師兼従者

 Sクラスの生徒は、その身分に関係なく食堂の個室を与えられる。私たち4人の個室は横並びになっていたので、私の〚万物創成〛で1つ部屋に纏めて、さらに転移の扉を設置したことで、食事はシオンたちが用意してくれた物を、個室へ運んで食べているの。


「うちの料理って凄く美味しいよね。申し訳ないけど食堂で提供されるものは、食べたいと思わないよ」


 料理がとても美味しいので、そのことを絶賛すると、シオンが料理の美味しさの秘密を教えてくれた。


「料理に使ってる食材は、全てルミナスの森で収穫したものを使ってます。最高の食材を最高の料理人であるシュレが、心を込めて調理をしてますからね。アリス様からのお褒めの言葉を伝えれば、きっと喜ぶと思いますよ。屋敷に戻った時は、シュレにお伝え下さい」

「うん、そうするよ」


 シオンの説明のあとも、美味しい食事を堪能していると、『コンコン』とドアをノックする音がしたので、ミネバが対応してくれた。


「どちら様でしょうか?」

「アリス様の弟子となりましたメグです」


 うん、ハートフィールド先生が押しかけてきたよ……。取り敢えず入れない訳にはいかないので、個室への入室を認める。


「アリス様、ありがとうござ……い……ますぅ! あの〜……、この部屋はいったいどうなってるのですか?」


 ハートフィールド先生は、個室へ入るなり小さな部屋ではなく、大きな部屋になっていることに驚いた。勝手に部屋を改造したのは不味かったかな?


「あぁ、4人の個室を1つにしちゃったんだけど、勝手に改造したのは不味いですか?」

「えっと……、そんな規定はありませんので大丈夫ですが、どのようなことをすればこのようになるのですか?」

「あぁ、私のスキル〚万物創成〛を使えば、思い通りの部屋が作れるんですよ」

「ははっ、アリス様の傍にいれば、このような奇跡を常に見れるのでしょうか?」


 ハートフィールド先生は、少し呆れるような表情で奇跡を見れるのか? なんて聞いてきたけど、私の中ではごく普通のことだと思っていると、ゼシカが席を立って応える。


「当然です! アリス様の存在こそが奇跡なのですから、この程度は日常茶飯事です」


 ゼシカが胸をはって自慢気に話すと、ハートフィールド先生は両膝をついて、神に祈るような姿勢で私に向かって懇願する。


「私は末端でも構いません。どうかアリス様の配下に加えて頂けませんか?」


 智の巨人と言われるハートフィールド先生が、従者になりたいと申し出てきた。ただ、グリエル王国に属する教師を従者にして良いものなのかと悩む。


「えっと、先生はグリエル英傑学園の教師でしょ? それが私の従者になるって、流石に無理があるんじゃない?」

「グリエル王国に籍を置くことが問題になるのなら抜けます。私は魔法理論を探求し続けたいのです」


 かなりの覚悟持って従者になりたいと言うので、私としてはアリだと思うけど、筆頭従者であるゼシカに意見を聞いてみた。


「ねぇ、ゼシカはどう思う?」

「構わないかと思います。優秀な人材なのは確かですから、ルミナスの森で学校を作る時には、必ず役立つものだと思います」

「あぁ、そうだね! 主従契約しちゃおう」

「ありがとうございます」


 私は〚天眼〛を使って、ハートフィールド先生の胸元に主従刻印紋を刻むと、教師兼従者としてメグを迎えたの。



この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?