村を見て回ると、やはりその違いを実感させられる。
俺がまだ小さかった頃の村が残っているかのような印象だが、それだけでもなく、魔法生物に襲われなかった理由とも言えるように防衛設備はそこかしこに備えられていた。
『なるほど……一応ここが生き延びてこれたのはこういうものがあるからか……』
人が乗り込める、射出式の槍を放てる砲塔や可動式の砲台、身を守る鎧や武器なんかも充実している。
以前の村は護りに徹する……というか身を隠すことに徹しすぎていて反抗する手段は皆無だった。
もしかしたら……周囲の村もそんな理由で滅び続けている可能性もあるな。
冒険者たちの目立つ往来にもその一端を感じる。
冒険に役立つものを備え門戸を開いている為魔法生物たちを討伐してくれる冒険者たちが集う、当たり前のようで以前の村にはなかった機構だ。
『この村に来たのはなぜですか』
「有名なんですよ。ダンジョン付近にしては充実していますからね」
『ダンジョンって……ガレフのことですよね』
「村を出たことがなかったのでは?」
俺の問いに対してルルーさんが問い返す。
『いや、見たことはないんですよ。でもその存在くらいは知ってます……魔法生物が来た場所ですから』
ガレフとは、大きな穴である。
簡略的に言えばそれだけなのだが、この大穴が現れてから世界が一変する程の影響を与えているという。
魔法生物がこの中から出てきて、それに付随して魔素がこの世界にもたらされた。
脅威が増えた一方で利便性の増す新たなエネルギーが現れたのだ。
それに加えてガレフの中には多種多様なダンジョンが存在しており、魔法生物のような常識を覆す存在や財宝が待ち構えている……らしい。
「私も滞在中の宿屋で、隊長として生徒に刺激を与えて欲しいとして学校に招かれたのですが……そこであの子たちにあなたのことをきいたのです」
つまり、ルルーさんがこの村に来たのは改変前では有り得なかったことで、やはり村を護る作用が自然に働いているような気はする。
「でもさ、マークさんがいい人でほんとによかったよ。僕、最初はちょっと怖かったんだよ。魔法生物になっちゃった人がいるなんてさ」
ジェイクが笑いながら言う。
『こっちこそ、ルルーさんたちでよかった。魔法生物に対して問答無用で討伐をしかけてくるようなことは考えられない話じゃなかった』
「その分もちろん、あなたには活躍してもらいますよ」
ルルーさんが優しく微笑む。
『とにかく今は、色々と教えて欲しいです』
「では、いきましょうか」
村の巡回を終えた俺たちは、村の外に向かうことにした。