洞窟の中で三人で一晩過ごした。何故か寝る時、俺が真ん中になってしまった。
「一番身分の、高い人を真ん中にすべきです、つまりパイセンです!」
「おかしくないか? 普通一番か弱い女性を真ん中に」
「いや、しかし先輩、彼女、男に囲まれるのも嫌かもしれませんし」
「まぁ、そう言われてしまうと……気になるか」
「私は真ん中は絶対に拒否しますので。」
ハッテンベルガーは、頑固に真ん中を拒んでいる。
「……いいよ、わかった。どのみち見張りはいるから、誰か起きてるよな。まずお前達、先に寝るか?」
「私は後で起こされるより、最初に起きていたいです」
「そうか、じゃあ2時間後に起こしてくれ」
「じゃあ、僕は最後で」
「はーい、お二人とも、お休みなさい」
パチパチという、焚き火の音を聞きながら俺とニールは先に寝た。
──3時間経過。
「……んん? 2時間で起こせって言ったのに、3時間も経ってるぞ、ハッテンベルガー?」
「大丈夫です、お二人の寝顔が美し過ぎて……いえ、寝こけてたわけではなく、ちゃんと起きてましたし、見張りやってました。 ジフンまだいけるって思っただけで」
こいつ……俺達の寝顔を眺めてたのか? 外敵の警戒をすべきなのに。
「まったく、仕方ないやつだな。もういい、お前は早く寝ろ」
「ウス」
全く女らしくない返事をして横になったハッテンベルガー。
「……」
俺は洞窟の入り口までそっと歩いて行った。
木々の隙間から綺麗な星空が見えた。
時折野生動物の声らしきものは遠くから聞こえるけれど、特に魔獣の攻撃もなく終わった。
ハッテンベルガーが3時間も頑張ったので、2時間ではなく3時間交代にすべきかな。と思ったので3時間後にニールを起こし、事情を説明して交代したが、また仮眠を取ったがやはり朝まで何事もなく過ごせた。
「おはようございます、先輩」
ニールが爽やかな笑顔で起こしてくれた。
「おはようニール。ハッテンベルガー、朝だぞ」
寝ているハッテンベルガーに俺は声をかけた。
「……んん? はっ! 朝!?」
ちょっとだけ垂れてた口元のヨダレを拭うハッテンベルガーは、ちょっと抜けててかわいい気がしてる……が、気の所為かもしれない。
「お前達、朝飯を探しに行くぞ、念の為に荷物は持っておけ」
「ふぁい」
気の抜けた返事をするハッテンベルガーと、
「はい!」
爽やかイケメンなニールのこの対比よ。
「あ、あそこにフルーツがある、しかもパパイヤに似てるぞ」
しかも鈴なりだ、かなり高い位置にあるが10個以上実ってるように見える。
「先輩、じゃああれを取ってみますか?」
「とうっ!!」
俺はニールに返事をする前に身体強化の魔法を使い、大ジャンプして果物を一つもぎ取った。
「先輩、すさまじい跳躍力ですね!」
「身体強化の魔法をかけてるからな」
「わー、パイセン、チートですねぇ」
「なんとでも言え、さて、あと二つ!!」
俺は後2回ジャンプして二人の分の果物もゲットし、一人1個ずつ分けられるようにした。
「先輩、素晴らしいジャンプでした」
「後は……お、」
俺は新たな獲物を視界に捕らえた。そしてパパイヤを一旦地面に置き、 そのへんに落ちてた石を拾い、木の枝に止まっていた鳥に投げて命中させた。俺が見つけたのはキジに似た鳥だ。
「すまんな、食べられそうな鳥だったから、こいつに朝飯になってもらおう」
俺は地面に落ちた鳥に謝罪しつつも回収した。
「パイセン、メニューは焼き鳥でしょうか?」
ハッテンベルガーがウキウキした顔で訊いてきた。
「ああ、貴重なタンパク源だし、きっちり火は通さないとな」
「流石先輩、判断が早い」
俺の働きに、わざわざ拍手をしてくれるニール。
「まぁな。ところで雨も止んでるし、焼き鳥とデザートの木の実は海岸で食うか?」
「「そうですね!」」
意見は一致したようなので、俺達は海岸へ向かった。