ちょっとしたハプニングはあったけど、昼食を終えたので個室を出たあとは、メグと別れて別行動となる。
午後の授業は自習なので、マリアンヌたちに魔力操作のコツを教える約束をしている。私と従者たちは演習場へ向かおうとすると、マリアンヌが待っていたので、一緒に移動することになった。みんなで会話を楽しみながら歩いていると、あまり聞きたくない声に呼び止められ、一気にテンションが下がる。
「おい、アリス! どこへ行くのだ!」
「どこって……、それをリオネルに説明する必要ってあるの?」
本当にどうでもいいと思っているので、冷たくあしらってその場を離れようとすると、取り巻きが私の行く手を阻むので、強制的に歩むのを止められた。当然だけど『イラッ』としてるのにも関わらず、リオネルはそんなことを気にすることなく話し続ける。
「我が聞いているのだ。お前はどこへ行くのか答えれば良いのだ」
「そうです。殿下が聞かれたのだから、お前には答える義務があるのです」
相手のことを考えずに勝手に絡んでくる、リオネルとその取り巻きたちのことを、心の底から面倒だと思っていると、マリアンヌがため息をつきながらリオネルとの間に入ってくれた。
「殿下、ここはグリエル英傑学園内です。そして私たちはSクラスのクラスメイトなのです。命令口調で話しかけるのではなく、友人と話すような雰囲気で話さないと、アリス様の殿下に対する印象が悪くなりますよ?」
「なっ……、我は誰にでもこの口調なのだ!」
「ては、本日から友人に対する話し方を改める努力を致しましょう。私たちはこれから演習場に向かうところです。午後の自習時間は、アリス様から魔力操作のコツを教えてもらう予定なので、殿下も一緒に来て学びますか?」
リオネルの機嫌を損ねることなく、無難な対応するマリアンヌ。この対応は貴族令嬢であるからこそできる技なんだろうね。親しくなって良かったと思っていると、リオネルはご機嫌な様子で返事をする。
「うむ、お前たちがどうしてもと言うのなら、我も行ってやらなくもない」
私は心の中で『来るな!』と呟いていたけど、この状況ではそんなことは口に出せないので、マリアンヌに丸投げした。
「はい、魔力操作のコツと一緒に、友人との話し方も学ばれるということで、よろしいでしょうか?」
「うむ」
「では、一緒に演習場へ参りましょうか」
「うむ」
マリアンヌの見事な対応により、リオネルをコントロールしてくれた。そのことを感謝しながら演習場を目指すと、既にマルクセスとアルフォンスの2人は待っていたようで、リオネルが一緒にやって来るのを見て、かなり驚いた様子だった。
(まぁ、普通は驚くよね。だって、マリアンヌが居なければ〚拒絶〛を使って回避してたと思うもん……)