「ジュリウス様、どうでしたか? 島に向かった者達からの報告は」
窓を開けたら魔法の伝書鳥が飛んできた。
巻物型の文書を確認したジュリウス様が口を開いた。
「現場に着いた一行により、転移陣が設置されたから、取りに行くしかないな」
「では物はあったと言う事ですね! 私のあの魔法の収納があれば解決しますし、あそこに入れてしまえば物資が配送途中で狙われることもありません」
私はパンと手を叩いてジュリウス様を見つめた。
「セシーリア、意気揚々としているが、やはり直接行くつもりなのだな?」
ジュリウス様に何故か渋い顔をされている。
「効率や安全を考えたら、私が行くのが一番ですよね」
「自分も狙われている存在だという事は忘れてないだろうな?」
「は、はい、それはもう!」
私は神妙な顔をして答えた。
「それと、冬の島は冷たい海風が吹くぞ、体が弱いのに大丈夫か?」
うっ!!
「それにつきましては、魔法使いが寒さ対策の結界を張ってくれるとのことです」
カダフィードの騎士が助け舟を出してくれた。
「まあ! それは助かるわ!」
「なら、いい、転移スクロールで速やかに移動するゆえ、今回は私が同行する」
ジュリウス様が腰の剣を一度抜きはなって、その刀身の煌めきを確認されながら語った。
「よ、よろしいのですか? ここを留守にされて」
「甘すぎる騎士達のみにそなたを任せるよりは自分で行った方が安心できる」
カダフィードの騎士はバツの悪そうな顔をしていたが、反論はしない。
そして私はふと、連れてきた少年のことが気になった。
「分かりました、ところであの詐欺を働いた男の息子は?」
私は一旦処遇を保留していた少年のことや詐欺師達のことをジュリウス様に任せたのだ。
「契約魔術で縛ったから、カダフィードには永遠に……死んでも反目出来ないゆえ、掃除などの下働きで雇うことにした」
わざわざ契約魔術を……でも確かに親の事で逆恨みして厄介なことになるよりは安全……。
「なるほど、少年はこちらで使うのですね」
「サメの餌にするよりよかろう」
「はい」
「なお、詐欺師の男は鉱山送り、妊婦と若い娘は島にある修道院送りだ」
島の修道院は実質島流しに近いし、外部との接触が絶たれるから、悪さも出来ないし、妥当な判決だと思った。
そうして私達は少年は実際には島に連れては行かず、例の島に転移スクロールで飛ぶことに決定したけれど、その前に私は一旦自室へ戻り、ドレスから動きやすい乗馬服のようなパンツスタイルに着替え、これに毛皮のコートを追加した。
◆ ◆ ◆
我々は魔法使いを伴って夕刻にはゲルン島に到着した。 地面に魔法陣の描かれた布が置いてあり、場所はジャングルの中の洞窟前だった。
そして魔法使いが冬の冷たい風を魔法使いが遮断するように結界を張ってくれた。
寒風を吸い込むと、私が咳き込むから助かる。
「着いた」
「閣下、奥様、例の物はこの洞窟内にありましたので、ご案内致します」
騎士その1がそう言って先頭を歩き、次に騎士その2が補足説明をくれた。
「その洞窟、元は海賊の根城に使われていたようです」
「どおりで……島の規模に対してなかなか立派な洞窟なんですね、大量の武器防具を隠しておけるのなら……」
私達は島の中にある洞窟内に足を運んだ。
魔法のランタンが暗い洞窟の内部を照らしてくれているけど、やはり不気味。その辺に何かの骨らしきものも転がっている。
「セシーリア、足元に気を付けるんだぞ」
「はい、ところで……ここは洞窟ですし、コウモリとかがいそうですね……」
私はこわごわとしながら前を歩くジュリウス様のマントの裾を掴んでビビリながら進んでる。
「セシーリア様、洞窟内にいたコウモリの群れならば我々が先行して明かりを灯して入った時に一斉に飛んで行きましたよ」
「そ、そうなのね! 良かったわ!」
「怖いなら留守番をすればよかったのにな」
ジュリウス様が、意地悪を言う。
「魔法の収納鍵の所有者が私になってしまっているのでそうもいきません!」
首から下げている魔法の鍵を握りしめて私が言った、その時に、
「ありました、あそこです」
と、騎士に声をかけられた。