俺は洞窟の入り口付近で炎系魔法で薪に火を着けた。
案の定、洞窟から蝙蝠の大群が出てきて、ハッテンベルガーが俺の背中に隠れて絶叫してた。
ニールが自分を盾にしていいと言っていたのに、何故か俺の方に来てた。
俺の背中のとこで頭を抱えて丸くなってるのは俺の方が交流もそこそこあって慣れてるからか?
「おい、蝙蝠は飛んで行ったぞ! ハッテンベルガー」
「うぅ~、まだ鼻もすすってないのに……」
「煙が出たから仕方ないな」
「すみません、僕、なにも出来ずに」
「ニールはなにも悪くないぞ、ところで食事の用意だ、各自持ってるものを言え」
「わ、私は学園近くの畑で野菜を育ててるおばあちゃんから貰った玉ねぎ3個と水です」
「僕は鍋と調味料と短剣です」
二人共、リュックから持参したサバイバルグッズを出してくる。火魔法を使えないなら俺は火打ち石とかも持って来てただろうが、今回はナイフとチャーシューを詰め込んだ飯盒と袋入りの米を出した。
「お、三人のを合わせればなかなか使えそうだな! 俺はチャーシューと米と飯盒」
「コメ? 瓶に願いを託さなくても持ってるじゃないですか」
「これよりもっと美味い米を求めてる」
「な、なるほど、よほど味に納得いってないんですね」
「左様、俺の理想は高い、米には理想がある」
「ところで、パイセン、この組み合わせとなれば」
「チャーシューと玉ねぎあるし、炒飯かな」
俺は話しつつもハッテンベルガーからナイフと玉ねぎを受け取り、ニールからは鍋と調味料を受け取った。
「チャーハン?」
「ニールは炒飯は初めてかもしれんな、まあ、見てろ」
「パイセン、まな板はどうします?」
「石って割れるんだよ、石をぶつけると」
「はい?」
流石のハッテンベルガーも女子なのでそんな遊びは日本でもやってなかったらしく、首を傾げた。
「川とかに行った時、石と石をぶつける遊びがあってな、それが綺麗な断面になる」
「ええー?」
半笑いでまだ疑ってるハッテンベルガー。
俺はその辺にある大きめの石を拾って違う石を実際に打ちつけて見せると、石は見事に平な断面を晒してくれた。
「こ、こんなに綺麗に割れるもんなんですね」
「おお、凄いです! レジェス先輩、これ面白いです」
ニールが少年らしい瞳をかがやかせた。
「ああ、今度石の多いとこでやるといい」
「これはかなりまな板ですよ!」
ハッテンベルガーはこのセリフを言うと俺は思った。日本で同じ番組を観たことがあるんだな。
「そう、この石をまな板が代わりにして玉ねぎを刻む」
「はい!」
「玉ねぎ切る係をやるか? ハッテンベルガー」
俺は一応いいとこ見せられるチャンスだとハッテンベルガーに聞いてはみたが、
「やってもいいですけど号泣しますよ! 私は玉ねぎに弱い!」
堂々と弱点をさらすハッテンベルガー。
「弱いのに玉ねぎ持ってきたのか」
「おばあちゃんが親切にもくれたので……ただ食材に弱くて」
「分かった、俺がやる」
「レジェス先輩、僕がやってもいいですよ」
「いや、炒飯は作り方を知っている俺がやった方が早そうだが、ハッテンベルガーは飯盒と水と米で米を炊くことくらいはできるか?」
「はい! それくらいならばお任せを!」
「なら、任せた」
「先輩、僕は何をすれば」
「そこから動かなくてもいいから外の警戒、魔物や獣が出ないか」
「わかりました!」
そうしてニールが洞窟の入り口で仁王立ちしてる背後で俺達は炒飯を作る為に料理をした。
ハッテンベルガーが米を炊き、俺は炒飯を作った。
鍋でチャーシューと米を炒めた。
ジュージューという美味そうな音を立ててると、かなりお腹がすいてきた。
「食欲をそそる匂いがしますね!」
「ああ、音もな」
そして炒飯が完成し、実食の時。
「これは……美味いですね!」
ニールも初めての炒飯だったが、持参したスプーンで美味そうに食ってる。
「流石パイセン! 炒飯もお上手で美味しいです!」
ハッテンベルガーは小枝で作った箸を持参してた。俺はマイ箸を持っていたのでそれで食う。
「二人とも、口に合ったみたいで良かったよ」
とりあえず美味しく腹ごしらえが完了し、炊いた米は飯盒一つ分なので米の量は多くはなかったか、味的には俺達は満足し、明日動くエネルギーはなんとか確保できたと言える。
「あとは寝床として布を敷いて寝るか……女子のハッテンベルガーを守るように真ん中にするか?」
「だめですよ! 私はそこに挟まる訳にはいかないのです! 守ろうとして言ってくださったのはありがたいのですが、 私は寝ずの番をしますゆえ!」
「……普通見張りは交代制だろ、2時間半おきくらいでいいか?」
「僕はそれで大丈夫です」
「えーと……わかりましたー」
なんで少しガッカリしてんだ、ハッテンベルガー、寝ずの番がしたいのか?