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アミィ・ユノン

「あのね。アミィは僕の友達なんだ。でも魔法生物たちの友達……でもあるんだ」

『ってことは……人類の敵ってことか?』

「……やっぱり、そう、なのかな」

俺の言葉を聞いてジェイクは悲しそうに眉を下げる。

『あぁ、すまない。頭から否定するのは良くないよな……。それで、そのアミィってのは何ができるんだ?』

「アミィはね、魔法使いなんだ」

『……ってことはもしかして俺と同じ転生者!?』

「……アミィ・ユノン。転生者と言われると確かに腑に落ちる点もありますが……私の聞いた話では、様々な時代の様々な場所に現れている記録が残っています。しかし彼女たちが同一の人物なのかはわかりませんが……」

『それだけ聞くと確かに転生者っぽいな……』

「とにかくアミィならなんとかしてくれるはず!」

『でもそんなヤツどこから呼ぶんだ?』

「それは……」

「呼んだかなぁ〜?」

いきなりジェイクの背後から声が聞こえる。

その声の後から小さな人影が現れたかと思うと、がばりとジェイクに後ろから抱きついた。

「ア、アミィ……!」

「んもう〜ジェイクくんったら、ボクのこと呼んでくれないんだも〜ん」

ベタベタとジェイクにくっつく少女は、緋色の外套と三角帽子という特長的な服装を纏い、美麗な紫色の髪と吸い込まれそうな翠色の瞳を持つ美しい見た目だが、その幼さと中性的な喋り方も相まって事前に女性とわかっていなければ綺麗な男の子と間違えてもおかしくはなさそうだった。

「あ、今なんか失礼なこと考えてたでしょ〜?」

アミィはにやけながらこちらに指をさす。

『いや、特に……』

「ほんとかな〜?」

……この子、人の心が読めるのか?

「全く、まさかついてきているとは……」

大きなため息を出しながらルルーさんがアミィにぼやく。

「あ〜、ルルーさんもいたの〜?」

「目の前にずっといたじゃありませんか」

「ジェイクくんしか見えてなかったなぁ〜」

そう言うとアミィはわざとらしくジェイクにひっつく。

「そうですかそうですか。すぐにあちらに帰してあげますからね」

ニコニコしたままルルーさんはアミィを掴もうとするがアミィもにやけながらそれをかわす。

「大丈夫大丈夫。ボク、ジェイクくんと一緒にいるから」

「それは私の役目です。あなたはお呼びじゃないんですよ」

「呼ばれたから出てきたんだけど〜?」

「ストーカー風情が」

「過保護の監禁魔には言われたくないけど〜?」

未だにふたりともその表情を崩さないが語気はどんどん強くなる。

「ちょ、ちょっとやめなって!」

見かねたフレイが間に入ろうとするが剣幕に押されて縮こまってしまう。

『な、仲悪いん……ですか?』

「いえいえ。こんな小娘程度にいちいち腹を立てたりはしませんよ」

「うん! ボクもオバさんには興味な〜し」

ふたりの間には火花が飛び散りそうな程の緊張感が漂っているが……。

「ま、まぁ……とにかく! アミィにはこのマークさんのことを何とかして欲しいんだよ!」

「あぁ、そういえばさっきからヒトっぽくないのが混ざってるなぁとは思ってたんだよな〜」

ほんとにジェイク以外にはあまり興味がないのか……?

「率直に言えば、なんとかなる」

「ほんとかっ!?」

アミィの言葉に被さるようにレベッカが飛びつく。

「……が反面。無理が反面」

「な、なんだと……」

「勝手に舞い上がって勝手に落ち込まないでよ。ボクは別に期待させたかったわけじゃないんだから」

「それは……そうだが」

「でも、なんとかなる部分も半分あるんだろォ?とにかくきかせてほしいなァ」

「そ、そうだ! きかせてくれアミィ!」

「……あのね、マークさんのこれは、もう治らないよ」

アミィがその言葉を放つと、幼なじみたちは皆愕然とする。

「そ、そんな! なんとか……なんとかならないか!」

「残念だけど人間に戻すことはできないよ。だってもうあらゆるものが弾け飛んでいるんじゃないかな」

見た通りそうである。

今の俺には変異した骨と皮しか残っていない。

「で、も! もう半分の方がまだ残ってるよ!」

イヤに明るくアミィが言う。

「……一応聞かせてくれ」

もう聞く気力もあまり残っていなさそうだが、レベッカが催促する。

「ボクが人間の姿に戻してあげる」

アミィはあまりに平然とその言葉を口にした。

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