「剣なんて持って、危ないじゃないの〜」
ワナグモは俺の武器に注視している。
あいつもこれで斬りつけられてはたまらないのだろう。
「おいワナグモ!」
「いやねぇ、ワナグモなんて。あなたも、おいヒト! なんて言われたらいやでしょ? アタシのことはモナって呼んで?」
「馴れ合いは……不要」
カルアがナイフを投げるも、モナはそれを簡単に弾き落とす。
「あら、凶暴なコね。大人しくしててほしいわ、ねッ!」
モナが糸を飛ばしてくるも、カルアはすばやくそれを避ける。
「そうはいかない……フィーちゃんを、解放してもらわないと」
「あなたもしかして、このコのおともだち?」
「……」
「言わなくてもその顔をみればわかるわよぉ。どう? 取り引きしない? あなたがこのコの代わりになるのならば、このコは解放してあげるわよ」
「……」
「耳を貸す必要ないわよカルア!」
「……ほんと?」
アビーの言葉を聞かずにカルアはモナに確認する。
「ほんとよぉ? ね、ほら、武器を置いて? こっちおいで?」
モナはまるで両手を広げて迎え入れるようにその脚を開く。
カルアは足許に懐から出したナイフを置くとゆっくりとモナの方へ歩き出す。
「カルア! なにやってんのよ!」
「ふふ、いいコねェ……」
カルアを抱擁するようにその脚を閉じようとした時、モナが悲痛な叫びを上げる。
「があッ! こ、このガキッ!!」
「……カルアは、ガキじゃない。こんなこどもだまし、かかるはずがない」
モナの糸の射出口をカルアが隠し持ったナイフで突き刺したらしい。
モナは激昂し脚を振り回すが、すぐさまカルアはこちらに戻ってきてモナの反撃を避ける。
「いいのかしらァ? そんな舐めたマネされたら、アタシこのコになにするかわからないわよ?」
わなわなと怒りに震えながらモナはフィーナのおくるみを抱える。
「ほぎゃあ!?」
フィーナが腑抜けた声を上げる。
「……ねぇ、なんかしたでしょ? フィーちゃんに」
「まだ全然してないわよ? 今はちょっとおバカになってもらってるだけ……」
「こいつ! 一体なにを!」
「うるさいわね……言ってるじゃない。あなたたちもアタシに大人しく捕まれば気持ち良いまま何もわからずにイけるのに」
どうやらフィーナはこいつに何か毒でも盛られているらしい。
モナに抱えられているうちにも、抵抗する意思が見られず虚ろによだれを垂らしている。
「さぁ、みんなが見てる前で……うふふ、やっちゃいましょうかしら」
「何をするつもりだ!」
「貫通ショーよ。本当はみんな捕まえてからひとりずつじっくりシたかったけど……そこのガキにムカついたからこのコは今すぐやっちゃうことにしたの」
「させると思う……?」
「これならどうかしら?」
モナは自分の周囲に糸を張り巡らす。
「特製プレイステージの出来上がりよ。ちょっぴりシゲキ的かもしれないけど……そこで見ててね?」
そう言うとモナの腹側から針のような管が伸びる。
「ギャラリーが多くて恥ずかしいわね……でも、こういうのも……」
「な、なぁ! あれは何をしようとしてるんだ!」
「……だめ。だめだめだめ……!」
カルアがやけに狼狽えている。
「まずいですよ! はやく阻止しなければ!」
「あんたも大事なフィーナを傷モノにされたくないでしょ!」
「なんかわからんが……止める!」
とはいえ、この糸に触れたら動けなくなりそうだ。
「どうしたら……」
「たっぷりかわいがってあげるから……みんなに見てもらいましょうねぇ」
モナは艶っぽい声でフィーナに囁いている。
一体何が始まってしまうのか……。