「今日の授業は魔法実験です。この実験は魔法の威力や効果範囲などを調べるための授業。皆、心して取り組むように」
教師がそう言うと、クラスの皆は大騒ぎでグループを作っていく。
「アデル様! 私と組んで下さい!」
「私魔法が得意ですのでアリス様と!」
「私はセシル様と組みたい!」
貴族達はクラスの中心人物であるアデルとアリスに我先にと集まる。
「やっぱり俺は悪名が高いから誰も来ないか……」
俺が少し落ち込んでいると、後ろから肩を叩かれる。
「ロラン師匠の人気がなくて良かったです! 私が独り占めできちゃうので」
「ロランお兄様、私も嬉しいです」
リアは俺に抱きつき、クレハはそんなリアに対抗心を燃やして俺の腕に抱きつく。
そんな俺達を見て、アデルが嫉妬深い目をしている。
俺はアデルから目を逸らし、魔法実験が行われる場所に移動するのだった。
★
「今回の実験は中級魔法のファイヤーボールを練習してもらいます。この魔法は得意な者と不得意な者で差が大きく現れますので、上手くいかない方も諦めずに取り組んでください」
教師がそう説明を始めると、的のような物が運ばれてくる。
「あちらの的にファイヤーボールを撃ってもらいます。あの中央にある的に複数当たった者は合格とします。ですので諦めずに頑張りましょう」
教師の説明が終わると、皆一斉に的に向かって魔法を撃ち始める。
「さて、やってみるか」
俺は的に向かって手をかざし、ファイヤーボールのイメージを浮かべる。
そして魔力が手に集中し、ファイヤーボールの形に変換されていく。
そしてファイヤーボールを的に向かって放つと……。
バシュッ! という音と共に、ファイヤーボールが的に命中する。
「あ、やべ」
的を見ると、既に無残な姿になっていてボロボロになっている。
俺は頭を掻きながら恐る恐る周りを見渡すと、貴族達は顔を引き攣らせている。
(え? もう終わったの?)
(てか威力、強すぎじゃね?)
(一撃でボロボロとか……化けもんじゃん)
「ロランお兄様、流石です! コントロールも完璧ですね!」
リアが目をキラキラさせながら、俺に抱きついて言ってくる。
俺はそんなリアの頭を撫でながら、クレハ様子を伺うと……。
《ファイアボール》
クレハのファイヤーボールは的に当たってはいるんだが、威力が足りず、少し焦げた程度だ。
「くっ、どうして」
クレハは悔しそうな表情を浮かべながら、何度も魔法を撃ち続ける。
「クレハ、もしかして緊張しているのか?」
俺はクレハにそう問いかけるが、クレハは首を横に振って否定する。
だが明らかに動揺している様子だ。
俺はそんなクレハに近づき、優しく言う。
「深呼吸して心を落ち着かせろ、そうすればきっと上手くいく」
俺がそう言うとクレハは俺の言う通りに深呼吸をする。
そしてクレハは真剣な眼差しで的を見つめ、もう一度魔法を撃ち込む。
《ファイアボール》
するとクレハのファイヤーボールは、先程よりも威力が上がり的を焼き尽くした。
「で、できた!」
クレハは嬉しそうに言う。
「少し肩の力が入ってたみたいだな、落ち着いて魔法を撃てばクレハも出来るようになるさ」
「ありがとうございます、ロラン師匠」
クレハは俺に微笑むと、抱きついてくる。
少し周りからの視線感じてしまい、俺は照れながらもクレハを撫でるのだった。
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