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第39話 立川チョーチューのファンとユン その6

番長グループが「どこ中」出身か名乗らないので、ユンたちはこの集団が二中の番長グループだと勘違いしていた。

だが、この決闘に、そのような自己紹介はもう必要なかった。


ユンたちが二中に乗り込んでから早30分。

盛岡、山本に続き、ユンとファンに番長連合のメンバーは次々と倒されていった。

その人数は、計7人。

7人の内訳は、立川中学の各番長だけでなく副番であり、それらの喧嘩自慢がノックアウトまたは「まいった」と言って、2人にイモを引く事態になっていた。

7人だけでなく、残りの立川中学番長連合の8人も完全にびびり始めていた。

衝撃を与えたのは番長連合の15名だけではなかった。

ユンとファンの喧嘩強さに、この戦いを眺めていた校内の生徒たちや教師も朝鮮中学から乗り込んできた2人を応援するようになっていた。


「いいぞー!朝鮮!」


誰か男の学生らしき声が校舎内から聞こえてきた。


「誰だ今言ったやつは!?」


二中の番長・馬淵が校舎に向かって大声で叫ぶ。

それに対して反応は返ってこなかった。

明らかにざわつきはじめていた校舎がまた静まり返った。


(まずい・・・・・・完全に俺たち負けてねえか?)


馬淵は、事実上の負けを感じ始めていた。

チュンチュー5人をフクロにして1人を二中に連れてきたまではよかったが、まさか乗り込んできた2人(1人おまけ)がここまで強かったのは完全に誤算であった。


(何とか手打ちにできねぇか・・・・・・)


7人もの番長と副番がやられた今、この決闘をどう終わらせるかに馬淵は逡巡し始めていた。


「もういいだろ!チョン公なんざさっさとやっちまおうぜ!」


馬淵が考えを巡らしていたその時、四中の副番・竜門(りゅうもん)が、持っていたナイフを取り出してユンたちを脅し始めた。

それに呼応してほかの番長メンバーも武器で威嚇を開始。


「お、おい!お前ら」


馬淵がとっさに止めようとするが、他の番長グループは武器を持ったせいか興奮状態に陥り、馬淵の静止が耳に入っていないようだった。

それに対して、構えるユンとファン。

校内の学生や教師たちも再度ざわつきはじめる。


「負けてるからって武器持ちだして卑怯じゃね?」

「日本人も落ちたなー」

「朝鮮喧嘩つえー」


校内の学生たちは、各々好き勝手にこの喧嘩を批評しはじめる。


「・・・・・・」


そんな喧騒の中、2つのグループの睨み合いが続いた。

だが、そんな睨み合いは、唐突に終わる。


ピーポーピーポー!


遠くから、パトカーのサイレンが聞こえてきた。

二中の教師が通報したらしい。


「サツだー!、逃げろー!」


日本人番長の誰かが大声で叫ぶ、番長グループたちは蜘蛛の子を散らす様に逃げ始めた。


「俺たちも逃げるぞ」


逃げる番長たちも見ながら、ユンが言った。


「そういやセンは?」


ファンが頭を左右に振り、捉えられたセンを探しながら言った。


「おーい!ユンさーん!ファンさーん!」


校舎内から、捉えられていたセンが、走ってユンたちに近づいてきた。


「いちち・・・・・・」

「おー!生きてたか!?」

「ま、まぁなんとか」


サンペンを奪われ、制服はボロボロ状態のセンだったが、顔はオ・コウテツと比べると綺麗で意外と元気そうだったのでユンたちは安堵した。


こうして、「チョーチュー2人組、立川中番長連合カチコミ事件」は幕を閉じた。

ユンとファンは、この決闘後、さらに立川で恐れられるようになるのであった・・・・・・。


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