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夢のような

「レベッカァァアァアァ!!」

自分の叫び声で目が覚める。

狭い部屋の中で俺の声が何度も反響し、空気が震える。

そしてそれを間近で聞くことになってしまった人物が、ひどく不快な顔をする。

「うっるさ……おい、どういうつもりだ」

そこにいたのは、死んだはずのレベッカだった。

「は……はぁっ!?」

「私の夢でも見ていたか?そんなに叫ぶほどに私を求めているなんて……ふん、この……えっち……」

その頬の紅潮は、あの血の気の失われた顔と対照的だった。

レベッカが……生きている……!

「あ、あぁ……ははっ……ちくしょう。なんて夢だよ……」

全部バカバカしくなって目頭を抑える。

「なんだ一体……ってお前、泣いてるのか?」

「んー?いや、別にぃ」

心の底から安堵した。別にバカにされようとも構わない。今はただ、レベッカがそこにいることだけが嬉しかった。

「それにしても……やけに照明が強いな。あんまり電気を使いすぎると怒られるぞ」

思えば部屋が明るすぎる気がしていた。

魔素の配給のないこの村では旧時代のエネルギーである電気さえも貴重なものなのだ。

「何を言ってるんだ?電気なんてつけてないぞ」

レベッカはなぜかとぼけたような顔をしている。

「こんな昼間に電気をつけるやつがあるか」

そう言ってレベッカはカーテンを開ける。

すると、とんでもない量の光が部屋に差し込んでくる!

「な、なんだそりゃ!」

俺は驚いてベッドから飛び上がる。

「は?……お前、一体どうした」

彼女は怪訝そうな顔をして訊ねてくる。

「太陽を浴びたら死ぬみたいだな。はは、吸血鬼かお前は」

そう言ってクスクスと笑われる。

……太陽?この部屋に?

礼拝堂の日光室にしか陽の光は存在しない。

それを屈折させて日中の村の僅かな灯火にしているのみだ。

だから、太陽がこんな場所にあっていいはずがない。

なのに……窓の外には直視できないほどに白く輝く光球が浮かんでいた。

「なんだよ……これは……」

「まるで太陽を初めて見た人みたいだな」

おそらくそれは比喩で言ったことなのだろうが、今の俺にとっては真実以外の何物でもない。

「おーい!」

今度は家の外から声が聞こえる。

聞き覚えのある騒がしい声が。

「まだかよレベッカー!」

「もう起きた! すぐ行く!」

外の人物に返事をしてレベッカが俺の背を叩く。

「さ、出る支度をしろ。今日はみんなで遊びに行くんだ」

「そ、そういえばなんでお前は俺の部屋に……?」

「私ならここに入る手段があるから代表してお前を起こしに来たんだ」

「おまわりさーん!」

「ほ、ほら……行くぞ!」

有耶無耶にされた感はあったが、その話題はそのままに軽く上着を羽織って外に出ていく。


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