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第23話 アリスとサツキ

 目の前が真っ暗になると、突然浮遊感に包まれ『ふわふわ』と身を任せることしかできなかった。時間の経過などは全く判らずに暗闇の中を彷徨っていると、呪魂の首輪に生命の全てを奪われ、このまま死を待つのみなのかと思った。


(邪神ジャミアか……、七神女神様の加護を打ち消すなんて、とんでもない神が居たんだね……。後のことは七神女神様たちに任せるしかないか……)


 もう反撃することすらできず、アリスとしての生涯は終わった。邪神は七神女神様に任せようなんて思っていると、『……さん、……諦めないで、……なの』どこからか女性が聞こえてきた。何も見えない暗闇の中で、声がする方向へ視線を向けるが何も見えない。だけど薄っすらとしか聞こえなかった女性の声が、今度は鮮明に聞こえてきた。


『アリスさん、あなたが最後の希望なの諦めないで、ジャミアを倒せるのはあなただけなの』

「あなたは誰? 私に対抗する術は残ってないよ? このまま暗闇を彷徨うことしかできないもん」

『あなたには拒絶があるわ。その力だけがジャミアに対抗できる唯一の力なの。その力は邪神の呪魂すら拒絶することができるのよ』


 謎の女性の声は拒絶だけが邪神ジャミアに対抗する力だと言う。確かに拒絶は唯一スキルの更に上を行く神話級スキルだから、相手が神であっても対抗することができるのかも知れないと思えた。ただ、今の状況で拒絶を使えるのかというと、かなり懐疑的な状況だ。理由は呪魂の首輪によって行動を阻害されているからで、謎の女性に現状から抜け出せるのかを確認をしてみる。


「拒絶を唱えれば、この暗闇の状況から抜け出せるのね?」

『そうよ。でも、その前に私の話を聞いて欲しいの。この世界に私がどう関わったのかを聞いた結果、あなたが感じたままに行動をして欲しいの。決して私への情に流されずに、あなたが感じた想いで行動すると約束をしてくれる?』

「私の想い……」

『そう、あなたにはこれからの世界の行く末を決める権利があるの。あなたの想うままの世界を目指して欲しいの』


 私に世界の行く末を決める権利があるなんて言われても、全く意味が判らなかった。それでも彼女の言葉には根拠はないけど信じるに値すると思えた。だから自分の心を信じて話を聞くことにした。


「うん、私の想ったままに行動するから、あなたとこの世界のことを聞かせて」

『ありがとう。私はサツキ。あなたの前世と同じ世界で有馬皐月という1人の人間を、強制的にこの世界へ3人のサツキとして異世界召喚されたの……』


 私はサツキさんから、強制的に1人の魂を3人のサツキさんに分割して、異世界召喚するなどという信じられないような話を聞かされた。そして、私が転生することでサツキさんは役目を終え、光樹に封印されていた拒絶の力を引き継いだことを知ったのだった。



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