「ご主人様、シゲルさんは……」
宿を出ると、心配そうな顔をしてフィーナが駆け寄ってくる。
『あぁ、認められたよ。これからアンシェローの一員になるって』
「そうですか! よかった……」
嬉しそうな反面少し寂しげな表情だ。
……きっと今の俺も同じような顔をしているに違いない。
『まぁ、なんだ。あいつの幸せを考えると、一番良い気はするよな』
「そうですよね……普通は命の危険と隣り合わせで幸せなはずはないですから」
『お前はいいのか?』
「なっ、なに言ってるんですか! オレはずっとご主人様と一緒にいるって言ったじゃないですか!」
『はは。わかってるって。聞いてみただけ』
……でもいつかは、こいつにも幸せになってもらいたい。
俺が早いとこ秘宝を見つければ、フィーナも冒険することはなくなる。
「あ、今なんかフクザツなこと考えてません? オレにはわかりますよ!」
『いや……なんだよ』
「仕方なくとか無理やりでここにいるわけじゃないんですからね。……焦らないでください」
フィーナは優しく俺を諭すかのようにそう言った。
『わ……わかってる』
「それならいいんですケドねっ!」
『さて……じゃあ俺たちも頑張らないとな』
「あ、行くんですね!」
『もうみんなは学校に行ってるんだ。俺たちも俺たちのやれることをしないとな』
「頑張りましょう! 必ずや秘宝をその手に!」
『先は長そうだけどな……』
「まだまだ始まったばっかりですよ!」
『それは確かにそうだ……よし、行くか!』
俺は転移魔法を発動させてフィーナとともにガレフへと移動した。
「……ふぅ」
ガレフに転移すると、再び俺の身体はカントリカントになっている。
もうアミィが全部治してくれればいいのに……。
「それにしても便利ですよね! あっという間に移動できるなんて!」
「この恩恵はほんとにありがたい。どうせなら秘宝のもとへ飛ばして欲しい」
「ゼータク言ったらだめですよ! 道は険しいほど成果も大きいはずです!」
「まあそういう気合いをもっていないとやってけないよな」
フィーナの方は俺よりやる気に満ち溢れているようだ。
「じゃあ、今日も探してみようか」
「はいっ!」
俺はノーフを起動して周辺のサーチを開始した。
「ん?なんか出てる」
見慣れないアイコンがマップに表示されているのだ。
それに触れると何かメッセージが出てきた。
『ボスダンジョン攻略の冒険者様。トクベツなご褒美の用意がございます。御手数ですがお受け取りの際にはこちらへお越しください』
「な……なにこれー!」
「ボス攻略のご褒美ですか……なんだかすごそうです!」
「いやあわてるな……これは罠かもしれないだろ」
「ご主人様のノーフに細工をしたってことですか?」
「確かにそれは考えにくいが、不可能では無いし……それにもしアミィだったとしたら簡単な事だ。だから俺は行かないよ、うん」
「い、いいんですか……?」
「あいつのことだ。きっとまたよからぬことを……」
「こらー!!」
俺の言葉を遮るように聞き覚えのある声が響く。
「げえっアミィ!」
「なんだよその反応はもうっ! ボクだってズルっ子のキミにご褒美なんてあげたくないんだからね!」
突如として現れたアミィはぷんすかと腕を振って怒りを表現している。
「その口ぶりからすると……本当なんですか?」
「お、キミは話がわかるね! ふっふっふ! そうだよ! これは決まりだから仕方ないんだからね!」
「なんの決まりだよ……」
「つべこべ言うのはナーシ! さぁ、トクベツ報酬の洞窟へ……行ってらっしゃ〜い!」
アミィは両手をばんざいみたいに上げると、俺たちの身体が浮遊する。
「わ、わ……わぁ〜〜!」
そのまま俺たちは飛ばされていった。