「いやぁ、レベッカさんってお料理お上手ですね! オレすっかり気に入っちまいましたよ!」
「そ、そうか?」
大はしゃぎで皿に盛られた料理を食べながら、フィーナはレベッカを褒めちぎる。
彼女もまた照れくさそうにその賛辞を受け入れる。
「……お、お前もなかなか手際が良かったぞ。……今度、また作ろう。マークがもとに戻った時、とびきり美味いものを食わせてやれるようにな」
「レベッカさぁん!」
どうやら種族の境にあったわだかまりはすっかり無くなったようだ。
『しかしなぁ、こうして美味そうに食ってるのを見ていると、腹が減ったような気分にはなってくるよなぁ』
「……なんか、悪いな」
『あぁいや、いいんだよ。匂いも感じないしヨダレすら出ないからな。でもま、食べっぷりのいいやつがひとりいるとそれだけでも満足できるな』
口いっぱいに料理を頬張っているフィーナを見て笑った。
「むぐ……は、はしたなかったです……」
フィーナは口の中のものを飲み込むと、恥ずかしそうに口周りを手で隠す。
「別に誰も咎めはしないさ。それだけ食べてもらえると私も気持ちが良い」
「ありがとうございますっ!」
『多分まともな料理を食うのすら久しぶりなんじゃないか? 村にも入れず草原の周辺で細々と暮らしていたんだろう?』
「いや、はは……そんな……別に……」
否定しながらもフィーナの瞳からはぽろぽろと涙が零れてくる。
「あ、あれ……なんでだろ……はは……」
レベッカが無言でフィーナの肩を抱く。
「……すみません。あんまりにも美味しくって……幸せで……」
「長い間……本当にすまなかった……」
「えぐ……ぐしゅ……いいんですって……こんな風に三人で仲良くなれるなんて、それだけで奇跡みたいなものだったんです……」
泣きじゃくりながらフィーナは感動を噛み締める。
「だから……もぐ……過去がどれだけ辛かろうとも……むしゃ……現在が幸せならそれで……」
泣きながらしっかり料理も噛み締めている……。
「強いな、フィーナは」
『レベッカだって強いじゃないか。俺はお前が信じてくれなかったら、あのまま地蔵になってただろうぜ』
「ふ、それはそれで面白かったかもな」
『はは、言ってろ』
ようやく訪れた団欒が、俺がこの村の運命を変えたことを実感させる。
まだこの身体は元に戻る保証もないが……それでも俺は、必ず戻る。
普通になって、普通に暮らす。
今みたいな幸せな日々を送るために。
……そのためならば、俺は……。