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第七話 都への道

意識が戻ると、宗則は、見慣れない天井を見上げていた。

簡素ながらも清潔な部屋。

窓の外からは、小鳥のさえずりが聞こえてくる。


「…ここは……?」


宗則は、ゆっくりと身体を起こした。

その時、彼の身体の芯に、今まで感じたことのない疲労感を感じた。

まるで、全身の力が抜け落ちてしまったかのようだった。


(…あれから…どれくらい…経ったのだろうか…?)


宗則は、ぼんやりとした頭で、記憶を辿ろうとした。

野盗の襲来、村人たちを守るための結界、そして…八咫烏の言葉…。


(…私は…剣の試練を…乗り越えた…)


宗則は、自らの成長を、実感していた。

力の使い方、そして、その力に潜む危険性…。

彼は、白雲斎と八咫烏の言葉を、改めて噛み締めていた。


(…私は…この力を…正しく…使わなければならない…人々を守るために…!)


宗則は、新たな決意を胸に、拳を握りしめた。


「お侍様、目を覚まされたか。良かった…」


老女の声に、宗則は、我に返った。

彼の傍らには、村長の妻が、安堵の表情を浮かべて座っていた。


「…どれくらい、眠っていたのですか?」


宗則は、かすれた声で尋ねた。


「三日三晩、眠っておられた。心配しておったんじゃよ」


「三日三晩……!?」


宗則は、驚いた。

彼は、結界を張った後、意識を失ったことしか覚えていなかった。


「お侍様は、野盗たちを追い払ってくださった後、倒れてしまってな…村人みんなで、お侍様をここに運んだんじゃ」


老女は、宗則に、温かい粥を差し出した。


「…ありがとうございます」


宗則は、粥を一口食べると、力が湧いてくるのを感じた。


「…村は…?」


宗則は、村の様子が気になった。


「心配いりませぬ。野盗たちは、二度と、この村には近づかんじゃろう」


老女は、自信を持って言った。


「お侍様が張ってくださった結界のおかげじゃ。あれ以来、野盗たちの気配は、全く感じられん」


宗則は、安堵の息を吐いた。

彼は、自らの力で、村人たちを守ることができたのだ。


「…ところで、お侍様は、どちらへお出かけだったのですか?」


老女が尋ねた。


「私は……京の都へ…」


宗則は、白雲斎から託された紹介状を、懐から取り出した。


「京の都……ですか」


老女は、少し寂しそうな表情を浮かべた。


「…遠い道のりじゃ。くれぐれも、気をつけるんじゃぞ」


「はい…ありがとうございます」


宗則は、老女に深々と頭を下げた。


宗則は、数日後、村人たちの見送りを受け、再び京の都を目指して歩き始めた。


村人たちは、宗則に、感謝の言葉を述べ、深々と頭を下げた。


「…お侍様…本当に…ありがとうございました…!」


「…どうか…お気をつけて…」


宗則は、村人たちの笑顔を見て、心が温かくなるのを感じた。

彼は、村人たちと別れるのが、少し寂しかった。


(…私は…必ず…陰陽師として…この世の闇を打ち払う…そして…人々を苦しみから救う…それが…私の使命だ…)


宗則は、朝日が昇る東の空を見つめ、静かに呟いた。


その時、彼の耳に、かすかに、八咫烏の声が聞こえた気がした。


「…その道を…進め…宗則…わしは…いつも…お前のそばにいる…」


宗則は、心の中で、八咫烏に語りかけた。


(…八咫烏様…私は…必ず…試練を…乗り越えてみせます…!)


宗則は、京の都を目指して、歩き始めた。

彼の心には、期待と不安が入り混じっていた。

都では、彼を待ち受ける運命、そして、新たな出会い…。


やがて、彼の目の前に、巨大な城壁が見えてきた。

それは、京の都を取り囲む、巨大な壁だった。

城壁の向こうには、どんな世界が広がっているのだろうか?


宗則は、息を呑んだ。


(続く)

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